5.3

テオドールが帰ってきたが、きっと慌ただしかったから疲れただろうと、もう一日の暇を与えた。幸い、今やるべき仕事は俺の力だけでも足りる。それを分かっているからか、今回は大人しく休んでくれた。

 人のことは言えないが、あいつは働きすぎだ。熱心なのは良いことだし事実俺も助かっているが、やはり心配でもある。俺は、出来る限り長くこの仕事に関わりたい。そのために、相棒とも呼べるテオにも長く健康でいて貰わねば困る。それに何より、テオは弟のような存在だ。無茶をして欲しくない。


 父は母と共に世界を巡る夢を叶えた。つまり、当主の座に居続けることをしなかった。ならば俺は、それを成してみたいと思う。

 旅はヤンと二人でしたし、俺はこの家が好きだから、そう思うのかもしれない。せめて俺の頭がまともに働く間は、この家を守り商家ホフマンであり続けたい。

 ヤンは、どうだろうか。ヤンの夢はあたたかな家族と幸せになることだと聞いた。無論その夢は叶えてみせるし、ヤンの幸せが俺の幸せだ。あいつがずっと笑顔でいられる場所を作って、それを守っていきたい。


 春過ぎに会える俺達の家族にも、幸せな場所を作ってやりたい。どんなことを好んで、何を見何を聞き、どんなふうに育つのか。気の早い話だが、そんなことばかりを考える。

 俺自身、父と共に過ごせて楽しかったから、たくさん遊んでやりたい。寂しい思いは絶対にさせたくない。かけがえのない日々を、笑って過ごしてほしい。そして、好きな人生を自由に生きて欲しい。

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