第5話 遠足~前日譚~下校編

「なんでだよ」


「私が一緒に帰りたいからだよ」


こうやって素直に人に思いを告げられるのは優希のいいところだと思うけどこういわれると断りにくい。


「分かった、なら一緒に帰ろう」


優希と俺の家は近所だが俺は自転車通学、優希は電車通学だ。どっちに合わせるかと悩んでいたら優希が俺の自転車をもってきて後方に乗ってスタンバっている。


「優也ー早くしてー二人乗りして帰ろう」


「警察に見つかったらどうするんだよ」


「その時はその時だよーほら早くー」


腹をくくってサドルにまたがった、もしも警察に見つかった時はおとなしく怒られよう。

優希から荷物を預かり俺のと一緒に籠の中に入れた。


「動くからちゃんとつかまってろよ」


「うん」


優希が後ろからしっかりと俺の腰に腕を回していることを感じてからペダルを踏みだした。

さっきまでは一人でいたいと思っていたのに今では背中から伝わる感覚が春の季節とあいまってとても心地良い。

何よりこうやって近くで俺の事を気遣ってくれている優希には本当に感謝している。

いつも迷惑ばかりかけているのにいつもさりげなく俺の支えになってくれているそして今回もいつもと同じように俺が迷惑をかけ優希が支えてくれている。

また迷惑をかけてしまったな。


「今日はごめんな」


心なしか優希の腕に力がこもった


「ううん、私もあの場で何もできなかったし私の方こそごめんね」


「お前が謝る事じゃないよ、そもそも俺の事情なんか知らないやつにそこまでの思慮を求めること自体が無理なんだよ、そんなことも分からずあそこでキレた俺が悪い」


「たしかに何も知らずに優也の過去の事についての話題に触れるなっていうのは無理だと思う。でも優也の気持ちわかるよ、優也にとってバドミントン選手として過ごしてきた時間は大切だったんだよね」


俺の心の中にあったモヤモヤが優希の言葉ですーっと晴れていった。こうやってわかってくれる人が一人でもいてくれるのは本当に救われる。

優希のこういうところに心底救われてきて、そして今も救われている。


「あぁ、とても大切なものだよ」


「知ってる」


言わずとも心が通じ合ているのがとても心地よく感じた。


「俺、遠足にはいかない」


「そういうだろうと思ってた」


どうやら優希にはおみとうしだったらしい、だてに一年間同じクラスだったわけじゃないな。


「私が来てほしい、、って言ってもダメ、、、かな?」


優希は恥ずかしかったのかそれとも俺が来てくれるか不安だったのか分からないが俺の体をよりぎゅっとしてきた。

さすがにこんな姿を見たらむげに断れない。


「分かったよ、行くよ」


「ほんと!?当日仮病使ったりして休まない??」


「休まないよ」


俺どんな奴だと思われてるんだよ


「やったー!良かった、本当に、、」


本当に無邪気に笑うさっきまでは恥ずかしさか何なのか分からないが不安そうな顔をしているかと思ったら今度は花が咲いたみたいに笑っている表情がコロコロ変わって忙しい奴だな。

だが何よりさっきまで絶対に行かないって決めていたのに誰かに必要とされているってわかったとたんに行こうと思うなんてちょろすぎて自分の事ながらあきれる。

だけどバドミントンをしていた時も応援してくれる仲間や家族のために頑張っている側面もあったなと思いだした。

いつだって誰かに必要とされていたからおれはここまで頑張ってこれたのかもな。

今回は優希に頑張る理由をもらったってことか。


「ありがとうな、優希」


「ううん、こちらこそありがとう優也」


沢山色んな話をしていたら優希の家に着いた。


「送ってくれてありがとう」


「おう、また明日の遠足でな」


「うん!明日の遠足で」


別れの挨拶をしてから俺は自分の家に向かった。
















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