逆行 三

 山の模様替えが完全に済んだ頃、私は屋上から、生徒等が蟻のように校門を飛び出していく様をぼんやりと眺めていた。やはり人形のように見えた。

 吹き上げる風がおもむろに吹いて、私の少し伸びて肩甲骨の辺りまでおりてきた髪が弾けるように舞った。どこからともなく銀杏の葉が一枚飛んできて、私の周りを蝶のようにひらひら舞って、はらはらと私の肩に舞い降りた。まだ黄緑色であった。その出来損ないを払うと、古びたドアが鳴いた。紅音だ。

 「今日は早いね」

 そう言うと、彼女は微かに頬を赤らめてはにかんだ。

 「今日は寒いね」

 彼女は、いつもと違う、凜としながら渓流のように清らかで澄んだ声色で言った。

 「......私の口真似?」

 「うふふ、今日は真似っこ大会でもしましょうか」

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