欠陥 二

 普通の人間なら、こんな両親に産み落とされて、こんな家庭に育ってと、身の上の不幸を嘆くのだろうか。

 わからないのです。自分には、人間の不幸というものが皆目見当もつかないのです。家族が死ぬこともご飯が食べられないことも自分にとっては同じ不幸で、しかし雑多様な人間にまじり生活しているうちに、どうやら幸せと不幸には尺度があるらしいと気づいたのです。

 転んで膝を擦りむき泣いている子がいたら、肉親が死んで連日すすり泣く子もいた。あめ玉を一粒もらってはにかむ子がいたら、ピアノのコンクールで優勝して嬉し涙を流す子もいた。

 そんな、幸不幸の尺度を、自分には、やはり理解できなかったのです。

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