□1-7

  [文乃3]


 その日、私は空野市の駅前で、星良の姿をみなかったかと尋ねて回っていた。それが不毛な努力だとは自覚しつつも、なにもせずに家に帰るという選択肢は私になかった。

 だが、今日はその聞き込みの中で、ある変化を感じ取っていた。

 話を聞いた通行人の中に、ネットや人づてに同じことを聞かれた。と話す人がいたのだ。

 小茉莉から発信された情報提供を求めるメッセージがこの街に広がっているのを肌で感じた。

 有力な情報が集まるかもしれない。

 そんな私の淡い期待を、現実はいとも簡単に飛び越えた。

 小茉莉から電話がかかってきたのは、宿代わりの漫画喫茶に帰ろうとした夕方ごろだった。

「はい、もしもし?」

 ちょうど帰宅時間と重なっていた繁華街は雑踏の声が騒がしく、私は居酒屋の間にある狭い路地に駆け込んだ。

『あ、文乃ちゃん?』

 小茉莉さんは電話できる状況かどうかを確認することなく、すぐに本題へと入った。

『落ち着いて聞いてほしいねんけどな、星良ちゃんから連絡があってん!』

 有力情報どころではない。本人からコンタクトがあったのだと、小茉莉自身も驚いていた。

『まだメールだけのやりとりやし、本物かは分からんねんけどな。場所を指定してくれたらそこにいく。ただ絶対にこのことを誰にも言わないでほしい、狙われるから、って……』

 狙われる。その言葉に背筋が凍る。

『でも、さすがに文乃ちゃんにだけは、言わんわけにはいかんって思って……』

「とにかく、廃校にいったら、会えるかもしれないんですね!」

『うちは今ちょっと出先やねんけど、ウノかサノはいるはずやから』

「分かりました!」

 小茉莉へ感謝を伝えるのも忘れて、私は通話を切る。

「星良ちゃん……」

 横に広がって歩いている大学生らしき人たちの隙間を無理やり通って、私は廃校へと走った。

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