第20話 もふもふと邪龍討伐。前編
歩いて7日の距離に魔の山はあるらしいが、飛び立つこと30分も立たない内に着いた。最初こそ速すぎて落ちるかと思った。必死にしがみついた。マジ死ぬかと思いました。
ロロが速度を落とすように言わなかったら、今頃、地面に濃厚なキスをし、抱きしめ絡みつき、永遠の愛の誓いを立てていたでしょう。ってどう? この例え!!
それとも、どっかで見たことある、潰れたカエルみたいになって平面アオバに……。
焔も早く邪龍を倒したくて、ついつい速度を上げてしまったとのこと。空の景色を楽しもうと思ったけど、全然楽しくない。寧ろ、もう乗りたくない。ドラゴン酔いですよ。気持ち悪い。さすがにロロ達もあまりの速さに顔面蒼白になっていた。
さてと、気を取り直して改めて周囲を伺うと、そこに一体の邪龍が……居ない?
邪龍は居ないが、代わりに青紫色した歪んだ空間が存在した。これは何でしょう?
「アオバはゲートを見るのは初めてかな? 」
ジズは、不思議そうな顔している俺を見て言った。
俺は頷くと、話を続けた。
「この世界にはゲートがいくつも存在し、こういった場所や、ダンジョンの中にもある。いずれもゲートの中には強魔獣達が生息している。興味本位で入ると痛い目にあうから気をつけて。アオバは大丈夫だろうけどね。中に入るには簡単、ゲートに触れればいいだけ」
話しながらもジズは早く入りたくて仕方なさそうにソワソワしている。
それにしてもゲートがある世界でしたか。何かかっこいい。ダンジョンもあるのね。ダンジョン攻略とか楽しそう。
もふもふ集めにダンジョン攻略。楽しみが増えました。
さあゲートに入りましょうか。中はどうなってるのかな?
ゲートに触れた瞬間、目の前が暗闇に包まれた。
目を開くと、広く荒廃した地に、曇り空。空気がどんよりしていて重い。
荒れた地の真ん中に一体のドラゴンが寝ていた。いや起きていた。目だけをこちらに向けて。
「あの~ジズさん、あれが邪龍だよね? こっちを見てますが……」
俺がヒソヒソと話すと
「見てますね。ガッツリ見てますね」
ジズもヒソヒソと答える。
「時にジズさん。どのような作戦で?」
「そうですね、アオバさん。作戦Aでいきましょう」
「Aとは?」
俺とロロ達はジズの返答を待つ。
「Aとは。Aとは、当たって砕けろのA!! そして、アオバのA。名づけて『当たって砕けろ。アオバがいるからまぁ何とかなるでしょう作戦』」
「「…………」」
みんな目が点になった。
はあ? 何言ってんのこの人? 俺に任せるってなんだよ。当たってのAとアオバのA。上手い!!いや、上手い言ってる場合じゃないし……。
どこが慎重だよ、全くふざけてますね。でもまぁそういうのは嫌いじゃないけど。
「こんな時にふざけてる場合ですか!!」
ワホイットがジズを叱咤した。
あっ可愛い。怒った顔が可愛いですワホイットさん。
そう思っていた俺を、顔に出ていたのか、ラブックに睨まれた。
それにしても邪龍は怖いですね。あの目に睨まれたら身体が動きませんよ。蛇に睨まれた蛙とはこの事ですね。いや、気持ちはね。まぁ実際、足はすくんでいるけどね。
って目が四つあるし、四つ? あらら頭が2つもあるじゃん。双頭龍ですか。
どれどれ邪龍は如何程か【鑑定】した。
《スキル【鑑定】のLvが4になりました》
おっLvが上がった。
名前:無し Lv94
種族:古龍族 種類:邪龍
属性:闇
HP752/752
MP1504/1504
筋力:S 精神力:S 敏捷:S ストレス:1
邪龍は古龍でしたか。焔と同じか。何とステータスが俺を完全に上回ってますよ。チート級じゃないですか。 Lvが高いからしょうがないけど。
おいおい大丈夫か俺……。
でもまぁ、倒したらLvはかなり上がりそうですね。
なら従魔も出すかな。
早速【ディスチャージ】した。
最初に出たのはライム。次にレモン。
あらスライム達ですか。はぁなんて可愛いいんでしょ。邪龍見たあとのスライムは癒される。
「カワイイ―――っ。何このスライム」
ワホイットがレモンに抱きついた。
いやいやそんな姿のワホイットもかなり可愛いですよ。
「可愛いでござる」
スリップが頬を緩め、ぼそりと呟いた。
ロロ以外で見るのは初めてだもんね。可愛いは正義。みんなを笑顔にします。素敵です。
わーわーきゃっきゃしているを見てほのぼのした。
そこでライム達に【魔獣戦闘モード】を掛けて、
きゃっきゃからぎゃーぎゃーに変わったのを見て楽しんだ。
邪龍が起き上がり言った。
「何だ、貴様等は。我の寝床に来て、ごちゃごちゃ騒いでうるさいわ」
邪龍は苛立った様子。
寝床でしたか。それにしても大きいですね。焔より1回りも2回りも大きいんじゃないかな。そして凄まじい威圧ですよ。全身漆黒で、外見はほぼ焔と同じ。違うのは頭が二つあるという所かな。
ライムとレモンを岩陰で隠れてる様に言った。あくまでLv上げですから。
「作成Aで行きますよ」
ジズは言った。
はいはい、Aですね。わかりましたよ。
俺もジズ達も戦闘態勢に入った。
〖範囲身体強化〗
ワホイットがみんなに身体強化を掛けた。力が
「ほほぅ、下等な人間如きが我に挑むか。久しのぅ。前にもいたわ、そんな人間達が。いつだかは忘れたが」
「そんな下等な人間に負けて、後で吠え面かくなよ」
俺は負けじと言ったが
「これは面白い事を言う。愉快じゃ。実に愉快」
《スキル【言語理解】のLvが3になりました》
邪龍はそんな俺を見て、声高らかに笑っている。
その笑い声にちょっぴりイラっとした。
前か~。ジズ達のことかな。
あ~【言語理解】のLvが上がった。当たり前に魔獣と喋ってたから、スキルの存在を忘れてたよ。
てば全力で行きますよ。自分の強さを確認するにはうってつけですね。
「アオバ行きまーす」
って言ってみる。
【ソイルボール】【ファイアボール】【ウォーターボール】【ウィンドカッター】
まずは攻撃魔法を放つ。
先に【ウィンドカッター】が邪龍の体を傷つける。龍の鱗は硬いらしいが傷つけましたね。Lv2だけど、やっぱり威力あるのかな。
次いで【ソイルボール】を右手で弾くが、触れた瞬間に爆発した。
邪龍の手から僅かに血が流れた。
邪龍は自分が傷つき微かに驚いている。
【ファイアボール】も邪龍目掛けて飛んで行くが、邪龍は左手から黒い球を放った。すると【ファイアボール】はその黒い球に掻き消され、こっちに飛んできた。
危なっ。横に飛びそれを避ける。地面に激突した。
これは何ですかね、魔法かな? 地面が削れてますよ。俺も出せるかな~。
最後に【ウォーターボール】がゆっくりと邪龍に近づき、邪龍に合わせ大きくなり飲み込んだ。が、邪龍は不敵な笑みを浮かべ、それを吸い込んだ。
おお、【ウォーターボール】を逆に飲み込みましたか。
「ちょうど喉が乾いておったわ。グワッハッハッ。
しかし、我に傷つけるとは、久しいのぅ。やるな、人間」
邪龍は楽しそうです。
「まだまだですよ」
ちょっと試してみますか。邪龍に向け左手をかざし、集中した。何か出るかな? 更に集中すると、手の平から黒い球が出た。
《魔法〖ダークボール〗を習得しました》
おお出たよ。〖ダークボール〗ですか。やったね、攻撃魔法覚えたよ。
そんな〖ダークボール〗は邪龍に吸収された。
ありゃ、吸収された? 闇属性だから?
う~んならばと、杖を巾着から取り出し、左手に持ちもう1発〖ダークボール〗を唱え、放ってみた。杖の龍の口に闇が集まり、邪龍に向けて飛んで行った。威力が凄い増した。が、やはり効かなかった。何だよせっかく覚えたのに。
あらLv1でMP50も持ってかれたよ。
ならこれではどうかな?
今度は右手に杖を持ち邪龍に向け集中させた。すると今度は杖の龍こ口から光の球が放たれた。
《魔法〖シャイニングボール〗を習得しました》
かっこいい。これはなかなかですね。そして、速い。
〖シャイニングボール〗は邪龍に直撃した。
邪龍の体から煙が出ている。これは効いたか。
もう1発放った。今度は邪龍が咄嗟に右手で弾いた。効きはしたが、まぁ火傷程度ですね。Lv1だから、こんなものなのかな。
そこで、後ろにいたラブックは〖炎獄の槍〗と唱えると、ラブックの後ろに魔法陣が現れ、炎獄で出来た槍が現れ、邪龍に向かって飛んで行った。それを邪龍は白い息を吐き、凍らし、それを掴み、ラブックに投げ返す。
今度は焔が凍った槍を口から【
ラブックも焔も凄いですね。良い物を見ましたよ。
魔法がダメなら物理かな。俺は邪龍に向け駆けたが、邪龍は飛び上がろうとした。
おっと、そうはいきませんよ。
【捕縛の鎖】を放つと、地面から現れた2本の鎖が邪龍の後ろの両脚に絡みつく。が、ものともせず鎖を引きちぎり、空に舞い上がる。
なっ鎖が……。
上空高く昇った邪龍は俺目掛け降下してきた。
近づくにつれ、その大きさが際立つ。うわっ!!デカっ!! 怖っ!! そして速っ!! 間一髪後ろに飛び、避けた。
邪龍はすかさず尻尾を横に薙ぎ払う。俺はとっさに、両腕を前にクロスして防御した。が、そのまま右に吹き飛ばされた。そして尻尾の勢いは止まらず、近くにいたジズ達ち向かっていった。 間一髪シバがスキル【鉄壁】でそれを防ぐ。その重い一撃でシバの足が地面を踏み抜き、立膝を付いた。が、見事です。完全に防ぎきっています。
「大丈夫かアオバ」
シバが俺を見て言った。
「ええ、大丈夫ですよ」
いやいや、痛いですよ。両腕がジンジンします。HPが100も減りましたよ。逆に100しか減ってないんだね。【天使の慈愛】でHPはすぐ回復したけど。でもこれ普通の人間だったら、両腕粉砕か即死ですよ。
「シバ達は大丈夫?」
みんな頷く。
「それにしても、あれを受けてピンピンしてるなんて流石だね」
ジズは言った。
まぁ防具が防具ですから。それにしても凄い一撃ですね。俺は吹き飛びましたが。苦笑した。
風圧も凄まじい。みんな耐えましたね。
〖女神の祝福〗と、ワホイットが回復呪文を唱え、シバと俺を回復してくれた。俺はもう大丈夫なんだけどね。
「ありがとう」
お礼を言った。
そして、ワホイットのフードが脱げていた。何と、何とですよ。ワホイットの耳が尖っているではないですか。これはまさか、まさかのエルフさんではないですか。こんな場所で会えるなんて。ずっと探してましたよ。エルフさん。
ブランモンに来てから、何故かエルフをお見かけしなかったので、半ば諦めていたけど、まさかワホイットがエルフだったとは。
後でエルフ達が何処に住んでいるか聞かないと。いや~それにしても美しい。エルフは容姿端麗と聞いていましたが本当だったんですね。
「おいアオバ。何を人の妹をジロジロと見ているんだ」
ラブックに睨まれた。そんなラブックも相当なイケメンだった。
「あっいやごめん。ワホイットがあまりにも綺麗だったので、つい見とれちゃったよ」
ワホイットが顔を朱に染めた。
「よくあれを耐えたな人間。しかし、よく見ると貴様等は、我が滅ぼした人間によく似ている。いや、あの時の人間か。そこの炎龍も居たよの。何故生きている? まぁよい。何度来ようと
邪龍がジズ達を見て言った。
え? 今滅ぼしたって言ったよね?
ジズを見た。ジズは苦笑いをしていた。
「聞きたい事はあると思うけど、話しは後でね。それよりもアオバ。次来るよ」
ロロが邪龍を見ながら言った。
右頭の邪龍は口を大きく開けていた。そこから禍々しい黒い物が溜まっていく。ドラゴンブレスってやつかな。
「よし、俺に任せて。俺が囮になってあの攻撃を防ぐから、奴が打ち放ったら攻撃して」
「大丈夫か?」
シバは心配そうに言った。
「大丈夫大丈夫、任せて」
そう言いながら親指を立て、ニカッと笑い、邪龍に駆ける。
「へい、邪龍さん。何を仕掛けるかわからないけど、そんな阿呆ズラして、何してんの? そんなの食らっても痛くも痒くもないよ。どうせ効かないだろう。 さっきと同じでね。笑えるね、ガッハッハッハ」
安っぽい挑発をしたけど、内心ドキドキです。【堕天使の加護】が効くか試したかったとはいえ、邪龍程の強さの攻撃を、はたして打ち消すことが出来るのか? 出来なければ相当ダメージを食らうよね。いや死ねるね。
「何だと、下等生物風情が。望み通り消しくずしにしてやろうぞ」
いやいや、消しくずは望んでませんよ。
ものすごい形相で4つの目で俺を睨みながら左頭も口を開き、俺に向けてブレスを溜め始めた。こっちは白銀に輝いています。こんなの防げる?
あっでもこれ隙だらけだね。今攻撃のチャンスだよね。
そう思うい、ジズ達を見ると攻撃のチャンスを伺っている様子。いつ攻撃するの? 今でしょ~。左の短剣を抜き、邪龍の右頭に向け投げ放った。
光を纏った短剣は一瞬にして右眼に突き刺さる。
《スキル【
おおっ? またスキル覚えましたね。なら、もう1つの短剣も。
右の短剣を抜き、右頭に向け投げつけた。すると、闇に覆われた短剣は、また右眼に突き刺さる。
《スキル【
ジズはウィンクし、親指を立て「やるね~」と。
ロロ達は拍手しながら頷いている。
え? ちょっ!! 感心してる場合? せっかくのチャンスが!
邪龍は、一瞬の出来事で何が起きたかわからなかった。が、右眼の痛みと同時に怒りが込み上げてき、怒号と悲痛の雄叫びを上げながら、溜めていたブレスを俺に放った。禍々しいブレスと白銀のブレスが、戸愚呂を巻いて凄まじい勢いで向かってきた。
あっヤバい、何だよこのブレスは。怖い。これは死ぬかも。囮になるなんて言わなきゃよかった。後悔した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます