幕間 2

 ――幕間――




「これ、必要か?」


 阿刀田傘がしかつめらしい顔をした。


「まあ、いちおうねー」


 微塵も誠実さを感じさせないなおざりで、理紫谷りしたに円子えんこは言う。


「君は心がどこにあると思ってるんだい?」


「この無駄な脂肪の中だろ」


 阿刀田は自分の胸部を持ち上げて言う。こいつには羞恥心がないらしい。


「よく解ってるじゃない。もちろんそのおっぱいだけじゃなくて、その体すべてが心だよ」


「それで?」


「それで? なにそれ、疑問? 体を借りるなら心も一緒に。そういうことだよ」


 理紫谷円子は言う。阿刀田はすこし『むっ』としたようだったが、なんとか飲み込んだらしい。


「そういえばお嬢ちゃん。答えは出たのかな?」


 猫なで声を一割混ぜたような気味の悪さで、円子は突然言った。


 疑問を投げかけられた阿刀田は、大きく息を吐く。たぶん、怒りを鎮めていた。


「『後悔先に立たず』」


「あっそう。いいよ。及第点」


 もうあまり時間がないというのに、大丈夫だろうか? それは俺が心配することではないけれど、そう思うくらいしかやることがなかった。いや、もうひとつ心配事がある。


 俺自身がなにかを知っているわけではないけれど、阿刀田傘、おまえはこのプロジェクトの全容を知ったら、いったいどうするのだろう?

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