27.2

 今日も変わらず忙しかった。俺が忙しいということはつまり仕事が上手くいっていると言い換えることができるのだが、ヤンと二人で過ごす時間が少なくなってしまっている。ヤンは気にするなと言うが、俺が不在にしている間寂しそうにしているとヘレナが教えてくれた。同時に叱られてもしまったが、尤もだと思う。

 ヤンに誓いを立てた身として情けない限りだ。あれは半年程前のことだが、昨日のことのように思い出せる。新婚旅行中、意を決して、ヤンと家族を作りたいと思いを伝えたこと。それに対するヤンの答え、表情。あの一週間は、自分の人生で最高の一週間である。また、二人で旅行をしたい。勿論、三人でも。夏になる頃には、少しくらいの遠出なら可能だろうか。近場でも構わない。ちょっとした散歩でもいい。三人で、思い出をたくさん作りたい。


 ヘレナといえば、最近はテオドールとよく一緒にいるのを見かける。人のことは言えないが、二人ともまだ若いながら、家政婦長として執事としてよく働いてくれている。そんな二人が話しているのは珍しいことではないのだが、どうやら休憩なども共にしているらしい。二人の協力があってこそ、この家は成り立っている。業務についてや環境などの要望は出来る限り聞き、近いうちにリラックスできる香りの茶葉でも贈ってやりたい。紅茶ならヤンが詳しいだろうから、明日にでも相談してみることにする。

 屋敷の使用人も、昔と比べて増えた。ヴァルターはとっくに引退しているが、テオドールがいるから安心して休めるという言葉を聞いた時は、自分のことのように嬉しくなったものだ。テオドールのことは子供の頃から知っているから、余計にそう感じるのかもしれない。外遊びが好きな子供だと思っていたら、今では立派に従僕達を取り纏めている。彼がいなければ、俺はこんな風に日記を書く時間すら持てなかっただろう。感謝している。が、ここに書いただけでは伝わらないのも分かっている。しっかりと、言葉で伝えなければ。


 ヘレナも随分落ち着きを持つようになったと思う。もう13年前になるか。ヤンと出会って、うちで働くようになって。その時からヤンの先輩として導いてくれたと聞いた。当時は何かやらかしては慌てていたとも。

 恥ずかしい話だが、その頃の俺はメイドが何をしているかあまり気にしたことがなかった。うちで雇った者の給金管理から予定の調整まで、殆どを父とヴァルターの二人でこなしていたと知って、改めて父を尊敬する。俺とテオも、いつかあの二人のようになりたいと願う。

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