第21話 空挺便は青空へ

 空挺便の発着所は塔の最上階であった。一階で空挺便の券を検めた後はそこまで螺旋階段で上っていく。物資の方は滑車で塔から地面の方へ素早く大量に降ろせるようになっていた。

最上階にはドラゴンが引いて飛んでいく飛空艇が置かれていて、そこに物資やら人が隙間無く詰め込まれていく。Cやギルもぎゅうぎゅうに詰め込まれ、窮屈な思いをしていた。

ガラン、ガーン、と発車を知らせる鐘が鳴り響くと、激しい振動が彼らを襲った。上下左右前後にガタングワンと揺られる。気流に乗るまではこうなんだ、とギルが説明する。酔ったらしく、Cの顔色は良くなかった。ドラゴンの羽ばたく音がけたたましく響く。

しかしCが戻しそうになる寸前で、ふわり――と揺れが収まった。羽ばたく音が消えた。見ろ、とギルが笑って窓を指さす。リ・パラリア山脈の連峰が雲を突き破って、真横にあった。Cは焼け付くように青い空と対比して純白の雪を抱く連峰と、その周りにたなびく雲の絶景に見とれた。その遙か遠くに見える広いものは、海か。風が凄まじい勢いで流れているのが分かる。己が鳥になったような爽快感が胸にこみ上げて、Cは窓に額を押し当てた。

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