第10話 もふもふと次の街へ。


「ラズベリーさんに、シーナもおはようございます」


 俺が居間に行くと、ラズベリーさんは朝食の準備。シーナは、外でうさぎさん達と遊んでいる姉弟を、姉のごとく優しい眼差しで見守っていた。みんなほんとうの家族みたいですね。ほのぼのとしている。


 ラズベリーさんに今日の予定を聞かれたので、昨日の続きで森へ行くことを伝へ、昨日採れたきのこを渡した。


 本日の朝食は、この村で育てている鶏の、採りたて卵のスクランブルエッグと憧れの田舎パン。1度食べてみたかったんだよね、田舎パン。ラズベリーさんが作った田舎パンは程よく甘くて、程よく噛みごたえがある。

 そして牛飼いのおっさんのとこの、特製バターを塗ると パンの甘さとバターの塩気がマッチしてさらに美味しい。そしてよく冷えたミルク。朝から幸せだですね。


 朝食後、シーナを部屋に呼んだ。俺がテイマーなのはもう知っている。なので、従魔を見せようかなと。シーナにガチャの性能、従魔のことを説明した。すごくワクワクしている様子だった。


 早速披露をしてあげた。


「【ディスチャージ】」


 煙と共に現れたのはゴブ汰だった。


 ゴブリンが出てきて、シーナは強ばったが、その容姿を見て一瞬でとりこになった。


「何このゴブリン可愛い!!」


 シーナはゴブ汰に抱きついた。ゴブ汰もまんざらではなそうに、ちょっと、照れている。


 そして、次にモンパラの説明をして、魔法のルーペを渡した。


 シーナは歓喜した。とろけて無くなりそうなくらい、ニマ~~としている。俺もルーペを借りて見た。同じようにニマ~~とした。


 だってですよ。ガチャの中でデフォのライムとレモンが跳ね回り、子ゴブリンが追いかけている。それを他のゴブリン達が眺めている。


 こんな、ほのぼのと楽しそうにしている魔獣を見たら、そりゃあニマ~~としちゃいますよ。


 ゴブ汰にゴブリン達の様子を聞いた。最初は戸惑いもあったらしいけど、今は元気に、幸せそうに暮らしいるらしい。そうゴブ汰は、嬉しそうに話してくれた。


 ライム達は遊んでるから、そのままにしておいた。


 シーナにはモンパラの事は秘密にしてもらった。バレたら色々何か面倒くさそうだから。


 シーナに森へ行くけど一緒に来るか聞いた。ゴブ汰と遊んでると言うので、1人で行くことにした。すっかり仲良くなっていた。良いことですね。


 ラズベリーさんから昼食を受け取った。


 外へ出ると姉弟がまた、うさぎさん達と遊んでいた。よっぽど気に入ったんですね。俺もうさぎ小屋へ入り、垂れ耳うさぎさんをもふもふしてから、姉弟に挨拶して森へ向かった。


「おにいちゃ~ん後ろ~」


 ブルーが何やら叫んでいた。


 後ろを振り向くと垂れ耳うさぎさんがついて来ていた。あ~なんて可愛いんでしょ。俺に飛びついて頭の上に乗った。たれぱんだならぬ、たれうさぎだ。


 これはもキュン死ですよ。心臓がいくつ有っても足りませんね。ブルーに、このまま連れて行くと言って、森へ向かった。


 最初に池へ向かった。池に着くとやはり、スライムはいない。何で急にいなくなったんだろう。まぁ安全になったのは良い事だけど。何体かテイムしたかったんだよね。


 ここで昼食でも取りますか。池のほとりに座り、昼食を取ることにした。


 今日の昼食は、昨日ラズベリーさんに作り方を教えたおにぎり。塩にぎり3つ。これも程よい塩加減で美味い。うち1つにきのこが入っていた。バターの味がする。きのこのバター炒めかな。めちゃくちゃ美味い。ラズベリーさんの手料理、毎日食べたいな。


 それから冷えているミルクを飲んだ。巾着に保存機能がついてるおかげだよ。生ぬるいミルクはちょっとね。


 垂れ耳うさぎさんもその辺で野草をモグモグと食べている。その姿がとても可愛い。名前を付けてあげるかな。考えたが良い名前が浮かばない。安直に名前は『うさ子』にした。雌だから。ネームセンスないんだから仕方ないよね。


 俺の元に戻った垂れ耳うさぎさんに、「今日から名前はうさ子ね」というと、喜んでるように見えた。一瞬うさ子の周りがふわ~と、風が吹いた気がした。

そしてうさ子は、俺の頭に乗った。


 ゴブリンの洞窟跡に着くも、ここまで魔獣は一体も出なかった。まったく居なかった。

 この森もしばらくは安全そうですね。


 シーナの仲間が眠る場所行き、手を合わせた。


「シーナは無事に保護しました。今は回復し、かなり元気になりましたよ。安心してください」


 そう言うと、暖かくて優しい風が、俺を優しく包んだ。


「ありがとう」


 そんな風に言っているようだった。


 村に戻り、家に着くと家の外では、姉弟、シーナ、ゴブ汰とうさぎさん達が遊んでいた。仲がよろしくて。挨拶して、家の中に入り、村長に森がもう安全だと報告した。

 忘れない内に、もはや日課となった、採取したきのこを、ラズベリーさんに渡した。

 それから一緒にお茶を飲み、楽しい一時ひとときを過ごした。


 ――――――――――――


 翌日、シーナが仲間の冒険者の眠る場所に行きたいと言うので、連れて行ってあげた。頭に乗ってるうさ子を連れて。


 道中シーナに、陰執眼ストーカーの指輪を見せ、シーナ達が持ってたやつか聞いた。誰もそんな指輪を所持している人は居ないとのことだった。多分ゴブリンシャーマンが持っていたのでしょう。それならしっくりくる。


 シーナはその場所に着くと、俺に聞いた。


「あの~アオバさん、後二人居ませんでしたか?」


「いや、居なかったけど……」


 どういう事ですかね。そこに眠る3人とシーナだげじゃなかったのですか?まさか、ゴブリンに……。


 それを聞かされたシーナは驚ろきを隠せなかった。


 そして、眠る仲間達に向かって言った。


「ごめんなさい、私がちゃんと止めてれば、こんなことにはならなかった。許して」


 シーナは涙を流した 。

 するとまた、あの暖かく優しい風が俺達をそっと包み込む。


「気にしないで、シーナのせいじゃないよ。自分を責めないで、 私たちの分まで幸せなってね。」


 そう言っているように聞こえた。


「ありがと」



 ――――――――――――


 この日、パパさんが送別会をしてくれると言うので、夕飯にみんなで定食屋に行った。パパさんとは、あまり喋ってなかったので驚いた。


 途中、牛飼いのおっさんも合流してくれた。店にいた常連客も一瞬になって飲み食いする。店のおばちゃんがなかなか気立ての良い人で、ライム達も、店の中に入れて良いと言ってくれたので連れてきた。

 さすがに店の中で出すと不味いと思ったので、外に出て、人気の無い場所でこっそり出した。


 店に入ると、みんなその愛らしい姿に、一瞬にして心を奪われた。勘違いすると困るので、あらかじめこの姿の従魔をあつかえることができるのは俺だけだと。他のテイマー達には出来ないこと。本来の姿はあの凶暴な魔獣だということを言っといた。

 ここを理解してもらわないと面倒なことになりかねないからね。


 ライムとレモンはちょっと歳のいったおばさん、いやマダムかな、とか、若い女性達に可愛がられいる。ゴブ汰はおっさん連中達とお酒を酌み交わしている。

 ゴブ汰さんお酒飲めるんですね。


 何処からか聞きつけた、子供達も来た。後から親御さんらしき人達も。あっという間に人が増えた。なんか凄いことになって来ましたよ。そしていつの間にか村中お祭り騒ぎなった。


 翌朝、目が覚めた俺は頭が痛かった。二日酔いですね。さすがに昨夜あんなに飲んで食べて騒いだら、具合いも悪くなりますよ。


 エールを飲みすぎた。かなり気に入ったし、みんなが進めるもんで、調子に乗りすぎましたね。


 それより何か柔らかいものが、右肘に当たっている。右肘でつつくとぷにぷにして柔らかい。おや、なんですかね? この柔らかい物は。横を見るとラズベリーさんが気持ちよさそうに寝ていた。

 おっと、ラズベリーさんでしたか。ちょっと驚いた。何でここにいるのかな? てか、顔が近いですね。このまま……


しかし、この状況はちょっと不味いよね。他の人に見られたら……そして。後ろから腕が伸びてきて、俺に抱きつく。はっ?っておい!逆サイドにはシーナが寝ていた。まさか、3……。な、わけはないですね。まったく記憶がないですね。それにしても、2人共可愛いな。しばらくこのままで居ようかな。


 するとラズベリーさんが目を覚まし、目が合った。しばらく沈黙が続いた。


「おはようラズベリーさん」


 ラズベリーさんはガバッと起き上がり顔を赤くして挨拶を返した。それにつられシーナも起きた。


「おはようございます。――――――って?アッアオバさん?」


 シーナもガバッと起き上がり顔を真っ赤にした。

 2人共顔を赤くして可愛いな。


 更に床からのそっと起き上がる人物がいた。


「みんなおはよう」


 床からいきなり現れた、野太い声のおっちゃんに驚いたが、パパさんだった。


 どうやらみんな酔っ払って、何故か、俺のいる部屋で寝ちゃったらしい。ゴブ汰まで寝てる。棍棒を抱き枕にして。固いだろうに。


 酔い醒ましに外の空気を吸いに出た。空気がとっても美味しいです。ちらほらと外で寝ているおっちゃんが数人いた。昨日みんな騒いだからね。


 それにしても楽しかったですね。前世ではこんなにバカ騒ぎすることはなかった。そんなことしたら近所迷惑で、すぐ警察呼ばれるからね。


 いや~本当に、この村は良い人達ばかりで、のどかな村だよね。しみじみ思った。


 しかし、頭が痛い……あっ!そこで思いついた。【スターヒール】は状態異常も回復出来たよね。てことはですよ、この二日酔いも回復するんじゃないですかね? どれどれ。


「【スターヒール】」


 おおおっ!治ったよ。なかなか使い勝手の良い魔法ですね。これなら酔いを気にせず飲める。実に素晴らしい。早速皆さんを回復して回った。


 ライム達はモンパラで、休ませてあげた。


 今日はちょっと早めの朝食を取った。ラズベリーさん達と最後の食事。


 今日は頼んであった白米と鶏の卵。この2つと言えば? そう日本人なら誰もが好きでしょう。卵かけご飯。TKGである。

 早速卵を割り、ご飯に乗せる。何とも美味しそうな黄金色の黄身。


 この村で育ている鶏の卵は、日本の一般的な卵より、一回り大きいのである。

卵の上に醤油を回しかける。そして黄身を割り、白米と一緒に口へ運ぶ。何て美味しいんでしょう。黄身がとても濃厚。醤油のコクと黄身の濃厚さがマッチしてとても美味。これなら毎日食べたい。

 ラズベリーさん達にも進めた。とても美味しいと言ってくれた。みんなの口に合ってよかった。



 ――――――――――――


 そして、別れの時が来た。今から行ったら着くのはちょっと遅めの夜飯を食べれる時間かな。ちょうど良い。

 旅支度を終え、みんなに別れを行った。姉弟は泣いている。


「村まで半日なんだから、いつでも帰って来れるから大丈夫だよ、いつでも会えるよ。」


 そう言ってあげた。


  ラズベリーさんまで涙ぐんでいる。村長にはお礼を言われ、この家は自分の家だと思って構わないと言ってくれた。そして、金貨1枚をくれた。パパさんも頷く。


 パパさんから、餞別として、マントをくれた。普通の茶色のマントだが、目立ちたくない俺にはちょうど良いだろうと。俺の装備は目立つらしい。わかってはいたんですけどね。

 シーナには、剣をを与えた。至って普通の剣だけど、今のシーナには有難かった。ゴブリンに剣を破壊され武器がなかったからだ。

 何故剣を持ってんだろう?


 ラズベリーさんには昼食にと、おにぎりと、ゆで卵を貰った。後、ラズベリー特製田舎パン。


 外へ出ると、牛飼いのおっさんがと定食屋のおばちゃんも居た。


 おっさんには、冷やしてくれたミルク1ダースと、特製バター3個を貰った。そして肉切り包丁。肉を切るには良い、切れ味抜群だと。何の肉を切るのかな? まぁ切れ味が良いのは素晴らしい。


 定食屋のおばちゃんは、干し肉をくれた。腐らないから旅にはちょうど良いと。皮の袋がパンパンになるくらい入っている。


 村の皆さんはほんとうに優しいですね。最初の村がここで良かった。うさぎさんにも1匹1匹撫でて、別れを惜しんだ。するとうさ子が頭に乗って離れようとしない。どうやらうさ子も一緒に来たいらしい。なんていじらしい。姉弟に断って連れて行く事にした。


 そして、村の皆さんに別れを告げ、街へ向かった。


 さてこれから何が待っているのでしょうかね。

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