4.3
執事の居ない一日だったが、結果として大きな苦労は無かった。どうやら、細かい仕事も含めて粗方済ませてから出掛けていったらしい。真面目で几帳面なテオドールらしい。おかげで、いつも通りの時間配分で業務を終えられた。
テオドールは昔こそ悪戯好きのやんちゃ坊主で、快活さで言えば俺よりもずっと。そんなテオは、今や俺にとって決して欠かせない仲間だ。仕事中は冷静に、外出の供を頼めば朗らかに。そして常に気遣いの人であるから、彼がいるからこそ、俺は背伸びをすることなく自分の力を発揮できるのだ。だからこそ思う。俺は、テオドールの力になれているだろうか。
皆に助けて貰ってばかりだと思う。俺から恩を返すには、家をもっと良くして誰にとっても居心地の良い場所にするしかないのだろう。そしてそれは、俺にしかできないことでもある。
それでも、まだ足りない。
日常の中で俺から希望を聞こうと思っても、あいつらのことだ。きっと問題ないと言うだろう。少しだけ、ヤンに協力してもらおうか。ヤンは言わばあいつらの元同僚でもある。ヤンになら話しやすいこともあるかもしれない。
ヤンはというと、今では希望や要望などあれば素直に伝えてくれる。弱さを見せまいとしたあの頃とは大きく変わり、その変化がとても嬉しく愛おしい。
ヤンの過ごしてきた日々を思えば、自分を隠すのも仕方ないことだと思う。だが、今のヤンはとても表情豊かだ。嬉しい時に嬉しそうな顔を、悲しい時には悲しそうな顔をする。それが嬉しい。頼りにしてくれている、信頼してくれていると思えば、それだけでも俺は頑張れる。
ヤンとは勿論、皆と話し合い語り合う機会を作ろう。俺のため、皆のため、この家のためにも。
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