05*VSグリフォン(3)




視界の中心に舞ううるさい新入生――ウインドに迫るグリフォンの攻撃を刀で弾く。己一人ならともかく、もう一人の行く先を整えながら進むのは難しい。


しかし己一人ではがむしゃらに攻撃を繰り出すしかなく、その攻撃を奴の核を破壊するまで続けるというのは感知系魔術師が現れた今、無駄の多い悪手と言わざるを得ない。完全に攻撃に集中出来るならばまだしも、ヴァニラの防御に制約がある状況下では長期戦は新入生に被害が出るリスクも上がる。


しかし空中戦のために魔力で足場を作って跳躍しているが、それをウインドがしていることにも驚く。これが何の教育も受けていない人間の所業なのだろうか?違和感を感じるが、指摘している場合でもない。出来ているに越したこともないのだから。


「いつもより体がめっちゃ軽いぞー!」


「気を逸らすんじゃない!」


ウインドの動きは羽のように軽やかだ。この極限状況で普段より動けているというのならこれ以上なく重畳ちょうじょうではあるが。


(――何だ、この妙な感覚は)


不自然ではない。不快でもない。ただ、妙なのだ・・・・。負の感覚でないのならば、この違和感の発生源はどこにあるのか?負でないなら正だろう。そう、つまり。


(余りにもハマり過ぎている・・・・・・・・のか)


己の動きを殺さずに、流れるような動作のままグリフォンの攻撃を弾く。


この防御にしてもそうなのだ。まるで己の体の方が先に攻撃を認識し、脳の判断より先にその場所に刀がある感覚。


そして動きも魔法も初見の相手との息の合いすぎた進撃。


(まるで他の誰かの干渉がある・・・・・・・・・・ような)


しかし干渉魔術の気配は感じられない。で、あるならば余計な考えに囚われてむざむざこの好機を逃すなど馬鹿の所業である。


「見えたぞ!!両翼の付け根のど真ん中だ!!」


責務を果たしたウインドの声が響き渡る。今度は俺が責務を果たす番だ。


「応」


グリフォンの背後を取るために、己の出せるトップスピードで、より上空へ跳躍する。グリフォンの頭上で体を捻り、空に足を向けて踏み切った。


刀身に魔力を注ぎ、魔術を発動させてグリフォンの背に向けて突く。パヂリ、と魔術発動の兆しの音がした。


ゴウゥッ!!!


「ギィイイイイイィィィィィィィッ!!!」


(――は?)


刀身に刻まれた魔術式はだ。しかし、刀からほとばしったのは――





「めちゃくちゃ格好良いな!!」


「絶体絶命のピンチを乗り切った安堵よりもヒーローに出会った興奮に胸躍ってますって顔止めたら?ジェイ」


「わかってるけど!でも格好良すぎだろ!?俺の想像通りのシーンが見れちまうなんて…!抑えきれぬこの感動ッ!」


先輩は俺が想像していた通り、炎の魔術・・・・でもってグリフォンを消滅させたのだ。これが興奮せずにいられるだろうか。いや、絶対無理。


不謹慎だ。ピンチを喜ぶのは不謹慎であるが。しかしこれだけは言わずにいられない。


「魔術学園に入って、良かった…っ!!」

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