第10話 最悪、それでも諦めはしない

楽しそうに咲いていた花が焼き払われていた。家も、花壇も、庭も、何もかも。ギルの家は燃える間も無く、消し炭と化していた。玄関までの芝生がおびただしい血でまみれていた事だけは、暗い中でも臭いで分かった。

「……母さん」とギルは斥候部隊が腰を抜かした原因――門扉に乗せられた母親の首を抱きしめた。そしてはっとする。「C、ルエを助けに行くぞ!」

「どこにルエちゃんはいる!?」

「……この香水の匂いを追跡する。出でよ、『魔犬』!」ギルの影から犬が飛び出した。犬はしばらく周囲の臭いを嗅いでいたが、走り出した。

「香水って、一体どう言う事だ?」

Cと双魔鬼兄弟がギルの後を付いていく。

「あれは父が母に贈った香水だ。母は恥ずかしいと一度しか身に付けた事はなかった。だがあの匂いが、ぶちまけられていた。母は盲目だ、匂いには過敏なくらいだった。恐らく俺が、ルエを追ってくれる事を願って、咄嗟に」

「もう良い、喋るな!」ギルをほとんど抱きかかえるようにして、Cが怒鳴った。

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