第17話 もふもふと自由な時間。

「おはよう、うるちゃん」


 朝日を浴びながら、ゆっくりと起き、うるちゃんに挨拶をする。朝日を浴びながら起きるのは、とても清々すがすがしい気分になります。


 今日は、1人。ホームを作ってから1週間はたった。何気に1人は初めてですね。


 レスガーシュさん達のPTが、今日はLv上げをするという事で、朝早くから出かけた。

 2人分枠が空いているからと、シーナとイスカを同行させた。


 レスガーシュさん達は、Lv30で、Dランクの冒険者。なのでLv上げをしつつ、シーナ達のランク上げの手伝いをする事になった。


 そうは言っても、ここ1週間で、Eランクまで残り16ポイントまでにはなっていた。粛々しゅくしゅくと、依頼をこなしていたから。テイムは、レッサー2体だけでした。討伐か、素材系を、ほぼ同じのを繰り返していただけ。Lvもイスカが1上がっただけです。


 うるちゃんを捕まえた晩に、俺はシーナにソロモンの指輪を譲渡じょうとした。だって、俺が持っているよりは、全然いいでしょ。天魔も、特に使う機会がなさそうだし。スキルの【言語理解】もダブってるしね。何より、大切な人の寂しそうにしている顔は、見たくはありません。


 シーナは、指輪を貰って最初は頬を朱に染めていた。何を勘違いしたんでしょうかね。


 シーナは、魔獣の言葉が理解出来ると知り、とても喜んでいました。そして、天魔を召喚出来ることには驚ろきを隠せなかった。そりゃあね。扱いはシーナに一任した。


 しばらく、自室でうるちゃんのもふもふを堪能した。程よくふかふかの、毛艶も手触りも最高。雑貨屋で買ったくしで、たまにブラッシングをしてあげると、それがとても気にいったのか、ぶんぶんと尻尾しっぽを振って、うるちゃんは気持ち良さそうにする。


 さて、今日は残りのポイントを獲得しながら、まだ見ぬ魔獣をテイムしますかね。1人だから、動きやすい。


 ギルドで適当に依頼書を選ぶ。

 1つ美味しいのがありました。ちと面倒臭いけど、10ポイント入る依頼が。あの時を思い出すと、吐き気がする。が、今は余裕でしょ。数が厄介だけど。後、臭いも。


 そう、それは『ゴブリン殲滅』


『ゴブリン殲滅』

 ランク:E

 内容:北東の森に棲むゴブリンを殲滅する。

 報酬:銀貨2枚

 ポイント:10

 期間:5日以内

 依頼元:ブランモン冒険者ギルド


 Eランクか~。10ポイントは美味しい。2銀貨も? 手に入いる。多いんだか少ないんだか、わかりませんが。

 シーナは運が悪かった……助けられてよかったよ。てか、あの数はいるよねきっと。それが面倒臭い。でも、あの時より、従魔も増えてるし。サクッと終わるでしょ。今回は、シャーマンとホブさんも居たら捕まえるとしますか。


 ついでにちょうど良い依頼を発見。『ゴブリン討伐』×2

 別に重複にならないよね?

 後は『薬草10束』×2『レッサーウルフ討伐』×1 『レッサーウルフの素材』×1


 マシェリさんに依頼書を見せる。マシェリは、依頼書と俺をまじまじと見て言った。


「アオバさんお1人?」


「はい。従魔が居るから大丈夫ですよ」


「そうね、気をつけてね」


 と、だけ言って依頼書を受け取った。


 あれ? 反応が薄い。驚きは? 心配は? 殲滅ですよ。1人ですよ?……。


 薬草20束を渡し、依頼終了。ポイント×2


 街の外へ出ると、俺はある格好をした。


 シャーマンの被り物。シャドーウルフのコート。そして、黄金に輝く杖。この輝きが格好いい。

 コンゲツさんに言って、杖を金色にコーティングして貰いました。そして、カンゲツさんからは、シャドウウルフの毛皮でガチャに被せるカバーも作って貰った。


 どこからどう見ても魔族でしょ? シャーマンな魔族。あの魔族盗賊砦の再び。ふっふっふ


「やっぱり、アオバは人外だったのね。どうりで魔を感じるはずだわ」


うるにゃんは嬉しそうにした。


 ん~違うけど、闇の属性があるからかな?

 人外なみの強さはあると思うけど。


「今日の俺は魔族って事でよろしく」


 今日は思う存分、楽しもう。そう思いながら俺は、うるちゃんにまたがっている。


 最近の俺は、うるちゃんをかたわらに置き、常に行動を共にしている。街の外に出る時はいつも騎狼きろうしているんです。楽でいいよ。


 ――――――――――――――――――


 北東の森へ疾走していると、後ろからレッサーウルフの群れが付いてくる。


 ん? どういう事でしょう。


「多分、妾を見て仲間と思ったのでしょう」


 仲間ね~。レッサー討伐しなきゃならないんだけどな。


「どうするアオバ? 殺る?」


「いや、このままゴブリン殲滅に協力してもらおう」


 自分の手を汚さずレッサー討伐も出来る。一石二鳥でしょう。生き残ったレッサーは仲間にしてあげよう。


「アオバ、何か企んでる?」


「いや、何も」


 ――――――――――――――――――


 北東の森へ着くなり、いきなり何かが飛んできた。近くに居たレッサーの何体かの体を貫く。


「 何だ? どうした? グハッ」


 またレッサーを貫く。


 咄嗟に皆構える。


「散れ!!」


 俺は叫ぶと、一斉に木々などに、身を隠す。


「そこかっ!!」


 木の上に居た何者かに、左の短剣を投げつけた。光を纏った短剣は神速の如く、一瞬でその何者かの額に命中し、突き刺さり落ちてきた。


 速っ!自分でもその速さに驚いた。


「猿?」


 そう呟きながら、額に刺さった短剣を抜き、猿の体で汚れを拭い、元の場所に収める。


 名前:なし Lv10

種族:猿族 種類:風猿ふうえん

属性:風

HP35/35

MP15/15

特技【風の棘】

筋力:D 精神力:D :D ストレス:4


 緑色で毛むくじゃら。手が長い。見た身はテナガザルを凶暴にした感じ。

 風の棘……レッサーを貫いたやつか。それを見たが、既に消えていた。魔法か何かかな?


「貴様等は何ぞ、ここは儂等の縄張りぞ。これより先に立ち入るなら、容赦しはない」


「我等は、この森にすまうゴブリンを殲滅しに来ただけだが」


 姿は風猿ふうえんだが、大きい。2、3mはありますね。額に角が生えている。いやはや、なかなか厳ついですね。胸筋が凄いですよ。猿っていうよりゴリラです。


「アオバ、彼奴あやつ風猿王ふうえんキングじゃ。妾と同等の力がある」


 キング登場ですか。うるちゃんと同等ってことはCランクかな。


 名前:なし Lv25

 種族:猿族 種類:風猿王ふうえんキング

 属性:風

 HP200/200

 MP50/50

 特技【風の棘】

 筋力:A 精神力:C 敏捷:C ストレス:2


 HP多いな~。筋力もAだし。Cランクでこんなにあったら、もっと上はどうなんでしょう?


 などと考えていると、2体のレッサーが、キングに飛びかかって行った。


 あっ話し合いで解決しようと思ったのに……。


 風猿王ふうえんキングは、手から出した風の棘を1体に突き刺し、1体を捕まえ、引きちぎった。


 それを見たうるちゃんは【咆哮】し、風猿王ふうえんキングへ疾走する。


 風猿ふうえん達はうるちゃんの【咆哮】に怯み、それを合図にレッサー達が風猿ふうえん達に襲いかかる。


 俺は【魔獣戦闘モード】だけ唱え、見守ることにした。


 レッサーVS風猿ふうえん

 風猿ふうえん達が怯んでいる隙に、レッサー数体が【影縛り】を放つと、別の数体が拘束された風猿ふうえんの喉元を噛みちぎったり、引っ掻いたりする。


 正気に戻った風猿ふうえんも負けじと【風の棘】で応戦する。あるレッサーは体を貫かれ、あるレッサーは叩き殺される。


 一方、うるちゃんVS風猿王ふうえんキング


 うるちゃん優勢。色々上がってますからね。


 風猿王ふうえんキングの回りをジグザグに走り、【噛み砕き】や【引き裂き】を繰り出している。


 風猿王ふうえんキングも【風の棘】を出したり、うるちゃんを捕まえようとするが、うるちゃんのスピードにはついていけず、雄叫びを上げる。これには俺もうるちゃんも怯みそうになった。


 だが、力尽きたのか、風猿王ふうえんキングはその場で倒れた。


 死んだか? 確認すると辛うじて生きていた。


【ダークヒール】を掛けてあげた。


「何故儂を助けた?」


「死なすには惜しいからね」


「何が望みぞ」


「貴方が俺の仲間になる事です」


 そう言い、被り物を外した。


「むっ貴様人間か?」


「ええ、人間ですが、貴方よりは強いですよ」


「ほほう、まぁシャドウウルフを従えているくらいだから、そうなんだう。お主と居たら楽しいか? 退屈しないか?」


「どうでしょう。まぁ色んな場所には連れて行けるかな? 少なくとも俺は楽しめますよ」


「わかった。仲間になろう」


「ありがとう。後、この格好してる時は魔族って事でお願いします」


 風猿王ふうえんキングは頷いた。


 生き残りを確認する。

 結構殺られているな~。残りレッサー5体、風猿ふうえん4体。とりあえず回復してあげた。


 すると、1体の風猿ふうえんが俺に飛びかかって来た。

 思わず杖で反撃してしまった。杖の先が風猿の口から脳天を貫通し、風猿ふうえんは絶命した。


 杖を引き抜くと、白子みたいな物体とドロっとした血が、絡みこびり付いていた。


 うげっ!! 気持ち悪い。

 杖を思いっきり振り払って、それを取り除いた。


 ちょっと試したい事があります。

 うるちゃんの時に、【テイム】してないのに、名前言ったら【テイム】した事になった。なので、名前を言うだけで【テイム】になるかどうかの検証。


 そして、いつも悩む名前決め。う~ん、決めた。


「アンソニー……」


 ふわっとアンソニーの体が光る。


 名前:アンソニー

種族:猿族 種類:風猿王ふうえんキング

属性:風

HP250/250(+50)

MP100/100(+50)

特技【風の棘】Lv2【雄叫び】Lv3【ぶん殴り】Lv3【ぶん回し】Lv3【引きちぎり】Lv2【体当たり】Lv3

筋力:A 精神力:C 敏捷:B ストレス:1


 やっぱり、【テイム】になってる。迂闊うかつに口には出せないね。気をつけないと。


 どう? この名前。見た目とギャップあるでしょ?


 特技なんか厳ついし、怖いです。


 アンソニーに、他にこの森には、風猿ふうえんはいるか聞いてみた。今ここにいる風猿ふうえんが全てだと言う。深緑の森になら、結構いるとの事。深緑の森は、この森から人間の足で3日くらい行った場所だとの事。


 深緑ね。今度行きますか。色んな魔獣が居そうだしね。


 アンソニーを【補充】した。


「ウホッウホホホホホホ~」


 アンソニーはガチャに吸い込まれていった。


「アオバ、妾もあんな感じ?」


 と、うるちゃんが聞いてきた。

 そうだよと、笑いながら答えた。


 とりあえず素材ですね。レッサーの素材と、風猿ふうえんの肉ってどうなんだろう。毛皮も一応採っておくかな。それより解体したくないです。イスカも居ないし、ゴブ汰なら解体出来そうだよね。


【ディスチャージ】


 ラビー、レモン、ゴブ汰の順で出てきた。


 ゴブ汰に聞いたら解体出来ると事だったので、肉切り包丁を渡し、解体してもらった。ついでにレモンに残骸を処理させた。


 レッサー肉×14 毛皮×14 風猿肉×10 毛皮×10

 レッサー魔核×14 風猿魔核×10


 その後、風猿ふうえんに案内を任せ、ゴブリンに棲家に向かった。











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