11.3

 ヤンから昨日のことで謝罪があった。急に不安に襲われたのだという。もう迷惑はかけないと言っていたが、違うんだ。ヤンにかけられる迷惑なら、どれだけ大きなものだって辛くも苦しくもない。迷惑だとすら思わない。ヤンが、最愛の妻が頼ってくれること。それがどれほど幸せなことか。そう伝えたら、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。ヤンはしっかりしているし俺よりもずっと落ち着いているが、こういうところはとても可愛らしい。

 見た目で言えば、ヤンは可愛いというより綺麗、美人と表現すべき容姿なのだろう。事実俺もそう感じている。しかし、時折見せる嬉しそうな笑顔は幼子のように純粋で、輝いている。ヤンの過ごした日々は、本人から聞いている。それでもなおこの純粋さを失わずにいてくれたこと、そしてそれを俺に見せてくれること。感謝と喜びが尽きない。


 俺は、ヤンに酷いことを言った。酷いことを数え切れないくらいした。過去に戻れるのなら、迷わずあの頃の俺を殴っている。あの頃のヤンにも、俺自身にも、言いたいことはたくさんある。

 だが、過去に戻るなど決してできない。過去を変えられないのなら、未来を変えるしかない。かつての自分がヤンを不幸にしたのなら、今の自分がそれ以上にヤンを幸せにする。あたたかい家族と、帰る場所。それらを作り、守ること。

 そして忘れてはならないのが、俺もまた幸せになるということ。自己犠牲は、なにも生まない。大切な人を傷つけるだけだ。それが分かった今だからこそ、自分の幸せも考えられるようになったのだと思う。

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