第3話奇跡の席替え

 ―――「キンコーンカンコンキーンコーンカンコン…」

 教室にチャイムの音が鳴り響いた。と同時に尼崎新が教室の扉を開けた。

「委員会決めるぞー 、じゃあまずクラス委員長、副委員長決めよーかー、じゃあまず、委員長立候補者いますかー?」

「シーーン…。」

 教室中に冷たい空気が流れた。

「誰かやってくれる人ー?」

 先生は少し悲しそうな顔をしながらこっちに語りかけた。

「誰もやらないなら俺やりますよー」

 俺はこういったことは好きではないが誰もやらないと面倒くさそうだったのでやってもいいかなと思っていってみた。

「お、お前まじか、かっけーなw」

 前の席に座っていた優が振り返りながら言ってきた。

「他に立候補する人もいなそうなので春山くんがクラス委員長でいいですか?」

 クラスのみんなは同意してくれた。俺は少しうれしかった。

「よし、じゃあ最初の仕事。はい」

 先生はニコニコしながら紙を渡してきた。それは各委員会に何人の人員が必要かというものだった。つまり、俺は、クラスの委員会を決める仕事と席決めをいきなりを任されたのだった。


「じゃあ俺の仕事は終わったんで職員室戻るわ。決まったら呼びに来てね」

 先生はそう言いクラスを出て行ってしまった。俺は一瞬戸惑ったが理解しみんなの前に出て委員会決めを始めた。

「じゃあ、委員長になりました。春山空です。他の委員会も決めていきたいと思います。まず、副委員長やってくれるひとー?」

「はい!私やりたいです」

 意外にも手を挙げたのは、笹岡だった。

「さ、さ、さ、笹岡さん?」

 俺は嬉しくて心中ではガッツポーズをしていた。でも顔には出さないように頑張った。まるでポーカーをしてるくらいの気持ちだった。

「他に立候補してくれる人はいますか?いないようなら笹岡さんにやっていただきます」

 あーー誰も手を挙げるなよと思いながらみんなの方を向くと、奇跡的に誰も手を挙げていなかった。小学生がクリスマスプレゼントが起きたら枕元に置いてあった時、喜んでいるような純粋な喜びが体中を走り回った。

「いないようなので笹岡さんよろしくお願いします」

「この度は副会長をさせていただく笹岡真雪です!よろしくお願いします!」

 すごい丁寧なあいさつだった。

 そのあとは結構簡単に委員会と係が決まっていった。ちなみに優は国際交流委員会だった。あのコミュニケ―ション力化け物にはちょうどいいと思った。


 そして席替えの時間になった。

「今から席替えをしようと思うんですが、どのような形式で席替えすればいいですか?意見がある方は、手を挙げて発言してくれると助かります」

 これはいろいろ案が上がった、あみだくじ、くじ、好きな席など。そして多数決により、くじになった。

「じゃあ、出席番号順に前に出てきて引いて行ってください」

「おいー、空、お前ひとりで抜け駆けかー全くやるなー」

 優の番に前に出てきた優に言われた。

「春山くんどうしたの?」

 笹岡さんは不思議そうに聞いてきた。

「いやいやなんでもないよー、優がちょっかいかけてきただけだよーなあ?優」

 あれ?返事ない

「富岡君ならもう戻ったよ」

 笹岡さんは笑いながら言った。俺の顔は真っ赤になった。

「そういえば笹岡さん引いた?」

「残り物には福があるから最後でいいの」

「そっか、じゃあ俺も残ったのにしよ」


 そして最後の二つになった

「あれ残ってるのって窓際の後ろ二つじゃん」

 俺は普通に窓際の後ろということで、嬉しかった。

「じゃあ私たち隣の席だね、ちょっとうれしい」

「そうだね。俺もうれしいよ」

 ん?まって今なんて俺はそれをまだ理解できてなかった。

「え?まって?俺と笹岡さんと、と、隣の席?」

 そんなんえぐいてーー。

「そうみたいだね、席決まったことだし移動して先生のとこ行かないとね」

「お、お、おう」

 俺は動揺を隠せなかったがこれだけは思った、神様ありがとう。


 廊下で俺は笹岡さんと二人だった。

「春山君、私さ空君って呼んでもいいかな?」

笹岡さんが話しかけてくれた。

「もちろん、じゃあ俺は、笹岡さんのこと真雪って呼んでもいい?」

「うん、もちろん」

 真雪の笑顔はまぶしかった。くそーかわいすぎんだろ。

「そういえばさ、連絡先交換しない? 」

 俺は今持ってる勇気をすべて振り絞って言ってみた。

「いいよ、はい」

 あ、やべえ俺幸せ者かもしれない。


 職員室につき先生を呼び戻して教室に帰ったら、優が前の席に座っていた。

「おう!優どうした?」

「どうしたじゃねーよ、心の友が前の席だっていうのに見てなかったてか?」

「ごめん見てなかった―」

「うわーショック―」

「じゃあこれからもよろしくな」

 優はまた俺の前の席だったようだ。でも俺は今心ここに非ずって感じだった。なぜなら真雪と連絡先を交換できたことがうれしかったからだ。

「おう、富岡君と春山君サッカーしよーぜ」

 優の前にいた和田が話しかけてきた。この後、話は盛り上がり俺はとても楽しかった。


 家に帰って直ぐに俺は、拓に電話をした。

「おい、拓、俺やったぞ」

「どうした相棒?」

「俺笹岡さんの連絡先手に入れた!」

「笹岡さんってどちらさま?」

 そういえば、入学してからまだ連絡してなかったということに気づいた。

「クラスで一番かわいいと思ってる人、俺が委員長で笹岡さんが副委員長、そんで今日ちょっとはなした。」

「ほーー、それでなんかメッセージ送ったのか?」

「それがさーー、何って送ればいいかわかんねぇんだよー」

「じゃあ、恋愛マスターの俺がアドバイスしてやる。今日は一緒に委員会出来て楽しかった。これかも頑張ろうって送っとけ」

 拓にしては真面目なことを言ってくれた。明日は雪が降るのかと思った。

「分かった、ありがとう」

「空は高校でもサッカーやるのか?」

「まだ決めてないなー、俺らの学校、明日部活説明会があって、明後日から仮入部期間が始まるからなー、色々見てから決めてみようと思ってる」

「そうか、まあ自分がいいと思ったのが一番だな」

 そんなこんなで電話が終わった。俺は真雪にメッセージを送ってみた。返信が楽しみだ。


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