7.3

 変わらず忙しい日が続く。営業にも力を入れた結果だと思うが、どうしても睡眠時間を削りそうになり、その度に使用人達に諫められる。ヤンにも、あまり彼らに心配をかけるなと言われてしまった。最近は落ち着いたと思ったが、どうもこの悪い癖は抜けない。


 夜遅くまで起きるのはいつからかと考えたが、エドやダグと遊びだした頃か。あの頃は二人が強く格好良く見えて、何でも二人の真似をしていた。しかし、遊びばかりで課題や勉強を疎かにするのも落ち着かなくて、夜中人目につかないように読書室で本を開いていた。我ながらよくやっていたものだと思う。若いからこそ出来た無茶だろう。

 思えば当時は医者になりたかったのだ。父が取り扱う医薬品で、自分が直接患者を救えたらと。大人になっても当たり前のように父が家を取り仕切っていると思っていたのだから、あの時の俺もまだ幼稚だったのだろう。自分が歳を重ねれば、等しく周りも歳を取る。子供の変化に対して大人のそれは緩やかだから、ある種仕方のないことかもしれないが、つい苦笑してしまう。

 ヤンと出会って、うちの薬が役に立って。それでこの家を、事業を途絶えさせてはいけないと感じたのが、父の背中を追う切っ掛けだったように思う。直接でなくても、人を救うことができるこの仕事を、俺は誇りに思う。そして、より多くの人が安心して暮らせるよう、もっと努力していかなければ。

 エドは傭兵として、自警団としてこの町を守っている。ダグは動けない老人や子供達の面倒を見ることで町の人を救っている。俺も負けてはいられない。

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