第13話 勝利、されど泣き崩れて

 勇者の処刑を人間種の眼前で行った事が最大の勝因になって、国境防衛戦に勝利した。

その報告が前線指揮官から届き、勇者一行の凶行に沈み込んでいた魔王城も、城下町も一気に活気を取り戻した。

だが、ギルは前線から戻ったばかりの身で、霊園にいた。やっと回復したルエと、Cを連れて。

旧い墓標の隣、真新しい墓標に、肩をふるわせて向かっていた。

「母は前回の国境防衛戦の時に、奴隷として目を潰されて、父親が誰かも分からずに俺を生んだ。俺が5才の時に命がけで母をレブレグランドに連れ戻した。父は、その後で母に出会った。体こそ弱かったけれど、何一つ非の打ち所がない父親だった。父親も分からないクソガキに本当に良くしてくれたんだ。ルエが生まれた時は二人で飛び跳ねて喜んだ。病気で呆気なく死んでしまったが、最後に俺に母とルエを頼んだと言って――」

「兄貴……おっかあもおっとうも……」

ルエは半泣きで言ったが、

「俺が俺を許さない。俺が甘かったんだ。全ての責任は俺にある」

「そうだな」

Cがそう言った姿をルエは信じられないような目で見上げた。「全てお前の責任だ」

「――ああ」

「だから、今だけは、泣け」


霊園にわずかに響いていた嗚咽が徐々にむせび泣きに変わり、やがてそれは、体を切り裂かれるよりも悲痛な慟哭へ変わっていった――。

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