第2話

翌日、俺は昨日の夜から感じていた体のだるさが熱として現れてしまった。

「ダイキ、大丈夫?顔真っ赤だよ。」

彼女が俺を心配そうに覗き込む。

「うーん、風邪引いちゃったかな。」

「良い歳して朝帰りなんてするからだよ。もう若くないんだから、無理しちゃダメだよ。」

「そうだね。折角の休みなのに風邪引いちゃってごめんね。」

「そんな謝らなくて良いよ。誰だって体調は崩す時はあるから。でも、最近流行ってる感染病かどうか確認するためにも、早めに病院行った方が良いんじゃない?」

「そうだね。もう一眠りして熱が下がってないようだったら、今日あたり病院行ってくるよ。」

「じゃあ、私は買い物行ってくるね。」

「うん、行ってらっしゃい」

俺は、熱が引く事を願いながら、もう一眠りすることにした。


午後2時ころ起きたが、やはり熱は下がっていなかった。

「あー、全然熱下がらないな。まぁ、3日前くらいから体調悪いとは思ってたけど、ここまでひどくなっちゃうとはな。昨日の夜、俺も先輩みたいにタクシーで早めに帰っておけばよかったわ。」

そんな後悔まじりの独り言を言いながら、俺は病院へ向かう支度をしていた。彼女はまだ買い物から帰っている様子は無かった。

「随分と遠くまで買い物に行ってるんだな。」

そういえば最近の彼女は週末、よく出かけるようになっていた。どこに行ってるのかは知らなかったが、俺自身あまり人に興味がないこともあり、詮索などは全くしなかったし、気になった事もなかった。しかし、今日は風邪を引いて弱っているせいか、彼女の動向が気になった。

「ここ最近、あいつは何してんだろ?帰ってきたら聞いてみよう。」

そんな事を考えながら、家を出て病院に向かった。


土曜だと言うのに、病院はすごい人の数で溢れかえっていた。

「うわ、凄い人の数だな。こりゃ、長期戦になりそうだ。」

受付を済ませ、待つこと3時間。やっと

「ダイキさま、お待たせしました。3番の診察室へお入りください。」

というアナウンスが流れ、俺は診察室へと向かった。

「はい、今日はどうしましたか?」

優しい笑顔を向けながら迎えてくれたのは、40歳よりも少し若い感じの医者だった。

「3日くらい前からだるさを感じていたんですが、今日になって熱が出てしまって。鼻水に喉も痛くて。」

「なるほどね。じゃあ、まずは心臓の音を聞くので、服まくってもらって良いですか?」

そういった形で診察が始まっていった。

「最近、流行している感染症にも似てる症状っぽい感じもありますし、インフルエンザの可能性もあるので、どちらも検査してしますね。」

そういうと、検査キットを取り出して、手慣れた手つきで検査を開始した。

「インフルエンザかどうかは今日中に分かりますが、感染症の場合は1週間くらい掛かりますので、なるべく外出などは控えるようにしてください。」

「もし、熱が下がっても会社に行くのはまずいですか?」

「そうですね、もし今、流行っている感染症だった場合は、感染力が強いですし、医者の立場から言うと出社しないことを強く言いたいですが、そこは会社の上司とご相談の上、決めてください。今時点で言えることは、感染症の症状に似ているが、感染症にかかっているとは断定出来ないので。」

「分かりました。1週間前後で判明するんでしたよね。」

「はい、そうです。」

検査の結果、インフルエンザではなかった。


出された薬を飲み、彼女の介抱もあったが、月曜になっても熱が下がらなかったため、ダイキは会社を休む事にした。

「じゃあ、ダイキ安静にしててね。私、今週は少し忙しくて帰りが遅くなっちゃうんだけど、何かあったら連絡して。なるべく早く帰ってこれるようにするね。」

「おう、分かった。いってらっしゃい。」

ダイキは彼女を見送って、また眠りについた。結局、熱が下がることはなく、ダイキは最近、大流行している感染症だったことが判明した。判明した日、厚労省の役人数人と医者が家を訪れ、ダイキを病院へと搬送して行った。

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