第14話 もふもふとファミリーになる。

 夕刻になったので、レスガーシュさん達との待ち合わせ場所へ来た。みんなは既に集まっていた。


「アオバさんはもう宿屋決まったかな?」


 と、レスガーシュさんは言った。宿屋のことなんて忘れてました。まだですと答えた。


「そうだろうと思って、手配しといたよ。ただ、人が増えてるとは思わなかったから、一部屋しか取ってないな。まぁ3人でも十分寝れるスペースはあるけど」


 言いながら、イスカを見てニヤニヤした。


 レスガーシュさんまで何か勘ぐってるな。俺は別に一緒でも構わないですが。イスカはそれで良いと言っていた。シーナも大丈夫と。


 一旦宿屋に行き、それから飯屋に行く事になった。


 宿屋はレスガーシュさんが泊まっている所だった。部屋に行くと、確かに3人でも十分広い。ただ、ベットが1つしかったが、セミダブルくらいかな。ちょうど2人分は寝れるスペース。レスガーシュさんわざとですね。さすがに3人は狭いので、俺は床に寝る事にした。


 うさ子は飯屋に連れて行けないので、誰か従魔に見てもらうことにした。【ディスチャージ】するとゴブ汰が出た。イスカは驚いたが、すぐゴブ汰に抱きついた。

 そういえばイスカには出すとこ見せてなかったね。

 イスカにも一通り説明した。


 ゴブ汰にうさ子を任せて、先に外に出ていた、レスガーシュさんと合流し、飯屋に行った。


 なかなかの賑わいだった。他にも飯屋はあるけど、ここが1番大きいらしい。特に冒険者が多いですね。


 店の名前は『冒険の舌』というらしい。何か不思議。ゲテモノとか出てくるのかな……。

 こういう所も悪くないけど、こじんまりした、落ち着きのある飯屋の方が俺は好きです。


 とりあえず皆でエールで乾杯した。シーナもイスカも飲んでいる。成人してるからいんだけど、そうは言ってもシーナはお酒が弱い。この間の送別会で、エール1杯で酔ってたからね。酔ったらすぐ回復してあげるけど。


 料理はそれなりに美味しかったですよ。どういう料理かと思ったら、何と魔獣が多かった。嘘つきライアーラットの蒸し焼きとか、何ですか嘘つきライアーラットって。オークのソテー。脂が乗ってて美味しかったけど……トロールのタンまであったよ……これは塩焼きで召し上がれ。他にも色々。


 さすが『冒険の舌』ってだけありますね。最初は食べる気にならなかったけど、みんな美味しそうに食べるからさ。ちょっと食べてみたら意外や意外、美味しかった。でもね~たまにならいいけど、毎回は食べたくないですよ。普通の料理がいいです。


 しばらくみんなで食を楽しみ、談話していると、レスガーシュさんが口を開いた。


「さて、諸君。ここから本題に入りたいと思う。今後の方針について」


 何、急に真面目に言い出して。 何ですか方針て。


「アオバさん、どうお考えで?」


 何ですか、その振りは。ほら、みんな注目して、こっち見てるじゃん。


「方針も何も、俺の目的は魔獣を捕まえて、もふもふ生活を楽しむことだけど……」


「何を仰ってる? 何かあるでしょ。こう、みんなで1つになって魔王を倒すとか。その為に日々特訓して、強くなるとか、より強力な仲間を増やすとか」


 はあ? 何言ってんのこの人は。なんでそっち方面に持って行こうとしている。てか、この世界に魔王居たんだ。あ~居る世界なのね。てことは、勇者も居るよねきっと。魔王か~、ちょっと仲間にしたいかも。


「どうしたんですか、レスガーシュさん。何でいきなり魔王を持ち出す? だいたい魔王倒すのは勇者の務めでしょ。俺はテイマーだよ。それに、勘違いしてると思うけど、レスガーシュさん、貴方達は仲間じゃないですよ」


「いや、でも忠誠を……」


 そこで、レスガーシュさんの弟分が言った。


「はあ? 勝手に忠誠誓ったのはそっちでしょ。何言ってんですか?」


 睨んでしまった。言葉がキツかったですね。一同静まりかえった。ちょっとイラッとした。あれ、俺って、短気じゃないんだけどな~。


 あっ弟分と、レスガーシュさん達の顔が引きつっている。

 シーナは驚いている。イスカは目を輝かせていた。イスカさん……。


「いや、あの~ごめんなさい。元々、人間の仲間を作るつもりなくてですね、テイマーな俺は、従魔と楽しく、もふもふしながら、暮らす生活を送りたいと思っていて……何もレスガーシュさん達が、嫌という理由じゃないんです。しかも魔王討伐なんて考えもしてないです。」


「すまん、アオバさん、勝手を言ってしまった。でも、勝手とは言え、忠誠を誓った身。これは撤回はしませぬぞ。みんなアオバさんに着いて行くと。死なば諸共」


 うわ~。何かちょっと引くわ~。ちょっと気恥しいし。ほら、また他の人達がこっちを見てるじゃ~ん。


「なあ、あいつ昼間ギルドに居たやつじゃね?」

「ほんとだ、猫耳に、銀髪の可愛い子ちゃんも」


 ……。


「私、アオバさんとファミリーになりたい」


 ブホォォ!!


 飲んでいたエールを思わず吹き出した。

 はい? 何言ってるの? ファミリー? それはどういう意味? シーナさんまた変な事言い出したよ。


 突然の告白。奥さんになりたいのか? 妹から奥さんに……それはそれでありですね。てか、酔ってんのかな?


「シーナ、貴方酔ってます? シーナは俺の奥さんになりたいの?」


 そう言うとシーナは顔を真っ赤にした。


「な、何言ってんだ、シーナ。シーナが奥さんになるなら私もなりますわ」


 出たよイスカ。また余計な事を。


 周囲もザワつく。


「銀髪の子、愛の告白したぞ。今度は奥さんになりたいらしい。よくやるね~」

「猫耳ちゃんも頑張れ~」

「リア充死ね」


 はぁダメだ。誰か何とかしてください。


「酔ってないです。違うんです。そういう事じゃないんです。それもいいかもですが、違うんです。そのファミリーじゃなくて……」


 そこで、レスガーシュさんが何かわかったらしく言った。


「あ~あのファミリーね。シーナちゃん」


 シーナは頷く。レスガーシュさんの仲間もわかったらしい。後、周囲の人達も。


 俺とイスカだけが 、??だった。


 レスガーシュさんが説明してくれた。


 ファミリーというのは、要するに、クランとか、ギルドとか、同じ志しを持つ集団、つまりチームの事だった。あ~そういう事ですか。シーナはやっぱり天然ですね。


 ファミリーに入るメンバーは、ギルドにて登録する必要がある。登録する際は、必ず家長も同行しなければならない。家長の許可が必要。勝手に登録出来ない。


 ファミリーには恩恵がある。

 ①ファミリーを作ると、ファミリー専用の家が与えられる(通貨を上乗せすればより良い家が買える)

 ②ファミリーに属する者は、家長を含めステータスが上がる(これは家長が強ければ強いほど仲間のステータスの上がり幅が大きくなる)誰を家長にするか、慎重に決めた方がよい。

 ③ギルド依頼報酬とは別に、ファミリー報酬も手に入る。

 ④他ファミリーからのPT要請は、契約が発生し、契約料が貰える。

 ⑤ギルドからファミリーへの依頼も契約が発生し、契約料か貰える。


 デメリット

 ①家長の断りなく他ファミリーとのPTは組めない。(緊急時以外)

 仲が良いからと勝手にPTは組めない。

 ②1度抜けたら2度と同じファミリーには戻れない。

 ③ギルド依頼の失敗は、依頼受注した本人ではなくファミリーが違約金を支払わなければならない。


 その他

 ①ファミリー間の移籍は出来る。(家長同士が了承すれば可能)

 ②ファミリー同士のいざこざにはギルドは一切の関与はしない。


 なるほど、これはファミリーに入った方が断然お得ですね。ファミリーを作くれば、家が手に入る。周りを気にせず従魔を放せる。更にステータスも上がる。でも、こんなの作くったら、ゆっくりもふもふ生活を送れるんでしょうか? ずっと宿屋生活よりマシか。どうしよ。


「あのさ、俺、今日冒険者なったばっかりだよ」


「そんなの関係ないです。私はアオバさんと家族になりたいんです。ダメですか?」


 そんな上目遣いされたらシーナさん……断るわけには、いかないじゃないですか。イスカまで……。イスカはぜったい遊んでるよね。


「アオバさん、俺達もお願いします。仲間とかじゃなくて、協力ならどう? 同じファミリーだけど協力関係ってことで」


 レスガーシュさんが、協力関係って言うけど、どうなのそれ。何か、わからなくなってきたから、もう何でもいいや。


「わかったよ。良いでしょう。ただし、俺のもふもふ生活の邪魔はしないでね。邪魔したらどうなるかわかりますよね? レスガーシュさん」


 レスガーシュさんは、一瞬で顔が青ざめた。ただただ頷く。


 明日朝1でギルドに行って、ファミリー登録をする事になった。


 それからはみんなで和気あいあいと食事を楽しみました。




 ――――――――――――――――――――


 翌朝目覚めとイスカが俺の横で寝ていた。というか、起きてはいたけど俺を見ていた。


「おはようアオバ様。よく寝れましたか?」


「久しぶりにぐっすり寝れた気がしたよ。けどイスカ、何で俺と一緒に寝てる?」


「昨晩の事をお忘れで?」


 え? 何かした? また酔って記憶を無くした?

 イスカと? 確かに衣服が乱れている気はするが、全く覚えてない……。


「さて、シーナを起こしてギルドに行きますわ。たぶん先にレスガーシュさんも行っていると思います」


 イスカは不適な笑みを浮かべて言った。


 ゴブ汰を【ディスチャージ】し、うさ子は当然頭に乗って、ギルドへ向かった。既にみんな集まっていた。


「おはようアオバさん、昨日はよく寝れたかな?」


 レスガーシュさんがニヤニヤしている。


 おはようとだけ、返事をした。


 ギルドに入り、マシェリさんを見つけ言った。


「おはようございますマシェリさん。今日はファミリー登録をお願いしに来ました」


「良いですけど、直ぐには解散は出来ませんよ。最低でも1年は継続して頂きます」


 そう言ってマシェリさんは裏に行った。

 戻ってきたマシェリさんは契約書を渡した。


「この紙に家長となる人と、家長代理とファミリーとなる人のサインをしてください。最後にファミリー名を記入してください」


 ファミリー名? そんなの聞いてませんよ。みんなの顔を見た。目を輝かせていた。


「レスガーシュさん、聞いてませんが」


 レスガーシュさんも笑って誤魔化した。さて、名前をどうするか。シンキングタイムといきますか。


 みんなで案を出し合った。中々いい名が浮かばない。

『アオバの家』『アオバと愉快な仲間たち』『アオバ様とイスカの愛の巣』『アオバ教』

 とか、アオバだらけじゃんか、恥ずかしいし、ダサいでしょ。しかも愛の巣って何だよ。アオバ教もちょっとやばいよ。少し考えて言った。


蒼いブルーウィングス何てどう?俺の名前のアオはブルーで、はウイングだから、蒼いブルーウィングス何てどうかな?」


 何て安直な。そして、自分の名前をファミリー名に……アオバのなんちゃらよりはマシでしょ?


「それ、カッコイイし、何だか素敵な名前です」


 シーナは言った。みんな頷いた。そんなにいいかな?


 それぞれ契約書に名前をサインし、最後にファミリー名を記入『蒼いブルーウィングス』と。


 家長代理はレスガーシュさんに頼みました。代理も協力してもらわないとね。


 そして、ファミリーの家を与えれる事になったが、ランクをどうするか聞かれた。


 ランク5まである。

 ランク1は最初は無料。二つ目は30金貨。普通の二階建て。1PTは住める。

 ランク2は50金貨。ちょっとゆったりした、庭付きの二階建て。1PTは住める。

 ランク3は150金貨。他ファミリーと差がつく位の綺麗な広い家。2PTは住める。

 ランク4は400金貨。豪邸。自慢出来る。優越感に浸れる。憧れの的。4PTは住める。

 ランク5は1000金貨。超豪邸。小さなお城と言っても過言ではない。もはや城主。6PTは住める。


 流石に高いですね。最初は無料でいいでしょ。


「折角だから、ランク5にしましょう」


 レスガーシュさんは言った。


 はい? 5って、1000金貨だよね。そんな大金ないでしょ。


「アオバさん、私たちのお宝があるでしょ。そこから、1000金貨分払えばいいよ。こういう時に使わないとね」


 レスガーシュさんに耳打ちされた。

 そんなにあるの? ウインドウを開き、アイテム欄に入っている通貨を確認した。そしたら何と。凄いですね。貯め込みましたね。これにはさすがに、驚きました。そんなに盗賊業は儲かるんです? 目を丸くしながら、レスガーシュさんを見た。


「全てはファミリーの為に」


 ウインクをして、レスガーシュさんは言った。


 さすがにこれは、やりすぎでしょ。どんな成金ですか。たかがFランクが、ランク5の家なんて買ったら大変な事になるよ。ひっそりどころか、色んな連中に狙われ、利用さ、ひどい目に合うこと間違いなし。身の丈にあってないですね。


「さすがにランク5は早すぎます。今の自分達に合った家にしよう。せめてランク3にしない? ランク5は、住んでもおかしくないくらい成長してからにしましょうか」


 みんなは賛成してくれた。


 マシェリさんには、ランク3の家を購入するという事で、150金貨を渡した。それでもマシェリさんはちょっと驚いてた。やっぱ通貨持ちすぎですよね。


 マシェリさんは、みんなの冒険カードにファミリー名を入れるので預かると言ったので、預けた。数分後、マシェリさんは戻って来て、カードを返された。後は家の契約書。契約書にサインして、売買成立。家具は付いているとの事。


「これは素敵。カッコイイです」


 シーナがカードを見て言った。みんなも頷いた。


 確かにカッコイイ。カード自体はブロンズだけど。カードのランクは色分けされていて、


 冒険者ランク

F,Eがブロンズ

D,Cがシルバー

Bがゴールド

Aがホワイトゴールド

Sがブラック


 で、カードの自分の名前の上にゴールドで『蒼いブルーウィングス』そして、カードの縁がホゴールドで光り輝いていた。この縁とファミリー名の色がファミリーのランクになっているとの事。


 ファミリーランク

1.2シルバー

3ゴールド

4ホワイトゴールド

5プラチナ


 マシェリさんとみんなに、表向きはレスガーシュさんが家長って事にしてくださいと頼んだ。Fランクの俺が、いきなりランク3の家長じゃ、目を付けられるのは必然だから。まぁそれもそうだと、みんな了承してくれた。


 こうして、ファミリーを作る事になったけど、大丈夫ですかね。まぁ気にしてもしょうがない。何とかなるでしょう。


「さあ、新しい自分達の家へ行きましょう」











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