第5話 もふもふとロール村とおっおっおおお。

「なあレモンよ。よく、生きてたね。」


「いや、あれはですね。お恥ずかしながら同胞がかばってくれたというか、盾にしたというかなんていうか……」


 あ~盾にしたんですね。


「なあレモンよ。レモンは他のスライムと色が違うけど、特殊なのかな?」


「そうですね、他に色付きは居なくはないですが、滅多に見かけませんね。居たしても、そんな存在、許しませんよ?わかりますよね?」


 ……あなたが恐いスライムだという事は、わかりました。


「なあレモンよ。この世界の魔獣はみんな凶暴で、なんていうか、その、恐ろしい姿をしてるのかな?」


「何を言ってるのですか? ご主人様。当たり前じゃないですか。魔獣が恐ろしくなくて魔獣をやってられますか?」


 いやそれはわかるんだけど……


 池のほとりで休憩していると、わらわらと、スライムがどこからともなく湧いてきていた。


 おわっ!! キモいキモいキモいキモい!!


 ガチャも頭上に浮いていた。意思でもあるように。


 くそっ!何処から湧いてくるんだよ。


「なあレモンよ。このスライム達を倒してくれないかな?」


「わかりました。ご主人様。美味しくいただきます」


 レモンは颯爽さっそうとスライムに向かっていった。


 美味しく……。


《スキル【魔獣戦闘モード】を習得しました》


 どれどれ確認。


【魔獣戦闘モード】

同じPTの魔獣が 戦闘モードになると 本来の姿に戻り 身体強化される 戦闘が終わると 自動的に解除される


 本来の姿? もっとおぞましい姿になるのかな?

 いやいやそれは……。


 試してみるかな。レモンに向かって唱えた。


「【魔獣戦闘モード】」


 すると、レモンが黒く輝いた。


「お~何これ? たぎる~~。うおおおおぉ!!」


 レモンが吠えた。


 名前:レモン Lv2

種族:スライム 種類:レモンスライム

属性:水

HP20/20

MP30/30

特技【ウォーターショット】Lv1

筋力D: 精神力:C 敏捷:D ストレス:1


 おっ10は上がった。まずまずですね。

 姿変わった? よくわかりませんね。


 レモンはウォーターショットを連発してる。威力も上がってるし、同属性攻撃だけど一撃ですね。やはり、スライムは見掛け倒しですね。


 さらにスライムを頭から喰らって消化している。

 うっ!! 見たくない見たくない! そんなの見たくない。


「レモ~ン。俺はこの辺で、きのことか採ってるから任せたよ」


 レモンは捕食に夢中になっているようで聞こえていないみたいだった。


 あれ、早速同じ色のスライムがいるじゃん?

 う~ん!! 見なかったことにしよう。




 ――――――――――――――――――


 日も落ちかけてきた。きのこも、薬草まで採れたし、そろそろロール村に行かないとね。



 ガチャもいつの間にか定着していた。持ち主が戦闘の意思がなかったら戻るのね。


《アオバ・ミネギシのLvが2になりました》


 おっ? Lvが上がった。何もしてないのに。なるほど、レモンがPTにいたから。経験値共有ね。これはラッキー。楽出来るじゃん。


 ニヤ~と笑みを浮かべる。


「レモン。もう終わったのかな?」


「今、最後の1匹を倒したところです。ご主人様」


「じゃあ、移動しようか。それと、ご主人様って止めようね。アオバでいいよ。後、敬語もいらないよ。従魔といえども仲間だからね。」


 あの容姿でご主人様とか……ちょっと抵抗ある。


「仲間……良い響きですな。わかった。アオバ殿とお呼びしよう。後、これ、同胞から取ったアイテム」


 コイン8枚、魔核コア40個を渡してくれた。 結構倒したのね。てか、そんなに湧いてたのか。あんなのがウジャウジャ居たと思うとゾッとした。


「ありがとう、レモン。」


 レモンはニカッと笑った。


 その笑い、怖いんだよな……。




 ――――――――――――――――――


 ロール村手前まで着いて立ち止まった。 着いたのはいいけど……レモンを見た。


「どうしたなのかな。アオバ殿……あっ理解!ここで待ってようか?」


 察しが良いようで。


「この中に入っててもらってもいいかな?」


 ガチャを持ち上げて言った。


「この中は従魔の待機場所になっているらしい。しばらく中に入ってて」


 レモンは不思議そうな顔つきをして(そんなように見えた)頷いた。

 初めてだからちょっとワクワクしますね。そして、唱えた。


「【補充】」


 すると、ガチャの蓋が開き、レモンが中に……。


「なんだこれ!! うおおおおぉ」


 吸い込まられていった。


 すげーーっ!! こういうふうになるんだ。


《スキル 【MonsterParadise】を習得しました。》


 ん? モンスターパラダイス? とりあえず、後でもろもろゆっくり確認しよ。

 そうして、随分遅くなったけど、やっと村に入った。


 ロール村。入口から手前右手に、牛小舎。右奥が定食屋兼小さいな宿屋になっている。左側が畑に鶏小舎、家が所々にあるって感じですかね。


 日が落ちかけなのかあまり外には人がいない。とりあえず、腹が減ってるからご飯だよね。


 定食屋に行こうかなと、考えていたら、こちらに手を振りながら走ってくる男女の子供がいた。


「「おにーちゃーん」」


 あ~さっきの姉弟。


「やあ、さっきぶり。ちゃんと帰れたんだね。よかった」


「うん、おにいちゃんのおかげで。こっち来てー、おじいちゃんがお礼をしたいって」


 弟か言うと、両手を姉弟に引っ張られた。


 案内されたのはこの村ではちょっと大きめな家。

 中に入ると、姉弟のご両親らしき人と、一人のご老体が居た。


「さきほどは、うちの孫達を助けていただき、ありがとうこざいまた」


 ご老体にお礼を言われ、夕飯に招かれ、夜分まで、色々と雑談した。


 ママさんの料理がとても美味しく、特にキイ牛の煮込みが絶品だった。姉弟が採ってきた、きのこと野菜のバター炒め。なかなかの美味。そして、この辺で有名らしい、キイ牛のミルクを頂いた。これもまた濃厚で、よく冷えていて、とても美味しかった。


 ご老体はこの村の村長で、姉弟は孫。

 姉の名がベリー、明るいピンクっぽい色の髪に瞳はオレンジ色。おっとりした性格。弟がブルー。グレー色のショートカット。瞳もグレー。やんちゃな性格。


 魔獣を見たのは久々らしく、姉弟が居た場所は、最近出没していなかったらしい。なので、きのこ狩りは姉弟の日課になっていたとのこと。安心しきっていたのである。普通に考えたら、あんな魔獣が居る場所で、子供だけで外に行かせるなんてありえないよね。油断大敵とはこの事でしょう。


 俺はテイマーである事を打ち明けた。さっきの池で、スライムを仲間にしたことと、魔獣を捕まえる為の冒険をしていることを話した。


 家族も最初はテイマーという事に難色を示していた。凶暴な魔獣をわざわざ使役するなんて、あんまり良い気持ちではないらしい。まぁわからないでもないですが。俺だって最初、スライムの姿を見て、後悔するほどだった。が、それでも、子供達を助けてくれた俺に、心から感謝し歓迎してくれた。何とも温かい家族である。


 夜も遅くなったので、宿屋に宿泊する旨を伝えたら、姉弟の後押しもあって、この家に泊まることになった。この村にいる間、好きなだけ泊まって良いと。


「ご馳走までしてもらったのに、ありがとうございます。」


「いえいえ、娘達を助けてくれたのだから当然です。お部屋をご用意しますので、ちょっとお待ちくださいね」


 ママさんは優しく微笑んで居間を後にした。


 ママさんはストレートロングの落ち着い赤紫色の髪型。オレンジの瞳の整った顔。性格もおっとりしていて、スタイルも抜群。もろに俺の好みです。


 ラッキーだった。俺は内心ほっとした。何故かって? お金を持ってなかったからですよ。ご飯を食べている時に、ふと、お金が無いことに気づき、宿代をどうするか、思案していたのです。


「「おにいちゃんあっちであそぼー」」





 ――――――――――――――――――


 姉弟の相手をしてから部屋に案内され、早速今日得たアイテム等確認をした。


 マリタケ×30個 グンテタケ×28個 ワライタケ×30個

 薬草25束 コイン×9 魔核×45


 まずまずかな。


 名前:アオバ・ミネギシ Lv2

種族:人間 性別 男 年齢:20

職業:テイマー

属性:光・闇

HP410/410(+200)

MP1020/1020(+500)


 なるほどLvup毎にHP10のMP20upかな。


【MonsterParadise】

ガチャガチャの中に居る魔獣が棲む世界

この世界に補充される 魔獣1体1体に合わせた環境が現れ構築される

中の魔獣は 補充されることにより 邪が抜け2頭身にデフォルメ化される


 おお!! 魔獣が棲む世界!! 何これ、魔獣版箱庭的な? これか、女神が言ってやつは!!これは凄い!


 えっと2等身のデフォ。どういうことですかね?

 まっまさか。よ、よし、ものは試し。


 ガチャを持ち、コンケースからコインを1枚取り出し、ガチャを回した。


 おお、カプセルが金色!! カッケー!! そしてこの蓋を開ければ出るんですね!!


 俺はかなり興奮した。


「【ディスチャージ】」


 唱えると同時に、カプセルを開けた。


 そしてレモンが煙とともに現れた。


「おっおっおおおおおおおぉ!!」


 思わず絶叫した。近所迷惑なんてお構い無しに。


「ねーねーアオバ殿、見て見てこの姿!!」


 レモンはその場でポムポムと跳ねている。


「マジか!! ホントに? ありえない。こっこれだよ! これこそまさしく、もふもふだーーーーーっ!!しかも、声まで可愛くなってる!!」


 そう、そこに現れたのは、俺が思い描いていたものだった。


「アッアオバ殿?」


 その可愛らしい姿のレモンを見て、思いっきり抱きしめた。つぶらな瞳でこっちを見てくる、丸っこくてぽよぽよしたレモンを。


「アオバさんどうしたのですか?」

「アオバ殿どうなされた?」

「「おにいちゃん?」」


 家族一同、俺の声に驚いて、何事かと思い、駆けつけたのだった。


「「「「何それーーーー―――!!」」」」

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