第19話 もふもふととある冒険者PT

 落ち着きのある雰囲気をかもし出している定食屋を探していたら、いつの間にか大通りを外れた道に出た。


 あれ? ここはどこでしょうか。

 どうやら迷ってしまったようだ。何気にブランモンは広いんですよね。


 それにしても緑豊かな街ですね。とても綺麗です。自然な緑の匂いも最高。それに混じって、美味しそうな食べ物の香りがしてきた。ヨダレが出てきましたよ。誘われるように香りを辿って行くと、一軒の飯屋さんが現れた。


『スマイル亭』


 木造の外観で、何処か懐かしいような趣のあるお店。入ってみますか。


「いらっしゃいませ。あら、この辺では見かけない顔ね。ここに来るのはほとんど常連だから珍しいわ。こちらへどうぞ」


 美人な店員さんに案内された。


 この店員さんはかなりタイプな女性。茶髪ポニテロングに、目がクリっとしてて、スタイル抜群です。


 お店もこじんまりとしてるけど清潔がある。カウンターが6席。テーブルも4人がけ席が6つ。お客さんは冒険者らしき人達がテーブルを二つ付けて6人居た。PTかな。何かオーラが漂っているますね。強そうです。


 メニューに魚定食があったので、頼みました。久しぶりです。もちろんエールも頼みました。そして、お姉さんに無理を言って白米を頼んだ。白米じゃ通じなかったのでライスと言ったら通じた。後、醤油も。やっぱりお姉さんも驚いていた。


 出てきた料理は、鮭に似た魚。焼きたてで脂がジュージュー言っている。皮の焼き目も程よい。何より匂いがたまらない。醤油を垂らして食べた。とても美味しい。ライスとよく合う。最高。エールもギンギンに冷えてて美味しい。


 こういうお店を探してたんだよ。やっと見つけたよ。決めた、このお店の常連になりましょう。店員さんタイプだしね。


「ね~君、なかなか美味しいそうに食べるね。そのライスの食べ方も珍しい」


 金髪で、好青年な感じの1人の青年が話しかけてきた。先程のPTの1人です。


「ええ、魚料理ととっても合うんですよ。よかったら食べてみますか?」


 1口あげてみたら、驚いていた。


「美味しいですね。こういう食べ方は初めてです」


 気に入ったらしく、僕もライスを、と店員さんに注文した。そして、俺のテーブルに自分の料理を持ってきて座った。


 この辺では見かけない顔だし、美味しそうに食べる姿に、食べ方を見て、思わず話しかけたらしい。

 いつの間にか他の人達も一緒になった。彼のPTです。みんなライスを注文した。そして自己紹介された。


 ジズ・フィン。20歳。戦士

顔が整っていて、全体的に中性的な、The主人公タイプの金髪の美青年。PTのリーダー


 シバ・アレン。25歳。盾職タンク

筋肉隆々で、顔もごつい。声も大きく、暑苦しいが、好感の持てる赤髪の青年。


 ロロ・イブ。20歳。テイマー

よく喋る人懐っこい青髪の青年。


 ワホイット・シアルン。19歳。白魔道士

白いローブにフードを目深く被っている。チラッと見える目がキリッとしていて綺麗な、金髪の少女。ラブックの妹。


 ラブック・シアルン。21歳。黒魔道士

こちらも黒のローブにフードを目深く被っている銀髪の少年。ワホイットの兄。


 黒髪の青年。スリップ・ツァー。23歳。侍。

いかにも侍ですよって感じの姿。無口で、喋り方は語尾に「ござる」が付く。

 侍って、絶対過去に日本人の転生者が居よね。


 それから色々話し、すっかり意気投合した。みんな良い人達です。


 彼等はそこそこ名の知れた冒険者らしい。

 この世界に害を及ぼす存在や、魔獣を狩りながら冒険をしているらしい。

 この世界の魔獣を仲間にしようとしている俺とは真逆ですね。


 今はこの街、モンブランに落ち着いているとの事。しかし、ファミリーに依頼さえくれば、どこだろうと、飛んで行くとの事。ジズはファミリーの家長で、ファミリー名は赤月レッドムーン。カッコイイ名前ですね。


 そして、ファミリーはみんな火属性しか居ないとの事。俺も、自分の事、ファミリーの事を話した。蒼いブルー ウィングスの名も気に入ってくれた。


 そんな中でも、ロロとは1番馬があった。同じテイマーだからなんでしょう。なんと、炎龍えんりゅうを仲間にしているらしい。他にも居たけど、事情があって今は炎龍えんりゅうしか仲間が居ないとの事。一瞬、みんな悲愴ひそうな表情をした。


 なんか訳ありですね……。


 1つ気になるのは、【鑑定】してみたら、何故か名前しか表示されなかった。何故でしょうか、全く理由がわからなかった。


 いつの間にか飲みに変わり、店員さんも加わっていた。店員さんの名前はネファー・ジーブル。22歳。この店の女店主だった。ジズ達とは旧知の仲だと言う。

 この店の料理はどれも本当に美味しく気に入ったので、常連になるとネファーさんに言ったら、とても喜んでくれた。


 ジズがホームへ招待してくれると言った。ロロも炎龍えんりゅうを見せてくれると言うので、喜んでお邪魔することにした。


 日も落ちかけ、まだ暗くはない時間帯。ブランモンの外れに、夕日が射し込み、眩しく赤く光る1軒の豪邸があった。いや、お城って言った方が正解かな。

 ほんとにお城ですね。これがジズのホーム。なんとまあ立派なお城でしょうか。ジズは城主ですね。モンブランにこれ程のお城があるとは思いませんでした。これが、ランク5ですか。自分には大きすぎですね。


 ロロに連れられ裏庭に来た。そこには一体の龍が居た。


「―――っうおお。これが炎龍えんりゅう!!」

真紅。綺麗な赤。思わず赤い彗星のなんちゃらを思い出しましたよ。頭に角が左右。が、右の角は折れていた。口は尖り、牙が鋭い。頭部からうなじにかけては棘があり、体は鱗がびっしり。爪は尖り鋭い。翼も立派です。尻尾にも棘あり。初めて見た龍に、興奮した。もの凄い怖いけどカッコイイ。サイズは5mくらいですか。想像より、やや小さいですかね。



「アオバ、今、小さいと思ったでしょ。ほむら、見せてやりな」


 ロロがそう言うと、炎龍えんりゅうは徐々に大きくなり翼を羽ばたかせた。


「おおぉぉ!!凄い。まさに龍。これが本当の大きさですか!!」


 その大きさ、風貌に圧倒された。凄い威圧です。想像より高い。だいたい20mくらいでしょう。マンション7階建てくらいかな。カッコイイ、是非仲間にしたいですね。


 そしてまた、小さくなった。


「どうだ小僧、驚いただろう。グワッハッハッハッ。我は炎龍えんりゅういにしえ古龍こりゅう。名はほむら。そこのロロが、我のあるじじゃ」


 いにしえですか!!他にも居そうですね。


 名前はロロが付けたとの事。名前もカッコイイですね。俺だったらえんちゃんとか赤とか付けそう。俺のネーミングセンス……。


「ええ、そりゃあ驚きましたよ。龍を見るのは初めてです。ほむらさんはいにしえの龍だったのですね。今より小さくなれますか? それと、人型になれますか?」


「何だお主、我の言葉が分かるのか」


 ほむらは、感心した。


「ええ俺もテイマーですからね、理解は出来ますよ」


 俺が質問するとほむらは答えてくれた。大きさは、これより小さくはなれない、人型にもなれないが、人型は、龍神族っていう種族がいる事を教えてくれた。会ってみたいものです。


 名前:焔 Lv72

種族:龍族 種類:炎龍

属性:炎

HP720/720

MP432/432

筋力:S 精神力:S 敏捷:S ストレス:1


【鑑定】はできた。おおおっ!! 強い!!流石 古龍こりゅうってとこですか。まぁLvもそれなりに高いしね。 それより、こんな龍を仲間にしているロロの強さはどんくらいでしょうか。


 ロロを【鑑定】した。やはり名前しか表示されない。う~ん何ででしょうか……。


 ロロとほむらが、何やら話しをしていたが、聞き取れなかった。


「さあ、アオバ、ほむらに会わせた事だし、そろそろホームに入ろうか」


 ジズが言った。


 ほむらに挨拶をして、ホームに入った。


 ホームに入ると、中は広くて綺麗。俺のホームなんて目じゃない。そりゃあお城だから当たり前だけど。そして、インテリアがお洒落。その煌びやかさに感動した。

 こんな所に住めるジズ達は何者でしょうか?


「いらっしゃいませ。アオバ様ですね。私はこのファミリーの管理を任されているタキ・ルードワイと申します。以後お見知り置きを。さあ、皆お待ちです。こちらへどうぞ」


 そう言うタキさんは、4、50代で、スラッとした長身。銀髪の、右目に眼帯をした男性。執事風な格好をしてます。笑顔がとても素敵。


 案内されると、円卓に座るジズ達が居た。20人は座れるほどの円卓です。円卓何て映画でしか見た事ない。なかなか雰囲気がありますね。しかし、6人て……均等になるように座ってますが、寂しいものです。


「いらっしゃいアオバ、まぁくつろいで」


 ロロ達も頷く。ジズはそう言うけど、ぜんぜんくつろげない。落ち着きませんね。


 タキさんが出してくれたお茶を飲む。美味しい。これは紅茶ですね。この世界にも紅茶があったのは嬉しい。柔らかい風味で、渋さが無い。上品な味わいですね。とても気に入りました。


 そこで、ジズが改まって口を開いた。


「アオバに折り入って頼みたい事があるんだ」


「何でしょうか」


 こういう時は良い話しじゃないんだよね。


「アオバが強いのは見ただけでわかった。ただ者じゃない魔力が漂っている。そこで、頼みというのは、モンブランから北西に行くと、ルマーブ山脈というのがあり、その山脈にそびえる高い山。通称、魔の山がある。その山の頂きに邪龍が住んでいる」


 ほほう、魔力ですか、 それより、邪龍ですって? まさか邪龍を倒してくれって言うんじゃ?


「アオバにはその邪龍を倒して欲しい。僕達も一緒に戦う。もちろんタダとは言わないよ」


 あ~やっぱり。まぁ全然問題ないけど。邪龍なんて興味しかわかないですよ。一目見てみたい。どんだけ怖いのかな? でも仲間にしたい。


「もちろん良いですよ。力になれるかはわからないけど」


 即決した。断る理由がないし。



「早っ! 決断する前に色々聞くことあるでしょ? 相手は邪龍だよ、ただの龍じゃないんだよ」


 あまりにも早い決断に、ワホイットは驚き言った。

 驚く姿が可愛いらしい。


 ジズとロロは笑っていた。



「じゃあ、1つだけ。何故邪龍討伐を?」


「あ~簡単な話だよ、邪龍はこの世界とって悪でしかないからね。それにリベンジもしたいから」


 なるほどリベンジですか。ジズ達が負けたか。


 ここで、ジズはまた悲愴な顔になり、話を続た。


「邪龍は強かった。アオバにはわかると思うけど、僕達はそれなりに強い。そんな僕達が負けたくらいだから。わかりやすく言えば、ほむらより強いかな。ほむらは強いよ。それに、決して僕達は強さに奢ってたわけじゃないんだ。僕達は慎重な方だからね…… まぁ邪龍の方が強かったというだけ」


 何か含みのある言い方です……

 確かにジズ達は強いのでしょう。強者のオーラが出てますからね。

 邪龍か~。どんだけ強いのかな。俺より強いよねきっと。ある程度覚悟決めないとダメだね。


 ――――――――――――


 すっかり、日も落ち、夜も更けていた。今日は泊まって、明日朝出発しようとジズは言った。せっかくだから泊まる事にした。

 タキさんに、客用の部屋を案内された。


 部屋自体は俺の部屋と同じくらいかな。違うのは装飾だね。


 ベッドに横になって一、二時間過ぎたくらいかな、なかなか寝付けない。何故かゾクゾクします。あまりにも静かで、敷地の大きさの割には人が少なすぎるからかな。何か怖いですね。お化けが出そうな感じですよ。苦笑した。


 ちょっとトイレに行きたくなりましたよ。う~ん、でも今行くと何か嫌な予感がするんですよね。こういう時はお約束な何かが出て来るんじゃ?

 そう思いながら部屋のドアをそ~と開けて廊下を覗いた。真っ暗で周りがよく見えない。やはりこのパターンは……。


 意を決して出ようとしたら、部屋の外に人影があった。


「ぎゃ~~~~~!!でっ出った!!」


 思わず叫んでしまった。


 いや、出て来るの早いし、出るにしてももっと後でしょうが!! ドアを開けたらすぐそこに居ると思わないじゃん。


「わっ!! びっくりした!どうした? アオバ」


 そこに居たのはロロだった。


「何だよロロかよ。いやいや、どうしたじゃないし、びっくりしたのはこっちだから。何、部屋の前で突っ立ってんのさ」


「あ~ごめん、脅かすつもりはなかったんだけどね」


 ロロは笑いながら言った。


 更に、何処からか気配を感じた。こんどは何だ?

 部屋を見回すと、窓の外からこちらを覗いている大きな目と、目が合った。


「ぎゃ~~~~~!! でっ出った!!」


 また叫んでしまった。


「すまん、脅かすつもりはなかった。我だ、ほむらじゃ。しかし、お主は臆病だの。グワッハッハッ」


 焔がニヤケながら言った。


 その容姿でニヤケると不気味だよ!!

 くそっ何だこのコンビは。


ほむらは何の用だ? こんな夜分に」


「いや、用はない。何となくだ。 グワッハッハッ」


 はぁ……嫌がらせですね。人が驚く姿を見るのが趣味なんですね。


 俺は決して怖がりじゃないんだけど、これはさすがに怖いですよ。てか、こんなの誰だって怖いよね??


 ロロは俺の従魔をどうしても見たくて、気なになって仕方なかったっらしい。だから、俺を訪ねて来たとの事。


 なら、普通に訪ねなさい。部屋をノックするなり、声をかけるなり、部屋の外でただただ突っ立ってるだけなんて、ホラーですか。


 渋々ロロを部屋へ招き入れ、従魔を見せることにした。もちろんその前にトイレへ行きスッキリした。


 ガチャの事は『スマイル亭 』で話してあるし、まぁロロなら見せても大丈夫でしょう。


 3体【ディスチャージ】した。


 出たのは、ラビー、ライム、アンソニーの3体。


 俺はラビーに抱きつき、顔をうずめめた。もふもふが気持ちいい。一日の疲れが吹き飛びますね。

 その姿にロロとほむらは目を丸くして驚き、その可愛いらしい魔獣の姿にニマ~とした。ほむらのその顔が怖い


 ついでにロロにルーペでモンパラを見せると、大興奮。


「アオバ、凄いなこれ。魔獣の世界なんてホントにパラダイスだね。しかも、こんな可愛い姿なんて。行ってみたい」


 ロロは魔獣が心から好きらしい。怖いとは思わない、寧ろカッコイイと言う……。

 まぁどう思うか何て人それぞれだし。


 それからしばらくロロと魔獣について語った。語りながらもロロはモンパラに夢中でニマニマしっぱなしだった。



 ――――――――――――


 ドアがノックされた。


「アオバ様、朝食のご用意が出来きましたので、どうぞお召し上がりください」


 おっ朝食。もう朝ですか。いつの間にか寝ていたらしい。ロロの姿はなかった。


「わかりました。今行きます」


 タキさんに、今度は食卓に案内された。ジズ達は既に席に座っていた。


「おはよう、アオバ。よく寝れたかな?」


「まぁ寝れたのかな」


 ジズの隣にロロが座っていた。目が合うとウィンクをされた。


 えっそのウィンクは何?

 ジズ達はそれを見て、2人の間に何かあったのかとニヤケた眼差しで俺を見た。


 いやいや、何もないし、そんな趣味はないから。そんな目で俺を見ないで~~。


 ジズは白い歯を光らせ、満面の笑顔を見せた。


 ――――――――――――


 朝食を終え、みんなで裏庭のほむらの所に来た。


「支度は整ったし、では行きますか。アオバよろしくね」


 ジズが俺に手を差し出した。


「もちろん。よろしくね」


 俺もその手を受け入れ握手を交わした。そして、俺はジズのPTに加わった。


「では、行ってくる。後は任せたよタキ」


「ああ、気をつけてな、次はないぞ」


 ジズとタキさんは握手を交わし、軽くハグをした。

 ロロ達もタキさんを見て、頷く。


「では、邪龍討伐に行きましょう」


 そして、元の大きさに戻ったほむらの背中に乗り、邪龍が棲む北西の魔の山へ飛び立った。



「必ず無念を晴してくれ、ジズ……そして頼みましたよ、アオバ様」


 遠く消えいくジズ達の背中を見つめ、タキ・ルードワイは呟いた。









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