第2話 猫山先生の教え
清々しい朝だ。こんなにすっきりと起きれて、爽やかな朝を迎える事が出来るのは、何年振りの事だろうか。それも全ては猫山先生のお陰に外ならない。
私は晴れやかな心のままに、先生のお食事の準備を済ませると、仕事へ行く準備に取り掛かった。この時間はさすがに心が重たくなってくる。私なりに業務には真剣且つ丁寧に取り組んでいるつもりなのだが、どうにも班長は私の事が気にいらないのか、仲間たちの面前で、私の事を、名指しで叱咤してくるのだ。男として、警備員と言う仕事柄、仲間の女性隊員に対して、格好良いところを見せたいじゃないか。しかし班長のせいで、女性隊員は、私の事を横目で見ながら笑っているじゃないか。あぁ、そんな事を思うと憂鬱だ。
私が玄関に立つと、猫山先生は、私にお声がけ下すった。そして上目遣いに私を見上げると、首を15°ほど傾けた。何なのだろう?この腹の底から湧き上がってくる感情は。私は先生にいってきますを言って、家を出た。何故だか私の表情は緩んでいた。
職場に到着し、しばらくすると、毎朝恒例の朝礼が行われた。班長は休みを挟んだ一昨日の私の報告書を引き合いに出し、報告書の不備をついて罵倒してきた。私は
重い気持ちのままながら、私は業務をこなし、少しの喜びを胸に潜めて帰路についた。何故ならば、今日は給料日なのだ。そう、私はこの日は必ず通販サイトを開いて、買い物に興じるのだ。欲しい物を欲しいだけ、と言う訳にはいかないが、ある程度計画的に買う事が、私のストレス発散の極意なのだ。
部屋に入ると驚いた。まさか空き巣でも入ったのか、と思うほど、部屋は荒らされているのだ。私は心配になり、猫山先生を捜した。すると荷物の山が崩れたところから、先生はひょっこりと顔をお出しになった。どうやら無事だったようで、私は安堵した。
そんな私の元に、猫山先生はゆっくりと歩み寄って来られ、自慢のブロンズに白いメッシュが入った髪と、ピンと跳ねたヒゲを見せびらかすように私を見つめた。そして私に何かを問いかけるように口を開かれたのだ。
私は
私はパソコンを開くと、通販サイトではなく、"断捨離、不用品処分、激安" などとワードを打ち込んで検索した。いくつかのスクロールの結果、自宅より5kmほど離れた広場で、この週末にフリーマーケットが開催される事を知った。まだ出品者募集は締め切られていなかったので、私はエントリー欄に、必要事項を打ち込んだ。
ふと横を見ると、猫山先生が満足そうに私を見つめて、首を傾けた。先生!ありがとうございます。私はこの不用品にまみれた部屋をお金に換えて、先生にプレミアムの缶詰を買う事を約束した。それを見た先生は、私を褒めて下すっているのか、ご自分の首元を
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