14.3

 最近悩んでいることがある。生まれてくる子供の名前だ。

 ヤンには、この世界に生まれて最初の贈り物は父親からだと言われた。曰く、母親は命を贈るのだから、名前は父親から贈ってやって欲しいと。いい考えだとは思うが、肝心の名前に悩む。

 男の子だったとしても女の子だったとしても候補が無いわけではないが、しっくりくるものかというと疑問だ。顔を見れば、贈るものも決まるのだろうか。楽しみであり、不安でもあり、やはり早く会いたいと思う。


 俺の名前は、困難に打ち勝って生まれてきたからとつけられたものだそうだ。名付けたのは父だが、母の言葉を聞いて決めたという。恐らく、母の体質のことだろう。

 その子への願い。親として子に望むもの。俺は、何からも逃げて、立ち向かうということをしなかった。だからその子には、困難に立ち向かえる心の強さを。譲れないもののために戦える、そんな願いを込めて名を贈ってやりたい。


 俺はまだ未熟だ。それでも、人の親になるんだ。

 見栄を張る必要はない。自分を削る努力はヤンの幸せに繋がらない。だから、今の自分にできる最大の努力をしよう。それはきっと、皆は勿論俺自身の幸せにも繋がる。

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