第6話遠足 序章

ピピピピ.....ピピピピ.....ピピピピ..カチ

毎朝煩わしく思っている目覚ましも今日は何故だかそうは思はなかった。

起きてからすぐに予備でかけていた携帯のアラームもなった。

今日だけは遅刻は出来ないため予備でかけていたものだ。

携帯のアラームをとめてリビングに向かって朝食をとることにした。


「おはよ」


「おはよ、今日はちゃんと起きたのね」


「まぁね、一応遠足だし」


「そっか、楽しいといいね」


母はどことなく嬉しそうだ。


「だね」


いつもだったら学校に向かう最低限度の時間に起きて朝食もかきこむように胃に入れて急いで出るだけなのに今日は時間にゆとりをもって朝を過ごしていた。余裕を持っていたおかげで準備に問題はなかったが少し余った時間がとても長く感じてしょうがなかった。時間が早く過ぎて欲しいのに時間は全く進まない。

時間は平等なのに今の俺の体感ではこの待っている数分が何時間にも感じた。

程なくして拓斗は来た。


「行ってくるわ」


「うん。行ってらっしゃい」


俺は勢いよく玄関を出て行った。

俺は開口一番拓斗に文句を言った。


「拓斗おせーよ」


「何言ってるの、時間ぴったりじゃん」


携帯の時間を見ると待ち合わせの時間ちょうどだった、俺の体感時間ではすごく時間が遅く感じていても実際の時間は等しく同じ速度で流れていることを再認識させられた。

拓斗に申し訳なくなった。


「たしかにそうだな、ごめん」


「いいよ、とりあえず行こうあんまり話してると本当に遅刻しそうだしね」


それから俺たちはいつもの道をいつもとは違う荷物を籠に入れて走り出した。


いつもどうり学校の駐輪場に停めて教室ではなく今日は校庭に向かった。

そこには俺らより早く着いた班員たちが談笑していた。


「おはよ」


「優也、ちゃんと来たんだ。ありがとう」


「気にすんな、俺が来たかっただけだ」


「拓斗君、おはようございます」


「青木さん、おはようございます」


「やっときたわね、あなた達が一番最後よ」


「ごめんごめん、あれだよく言うだろ家が近いと余裕だから逆に遅くなってしまうってやつだ」


「言い訳は良いから、そろったことだし先生に点呼完了の報告しとくわね」


点呼報告が終わり全班の点呼が完了したためバスに乗り込むことになった。俺はもちろん拓斗と乗ると思っていた。だがそれ以外の可能性を考えていなかったわけではない。

イレギュラーとは想定していないからイレギュラーなのであって想定していれば何の問題もない想定の範囲内の出来事ならそれはもはや確定された未来と同義じゃないだろうか?


何でおれがここまで必死になっているかは言うまでもないな、水嶋ヒロトの隣が嫌だからだ。(言っちゃてる)


俺のミッションは大きく分けて二つ


①水嶋ヒロトの隣の回避


これは本作戦の第一ミッション最悪これだけ達成できれば少なくとも敗北はない。


②拓斗、優希の隣になる


このミッションを達成出来たら、勝利だ。


俺はこの二つのミッションを完遂しなければならない。

ミッション一だけは必ずだ。


どう言いくるめるか昨日ひたすら考えたんだがやはりこういうの先手必勝俺から流れを作る!と意気込んでいた矢先


「優也、一緒に座ろ」


驚いてつい優希を見てしまった。すると優希はこっちを見てほほ笑んでいた。

優希に先手をとられてしまった、いやこの場合取ってくれたという感じか。

俺が言い出しづらいだろうと思って。

また助けられたな。


「分かった」


残りは男子と女子で別れて座った。優希を窓側に座らせて俺が通路側に座った。


「荷物上にあげるけどどうする?」


「お願いしようかな」


自分の荷物と優希の荷物を上にあげて席に着いた。


「ありがとう」


「いいよこのくらいちょうど俺が通路側だし」


「これを見越して通路側に座ってくれたんでしょ?」


どうやら優希にはバレていたらしい、敵わないな。


「さぁね、俺が通路側に座りたかっただけだよ」


「そっか、でもありがと」


「ありがとうを言うのは俺の方だよ、さっきは助けてくれてありがとう」


「うーん?何のこと?私が一緒に座りたかっただけだよ」


「そっか、でもありがとうな」


この何気ないやり取りがとても心地よかった。


「みんなー出発するよー」


こうして俺の、いや俺たちの遠足が始まった。













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