17.3

 俺の書いた手紙がヤンに届いたようだ。テオドールと何やら話していたから影からこっそり見ていたら、手紙を受け取って嬉しそうに抱えていた。やはり、ヤンは可愛らしい。

 それを見たのは午前中のことだったが、今日一日はヤンの機嫌が良かったから、またこんな風にいつもとは違う何かを贈ってもいいかもしれない。今この時期、ヤンは大きな期待と大きな不安の間にいる。少しでもあいつの心を穏やかにできるなら、俺に出来ることはなんだってする。


 俺を生かしてくれたのはヤンの存在だ。自分を必要ないとまで言ってしまった俺に、共に生きて欲しいと、生きて幸せになって欲しいと言ってくれた。それがヤンにとっての幸せだから、と。

 当時を思い出すと罪悪感もあるが、同時に生きる活力ともなってくれる。あの日があったから、俺は自分自身の幸せのために努力することができるようになったし、家族をつくることができた。そして、ヤンと二人で家族をつくることができる。


 最近、ヤンはよくお腹の子に子守唄を歌っている。聴き馴染みがないからどこで知ったものなのか尋ねてみたが、ヤン自身覚えていないという。もしかしたら、ヤンの生まれ故郷のものかもしれない。

 ヤンが望むなら、共に行ってもいいのなら、いつかヤンの生まれた地にも訪れたいと思う。

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