第147話 対悪魔戦 5
空を覆い尽くした黒い影。それらは蠢き、犇めき合い、まるで1つの集合体かのようだった。
黒い影には無数の赤い光が点々とある。それらが目であり、黒き物の正体が悪魔だと言うことを表していた。
通常、人の目から見れば絶望的な光景だ。下級の1柱2柱でも厄介な悪魔が100以上集まっている。それだけでなく、この中には中級以上の悪魔も混じっているだろう。少なくとも人の手に負えない相手である事に違いは無い。それだけは確かな事だった。
「はぁ、餌にもなりゃしない雑魚が多いなぁ......少し数を減らそうか」
ララは空を見上げ、ため息混じりに呟いた。この状況を見てなお呑気な構えだ。まるで脅威だと認識していない、そんな立ち振る舞いだった。
何か決めたように口角を上げる。ニヤリと微笑んだララはすーっ、と息を吸い込んだ。腹に空気を溜め込み、体内の魔力と混ぜ合わせる。
「ガァァァァァァァァッ!!!」
そして吠えた。空に浮かぶ悪魔達に向かって、数秒間に渡り声を発し続けた。
大気がビリビリと揺れる。小柄な肉体から出たとは思えない、常識を逸した音。ドラゴンの雄叫びに近い声量だ。
付近にいたオリビア達だけでなく、離れた場所に立っている生徒達も耳を塞いだ。
何の効果があると思えば、悪魔達に異変が起こっていた。多数の個体が慌てだし、喚き出していた。そして1柱、2柱と黒い影から離れ、落ちていく。
ララはただ吠えたのではない。発声に合わせてスキルを使用していた。発動させたのは《咆哮》というスキル。声に魔力を乗せ対象に叩き付けるものだ。
周辺の魔力がララによって乱された。目に見えない魔力が乱されたのである。
悪魔が空を飛んでいる技も魔力に依るもの。そう、悪魔は魔力で空を飛んでいるのだ。それが乱されればどうだろう。技量の高い者ならば堪えられたものの、不得手な下級悪魔の大半はこれにより浮遊を維持出来なくなった。そして落下してきたと言う事だ。
「ふぅ。選別完了、かな」
下級の悪魔達が次々と下降してきている。それらはララの発した魔力に耐えられない者達という事。耐性が低い奴らという事だった。
右手を握り締め、数秒の間を置いて開く。その手の中には1つの小さな球が浮かんでいた。銀色の光を放つ球。お馴染みとさえ言えるそれを、ララは落下してくる悪魔達へと放り投げた。
小さな煌めきが降下してきた悪魔に接近する。その距離が零となった時、ララは口を開いた。
「【
その呟き、技の発声に合わせて銀色の球が破裂する。内側に溜め込まれていた魔力が外へと放出され、瞬く間に広がって伸びた。
間近に居た悪魔達はその光に飲み込まれる。悪魔達の肉体を構成する魔力。それを銀の光は溶かしていった。激痛が悪魔を襲う。肉体が崩壊する痛みだ。痛みに叫びを上げる間もなく崩壊が終了する。
光球は一定の大きさとなると空間に停止し、落下してくる悪魔を待ち構えた。まるで吸い込まれるように悪魔達は光球に接触。そして、触れた箇所から消滅していく。
抵抗しようと翼を動かす者も居た。魔法を放つ者も居た。それら全て、皆等しく消えていく。
程なくして銀色の球は消えた。大多数の悪魔を消滅させて。
「うん、これで良し。見晴らしも良くなったじゃないか」
空に浮かぶ黒い影はごっそりと消えた。やはり殆どは下級悪魔だったのだ。それを確認するとララは満足そうに呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます