第13話 もふもふとシーナとイスカ。

 ギルドに戻った俺達は、マシェリさんに報告して、Fランクになったルクピス&クルミンと別れた。その時に、試練=スライム討伐の報酬で銅貨10枚を貰った。冒険者初試練突破ということで、普通のスライム討伐の2倍貰った。


 ルクピスが半分渡してきたが、俺とイスカの分ということで、2枚だけ貰っといた。


 別れ際に、困ったことがあったら、いつでも呼んでいいからと、言っておいた。


 イスカに1銅貨を渡すと、凄い喜んでいた。確かに冒険者になった記念の初の通貨。大切にしまっておきますか。


「私とアオバ様の初めて。大切に取っておきますわ」


 何か言ってたけど、軽く流した。


 そこで、急に悪寒が走った。後ろから声をかける人物がいた。


「ア・オ・バ・さ・ん」


 振り向くと、頬を膨らませたシーナが居た。


「何ですか、2人だけの初めてって。それに、黙って居なくなるなんてひどいです」


 怒こっている。ものすごく怒ってます。


「いや、 だって、シーナは報告に行ったしさ、ついでだから、冒険者になろうかなと。そしたら、2人組みの子達に誘われて、可愛いかったから……じゃなくて、放っとけなかったから。だから、イスカと2人だったわけじゃないよ」


「私も一緒に行きたかったのに!!アオバさんの初めて、わたしも欲しかったです」


 ちょっと言い方。誤解されるから。声大きいし。ほら、どんどん人が集まってきた……。


「あの男、童○だったのか」

「あんなべっぴんさんと、やるね~」


 イスカを見ながらニヤニヤしてる人達。


「痴話喧嘩は他でやれ」

「あんな可愛い子を泣かすなんて酷い」


 迷惑がられたり、シーナを哀れんだり。泣いてないんですけど。


「どっちを選ぶんだろう」

「俺はあのセクシーな猫耳だな」

「僕はあの、銀髪の、目がくりっとした可愛い子ですね」

「どっちも可愛いから迷うよな」


 シーナ派がいたり、イスカ派いたり。選ぶとか、そう言う話しじゃないし……。確かに2人ともかなり美形だけど……。話しが変な方向に行きだしたよ。


「二股なんて最低ね」

「クズ」

「リア充死ね」

「冒険者の風上にも置けない奴だな」


 とか、罵倒される。etc……。


 これはどうすればいいんだ? 周囲の視線が痛い。目立っている。ひっそりと暮らしたいのに、こんな形で人目に晒すとは……。

 とりあえず、謝って頭を撫でてあげ、なだめた。


「私も、撫でてくださいな」


 頭を出して来るイスカ。撫でたい、というか、耳を触りたい。が、ちょっと空気を読んで欲しいです。今はそんなこと出来ません。う~ん、見えないし、何も聞こえない。


「私を捨てるのですか? これから私はどうすればよいですか?」


 と、シーナが目を潤ませ言った。


 また誤解を招く発言を。

 捨てるって何? どうするって? ちょっと何言ってんのこの子は…… シーナとの今後ですか。


 周囲も俺達の動向を見ている。というか、明らかに俺を見る目が……マシェリさんと目が合った。助けてマシェリさん。懇願するような目で訴えるも、マシェリさんは視線を逸らした……。


「助けて貰った恩も返せてないし、私はまだ何もしてあげれてないです。でもこれからもずっと一緒に居たいです」


 別に何もしなくていいんだよシーナ。


「私も永遠とわに一緒ですわ。離れませんわ」


 おい、イスカ止めろ。そういうことを言うな。わざとだろ。絶対わざとだ!


 周囲の重圧に耐えられなくなってきた。一斉に俺を見ている。


 確かにこれは、ちゃんと考えないとね。

 元々シーナは、街までの護衛のつもりだった。人間は仲間にするつもりもないし。従魔とだけで、もふもふ生活を送るはずだったけど……断る理由がないんだよね。


 ガチャの事も知ってるし、従魔とも仲良くしてるし。何より、一緒に居て安心するし、癒される。思いやりのあるとても良い妹ですよ。


 そうです。妹的なんです。夏希が居ない今、妹はシーナだ。お兄ちゃんがしっかり守ってあげないとね。


「早く答えてやれよ」

「なんなら俺達のPTに入れてあげようか」


 わかってますよ。他のPTになんかに取られてたまるか。


「シーナは大切な人だから、もちろんずっと一緒だよ。これからも守ってあげるから。俺の為に何かをしたいとか思わなくていいよ。傍に居てくれればいい。あっでも冒険者としては多少は強くなろうね」


 シーナは泣いて喜んで抱きついてくる。


「あの兄ちゃん、銀髪の子を選んだか」

「そっちか~猫耳だと思ったけど」


 好き勝手言ってくれますね。だけどシーナだけじゃないんだよ。


「もちろんイスカも大切な人だよ。どちらかを選ぶとかじゃなくて、2人共一緒だよ。だって2人は大切な仲間だからね」


 イスカは腕を組んで喜んだ。そしてニヤっとした。


 イスカさん、あなた今、ニヤっとしましたね。俺は見逃さなかった。まったく何を考えてんだか。


「おい、アイツ2人選びやがった」

「ようはどっちも捨てがたいってことだろ」「何、上手い事言ったみたいな感じ出してんの」

「最低」

「でも羨ましい」

「男としてはありだな」

「リア充死ね」

「はい、解散」


 あれ? 感動する場面じゃないの?

 てか、さっきからリア充死ねとか言ってる奴は誰だ? 何故その言葉を知っている。周りの人達は言うだけ言って、散っていった。


 ……。


「改めて、2人ともこれからよろしくね」


 これ以上は仲間を増やしませんよ。


「よろしくです、アオバさん」


「アオバ様の為に尽くしますわ」


 こうして、シーナとイスカを正式に仲間に迎えた。両手に花とは、こういう事ですね。ニヤケが止まりませんよ。


「アオバさん顔」


 ――――――――――――――――――――


 レスガーシュさんとの合流まで、まだ時間あるので、いくつか依頼を受ける事にした。


 依頼書の掲示板から、適当に6つ選んだ。どれもパッとしないが、Fランクだし、人気なのは、もうどれも残ってなかった。


 マシェリさんに依頼書を渡した。

 依頼内容は、討伐系『スライム×10』素材系『拳闘兎ボクシングラビットの肉×5毛皮×5』採取系『薬草10束』×4どれも1ポイント。まぁ地道にやりますよ。早くランクあげようとは思ってないしね。


 ちゃんとした依頼書を見るとこんな感じ。


 依頼書

『スライム討伐』

ランク:F

内容:スライムを10体討伐する事

報酬:銅貨5枚

ポイント:1

期間:2日以内

依頼元:ブランモン冒険者ギルド


 とまぁこんな感じです。


『薬草10束』の依頼は、既にもう薬草を持っていたので、それをマシェリさんに渡して依頼達成。報酬は一依頼で銅貨3枚なので12枚受け取る。4ポイントゲット。


 さあ『スライム討伐』に行きますか。


 シーナとイスカは仲良く話しながら、先を歩いている。よかったですよ。仲良くて。微笑ましいかぎりです。


 街を東に行って、すぐスライムを発見。

 シーナとイスカは先陣を切って戦闘開始。

 2人とも光輝いた。身体強化ですね。シーナの戦闘、初めて見たけど、様になってるね。ちゃんと戦士出来るじゃないですか。


 それを横目に俺はスライムをテイムする。


 イスカが、補充するのを見て、目を輝かせ俺に駆け寄る。

 シーナは大丈夫かな? シーナを見ると余裕な感じだった。相手がスライムだからね。それでもシーナから目を離さない。何か保護者な気分です。


 イスカが、もう一度見たいと言うので一連の流れを見せてあげた。適当なスライムを【捕縛の鎖】で捕まえ、仲間になる事を誓わせる。【テイム】する。それから【補充】でガチャの中へ。もちろん名前は付けていません。


 イスカはその一連を見て歓喜していた。特に【補充】の時。魔獣が驚きながら吸い込まる様がとても面白いと。

 イスカも同じ感性ですね。


 更にイスカに魔法のルーペを渡し、モンパラを見せてあげた。


「わ~お。これは凄いですわ。こんな世界があるなんて、今捕まえたスライムとレモンちゃんと緑色? のスライムがはしゃいでいますわ。あっゴブリンもいる。ラビーちゃんと一角兎バニコーンも。素敵」


 イスカはかなり興奮している。それを見てニヤける俺。


 そこに討伐に終わったシーナも、戻ってきた。 口には出さなかったけど、顔が言っている。「アオバさん顔」と。


「お疲れ様」


 そう言ってあげ、頭を撫でてあげた。


 テイムしたスライムは5体。コイン2枚。


 最後『拳闘兎ボクシングラビットの肉×5毛皮×5』


 拳闘兎ボクシングラビットもすぐ見つかり、8体居た。素材は5個づつだから、3体余る。仲間にしますか。2人に、三体は仲間にするからねと、言っておいた。


 さすが拳闘兎ボクシングラビット。フットワーク良いですね。華麗なフットワークで攻撃を繰り出して行く。イスカも負けじと動きに合わせ避けていく。いつの間にかイスカの爪が赤のオーラをまとっていた。火の付加エンチャントですね。そして、イスカも華麗に拳闘兎ボクシングラビットを切り裂いていく。


 これは圧勝ですね。シーナもスピードでは負けていたが、Lvが違うからね。簡単に斬り伏せていた。シーナも赤オーラを剣にまとわせていた。シーナも火でしたか。そういえばまだ、ステータス見てなかった。



 名前:シーナ・プルモア Lv15

種族:人間 性別 女 年齢:15

職業:戦士 ランク:F

属性:火

HP35/35(+5)

MP12/17(+2)

スキル【身体強化】Lv1【火の太刀】Lv1

筋力D: 精神力:D 敏捷:B ストレス:2


 え? シーナも15歳だったの? まぁシーナは歳相応かな。納得です。


 2人共属性火ですね。了解。


 俺も【捕縛の鎖】で捕まえ、【テイム】していく。が、何と、その内の一体が仲間にならないと言い出した。仲間にならないなら、殺るしかないよ。


 先に仲間にした拳闘兎ボクシングラビットに説得させるも、無駄だった。

 何て頑固な兎でしょう。何でか、殺す気にはなれなかった。しょうがないから、放してあげた。

 それに驚いた拳闘兎ボクシングラビットだったが、何も言わず走り去っていった。

 仲間になった2体を【補充】名前は付けなかった。


 さて、問題は解体ですよ。ライムだと全部消化しそうだし、解体したくないよ俺は……


 しばらく倒れてる拳闘兎とにらめっこをしていると


「私が解体しますわ」


 と、イスカが言ってくれた。何と、そういうのが得意らしい。イスカが住んでいた里では、狩猟で生計を立てていた。だから、解体するはお手の物だと。 ありがたくやってもらう事にした。代わりに肉切り包丁を渡した。


 解体している間に魔法のルーペで、モンパラを覗いた。拳闘兎ボクシングラビットの場所も出来て、世界がちょっとは広がった。ほんとに見てて飽きないですね。

 シーナにも見せてあげた。



 ――――――――――――――――――


 ギルドに戻り、マシェリさんに報告。『スライム討伐』報酬の銅貨5枚。『拳闘兎ボクシングラビットの肉×5毛皮×5』報酬銅貨10枚+拳闘兎ボクシングラビット魔核コア銅貨3枚合わせて銅貨13枚を受け取った。


今回は6ポイント稼いだから、Dランクまで残り44ポイント。


 マシェリさんに、アオバさんはテイマーなのに、何で従魔を従えてないのか聞かれた。待機させていると答えると、従魔は、責任を持って管理するなら、街を連れ歩いて良いらとの事だった。

 それ聞いて安心した。次からそうしよう。

 でもデフォ化を見せても大丈夫だろうか。


 カーンカーン、カーンカーン


 そして、夕刻の鐘が鳴った。




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