17.3
俺の書いた手紙がヤンに届いたようだ。テオドールと何やら話していたから影からこっそり見ていたら、手紙を受け取って嬉しそうに抱えていた。やはり、ヤンは可愛らしい。
それを見たのは午前中のことだったが、今日一日はヤンの機嫌が良かったから、またこんな風にいつもとは違う何かを贈ってもいいかもしれない。今この時期、ヤンは大きな期待と大きな不安の間にいる。少しでもあいつの心を穏やかにできるなら、俺に出来ることはなんだってする。
俺を生かしてくれたのはヤンの存在だ。自分を必要ないとまで言ってしまった俺に、共に生きて欲しいと、生きて幸せになって欲しいと言ってくれた。それがヤンにとっての幸せだから、と。
当時を思い出すと罪悪感もあるが、同時に生きる活力ともなってくれる。あの日があったから、俺は自分自身の幸せのために努力することができるようになったし、家族をつくることができた。そして、ヤンと二人で家族をつくることができる。
最近、ヤンはよくお腹の子に子守唄を歌っている。聴き馴染みがないからどこで知ったものなのか尋ねてみたが、ヤン自身覚えていないという。もしかしたら、ヤンの生まれ故郷のものかもしれない。
ヤンが望むなら、共に行ってもいいのなら、いつかヤンの生まれた地にも訪れたいと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます