第8話 最悪、開始
脳裏を焼き尽くすような激情と共に、その言葉が浮かんだ。
「『方舟』――人類総改換計画……って、何だ?」思わずCは呟いていた。
「方舟?人類総改換計画……?」
ギルが聞き返した。Cはぼんやりと空中を見て、
「今、俺は何かを思い出したような……そんな気がするんだ。『方舟』――人類総改換計画って言葉が出てきたんだ」
「……嫌な計画だな。文字通りに受け取れば、現状の人類全てに何かへ改めて、換えていく計画か」
「……ああ」
ここでギルの執務室が慌ただしくノックされた。
「閣下!一大事です!」返事を待たずに悪魔族の官僚が駆け込んできた。「城下町で行方不明者が!」
そこで悪魔族の官僚はCに気付いて、対応に戸惑うが、ギルは気にするなと目で合図して執務椅子に腰掛けた。
「状況を詳しく」
官僚は投影魔法と言葉で説明を始めた。
「はい、行方不明となったのはドラゴン族の未成年の少女、名はユーン・グラボーン。あの大商人グラボーン家の末娘です。この夜更けに届けがありました」
ドラゴン族の未成年の少女の顔が浮かぶ。
「誘拐か?」
「状況から判断すると。本日の夕方に友達とかくれんぼで遊んでいたのにいつになっても出てこず……」
「身代金などの要求はあったか?」
「それが、全く。グラボーン家の末娘を身代金目的で誘拐したにしては、奇妙なのですが、現状全く……ありません」
「……身代金目的じゃねえな、それ」
不意にCが口出しした。
「ギル、一つ聞きたいんだが、ドラゴン族ってどんな種族だ?」
「頭脳も明晰、身体的にも非常に精強な種族だ。過去に何人も魔王を輩出している。だが成人するまでは体は貧弱で、竜形しか取れず人の形には」ここまで言ってギルも気付いたらしい。絶句し、青ざめる。「――そんな!」
「なあ、人間種って魔物種を奴隷売買したんだろう?」だったら、とCは続けた。「魔物種は『家畜』だと思っている人間種もいるんじゃねえか?」
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