10.3
今日のヤンは朝から落ち着かない様子だったから、使用人達に頼んで一日の休みを貰った。俺としては午前中の書類作業、俺のサインが要らないものだけ任せられたらと考えていたのだが、テオドールに半ば無理矢理仕事部屋を追い出された。やり方は不器用だが、気遣いが嬉しい。
話を聞くと、期待と不安がない混ぜになって、どうしていいか分からなくなったらしい。隣に座って肩を抱き、しばらく話をした。この時期は、精神的に不安になることもあると聞く。そういう知識はあるしまだまだ学ぶ気持ちもあるが、代わってはやれないのが心苦しい。
ヤンが苦しむ度に、俺がそれを引き受けてやれたらと思う。性別がある以上それも不可能ではあるのだが、先日母が来た時にもっと話を聞いておくべきだったと後悔する。
ただ、俺にはそうして弱音を吐いてくれるのも、嬉しくもあり有難いことだ。隠されるより、伝えてくれた方がずっと良い。全てを知りたいとは決して思わないが、背負える荷物なら共に背負いたい。ヤンが俺を支えてくれたように、俺もヤンの支えになりたい。
家での仕事以外は予定が何もない日だったから、出来得る限りでヤンのそばにいた。珍しくあいつから手を繋いできたりもしたから、相当に不安だったのだろう。それを察することが出来なかった自分を省みる。同時に、もしかしたら少しの吐露を切っ掛けに、積み重なった不安が溢れたのかもしれないとも思う。
ヤンには、不安になった時は俺が何をしていてもいつでも呼んで欲しいと伝えた。俺も出来る限りヤンのために時間を作る。ヤンのそばにいる。それだけが俺に出来ることであり、それは俺にしか出来ないことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます