第4話 遠足~前日譚~

遠足の班を決めてから時間は流れ遠足の前日になった。今日の最後の授業はHRだ(ホームルーム)この時間中に明日の集合時間や集合場所などの確認それからしおりの読み合わせなどを各班行うことになっている。

そのため今は班員で集まって最後の確認をしているところだ。


「明日は8時までに学校に集合しといてね、当日はみんなでカレーを作るから」


確認事項も済んだため雑談が始まった。


「一年から付き合いはあったけどまさか同じクラスになるとはなー」


「そうだねー、私と桃と葵とヒロトが同じクラスになるなんてね」


「そうですね、やはり気心の知れた人たちが同じクラスにいるのはとても心強いです」


「旧知の仲ってやつだな」


「でもさー、私たちはお互いのこと知ってるけど優也と拓斗の事はみんな知らないんじゃない?私は一年の時同じクラスでけっこう仲良かったけど」


「言われてみれば何も知らないかも」


「そうですね、同じ班になったのも何かの縁ですしもう少し詳しく知りたいですね」


「てか、なんで優也は中学の時バドミントンをしていたのに今はしてないんだ?」


「もうバドミントンは出来ないんだよ、俺の体は」


空気が一気に重くなった。皆の顔は何かいけないことを聞いたしまったという顔をしてそのあとに必ずこう言ってくる『ごめん』って俺はそれが一番嫌いなんだよ安い同情なんかされたくないんだよお前らみたいなのに。何も知らないのに心にも思っていない『ごめん』なんていわれても虫唾が走る。


「なんかごめんな、そんな重い話だとは思はなくて」


そういうのマジでうぜーわ


「おい、優也」


「なんだよ」


「周り見てみ」


俺は言われたとおりに周りを見渡しただが俺にはその変化に気が付けなかった。


「何がいいてんだよ」


「他の奴らの顔みてみろ」


さっきから見てるけど何が違うのか分からない。


「心の声もれてたぞ」


それを聞いてもう一度班員の顔を見た。確かにさっきとは違うことに気が付いたさっきはあわれみや同情。だが今は衝撃的なことを言われて頭の中の整理が追い付いていないという表情になっている。どうやら頭に血が上って制御がきかなくなっていたらしい。

バドミントンをやめてだいぶ血の気は失せたと思っていたのに相変わらずの血の気の多さってことか。


「大丈夫?」


「あー、ちょっと席外すわ。先生に何か言われたら適当に言っといてくれ」


俺はその場から離脱した。

今は授業中なため廊下はとても静かだった。

この静かさが俺の頭をクールダウンさせてくれた。

授業中なため他に行くところもなかったのでいつもどうり屋上で時間をつぶすことを決めた。


扉を開け、横になり空を見上げながらさっきのやり取りについて考えた。

俺にとってバドミントンをしていた時間は何物にも代えがたいものだ。

仲間と過ごした時間、顔を合わせれば誰が強いともめた日々一緒にばかやって先生に怒られた日々その何もかもが俺にとって宝物だ。

なのにそれに安っぽいその場の空気を悪くしないための『ごめん』は神経を逆なでされた。


やっぱり俺はどうにも我慢のできないことが多い、中学の時もよく問題を起こしては担任に怒られたりクラスメイトに文句を言われたもんだ。でもそのすべてが気にもならなかったそれは部活の仲間や親友がいたから他には何もいらなかったからそんな関係のない奴らの評価なんていくら集めたところでゴミはゴミでしかない、そう思って生きてきたのに何でイラついてしまったのだろういつもの俺なら気にも留めないのに、きっと俺は何も考えずただ薄っぺらい人間関係を築いて自分たちは青春しているという奴に俺の大事なものに触れられたのが気に食わなかったんだろう。


高校に入ればまた苦楽を共にすることができる奴らと出会えると思っていたんだがやっぱりそううまくはいかないか。


今回の遠足も不本意な形とはいえいつもだったら関わらないようなメンツと関わることになってすこし楽しみにしていたけどその希望はものの数分前に砕かれた。


遠足は家でさぼるかなー、今更あそこに戻っても胸糞悪いし。


でも拓斗と優希には悪いことしたな。

今度何かしらで埋め合わせをしないといけないな。



キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン

考え事をしていたら授業が終わったみたいだ。今日の授業は全部終わり。


この後は帰りのHRで連絡事項を担任から聞かされた後解散。

今すぐに戻ると顔を合わせそうだからみんなが下校した後に俺も帰ろうかな。

その前に拓斗にそいつが帰ったかどうか確認してもらうため、LINEを送った。


それから数十分後に拓斗から帰ったと返信が来た。拓斗には先に帰ってもらうことにした。もう少し一人になりたかった。


ガチャ、、


扉の開く音がした。ここを使っているのを知っているのは三人しかいないがここに来そうな拓斗はもう帰っているし朝宮光もわざわざ来るような人でもない。となると残るは優希だが、、、


「やっぱりいた」


屋上に来たのは優希だった。こいつはいつも俺の面倒を見てくれる。


「何で来たんだよ」


「拓斗に優也ならここにいるって教えてもらったからだよ」


「それは俺が何でここにいるのが分かったかの答えにはなっているが何で来たかの答えにはなっていない」


「どうせ一人で難しく色んなこと考えているんじゃないかなって思ったから様子見に来たんだよ」


「心配してくれてどうも、だけど大丈夫だ。今ちょうど帰ろうとしていたところだ」


「そっか。なら一緒に帰らない?」










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る