当主の手記

びどろ

Februar

26.2

 当主となってそれなりに日は経つものの、未だ礼の手紙に慣れないため、練習を兼ねて今日から日記をつけようと思う。

 何を書くべきだろう。日記なんて、記憶も朧げな幼少期に書いたきりで、いまいち勝手が分からない。ひとまず、家のことを。


 父の代から続いた取引先とは、有難いことに友好関係を続けることができている。現状、家も事業も安定していると言えるが、不安なことも無いとは言えない。家族が増える。収入を、増やしたい。

 ヤンの腹は、もうかなり大きくなった。お腹の子が動くことが少なくなって慌てたが、医者に色々教わっているらしいヤンに笑われてしまった。曰く、無事に大きくなって、動ける場所が少なくなったかららしい。少し前までよく蹴っていたのを知っているから寂しくも思うが、成長の証と捉えるべきだろう。会えるのは春過ぎだという。その日が待ち遠しい。


 男の子だろうか。女の子だろうか。つい浮かれてしまう自分がいるのは分かっている。仕事に対しては真剣にやっているつもりでも、どうしても気になってしまうのも事実だ。子供のこと、ヤンのこと。特に、ヤンの体調については医師に逐一報告させているが、妊娠中に何が起こり得るか知識はあっても、予測や共感が上手くいかない。

 自分の性別が男であることも手伝って、母親の苦労というものが今でも理解できずにいる。できるだけヤンが食べたいものは用意してやれるようにと料理人達にも相談することが増えた。料理人達には忙しいところに仕事を増やしてしまったから、手当を。落ち着いたら休暇も与えたいと思う。


 書きたいことを探して考え込んでしまった。もう夜も遅いから、初日はここで終えることにする。

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