第7話
次の日、昨日の事件の追求と、ツキと顔を合わせることに迷ったが、結局学校に行くことにした。今日行かなければ、ずっと行けなくなる気がしたからだ。
教室に入ると、早速数人が僕に答えを求めてきた。佐倉月との関係について、「わらかない」の一点張りで突き通した。それを聞くとつまらなそうな顔をしたが、彼らのいう面白い展開――僕と彼女が個人的な付き合いがあるという可能性――について、もともと質問者自身も懐疑的だったらしく、僕の答えにも納得した様子だった。
代わりに彼らは、その矛先を佐倉月に向けるつもりだったようだが、ついにその機会が訪れることはなかった。
「佐倉月は、転校した」
朝のホームルームの担任の言葉に、教室中がざわめいた。
全員が――僕を含めて――混乱の坩堝にあった。
混乱しつつも、担任の言葉を必死で拾い集める。
しばらく前から転校は決定していたこと。
みなに気を使わせないために、内密にしておいて欲しいと頼まれたこと。
転校先はアメリカだということ。
クラス中に衝撃を残したまま、担任は何事もない風を装いながらテスト用紙を配り始めた。
日常は、人が一人いなくなった程度では変わらない。
放課後、僕は物置の裏を確認した。
テレポーターは消えていた。
だが、霜が降りた土には青いペンキがしたたった跡があり、かつてそこに存在していたことを示していた。
僕は確信する。
ツキはテレポーターを完成させ、一人で彼らの星に行ったのだ。
その際に、僕が邪魔になった。だから昨日、拒絶した。
――ツキは、裏切った。
僕が宇宙人に会いたいと知っておきながら、自分だけ抜け駆けした。
悔しさは憎しみは生まれなかった。むしろ、心は空だ。何もない、まるっきり、抜け落ちたような。
――そうだ。
僕は懐から通信機を取り出す。
彼女のテレポーターが本物だとしたら、これもまた本物のはずだ。
それを握り締め、空を見上げる。
木の枝の向こう側に広がる、薄い雲がかかった空――その向こう側にいるはずの、ツキに向かって。
僕は拳を突き上げた。
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