第29話 ジェムとルナと殿村の変化
桶に手を入れ水をすくうと乱暴に顔を洗う。 汲んだばかりの井戸水の冷たさが腫れぼったいまぶたを冷やしてくれて何とも気持ちがいい。
何度も繰り返して頬にこびりつく涙も洗い流していく。 うん──ようやくすっきりした。 気持ちの上でも大分すっきりしている。 溜め込んだものを全部じゃなくても吐き出せた感じだ。
泣くっていうのは人間にとって大事な行為なんだなってしみじみ思う。──なんて考えてる場合じゃないな。 率直に言おうか。
「……死にてー……」
俺は目覚めた部屋に一人でいた。
あれから10分くらい泣き続けてようやく落ち着いた俺は、水と着替えの用意を頼んで一人にしてもらっている。 準備ができたらルナやジェムのことを説明するからと、ノーストンの話を聞こうとしたあの部屋でみんなには待ってもらっている。
そうして今、落ち着いて考えられる状況なんだけど──思い出すほどに恥ずかしくてたまらない。 18才の少女に抱きついて号泣する25才の男──絵面を想像するだけできついでしょ? それも他に4人の女に見られながらだ。
それを思い出す当事者の気持ちを想像してほしい。 情けないやら恥ずかしいやら……本気で死にたくなる。 消えていなくなりたい。 《
まあ顔で感じるルナの胸の柔らかさはよかったけど……なんて考えられるのはある程度の余裕ができた証拠かな。
うん、過ぎたことはとりあえず忘れよう。 精神的には回復した。 いつもの俺だ。 あのことも思い出さないようにはできる。
自分の状態を確認して恥ずかしいところを見せずに済むと確信すると、俺は着替えてみんなを待たせてる部屋へと向かった。
「ユーダイ様!」
俺が部屋に入るとルナが立ち上がって駆け寄ってくる。
「もうよろしいのですか?」
おい──それに触れてくれるなよ。 まあ今はもう大丈夫だから流すけどさ。
「大丈夫だよ。 迷惑かけて悪かった。」
「迷惑だなんてそんな……むしろ嬉しかったです。」
人が泣くのがそんなに嬉しいか? なんて勘繰りはしない。
化物認定されてるっぽいしね。 普通の人間らしさを見れてとか親近感を感じられたとかまあそんな──
「その……ユーダイ様をとてもかわいらしく感じられました。」
あれぇ!? なんか思ってたのと違う! 可愛いって何さ!? 心が軽くえぐられたんだけど!?
「ねぇねぇ! ルナちゃんのおっぱいはどうだった!?」
お前はいきなりいつものテンションだな、殿村。 こいつなりに気を使ってわざとそうしてるんだろうけど。
「内緒だ。 知りたかったら自分で確かめろ。」
「え? 毎日お風呂でたっぷり揉んでたけど?」
貴様は何をしてやがったんだ、殿村!?
いや、風呂で騒いでるの聞こえてたけどさ、マジでそんなことしてやがったのか。
可哀想にルナが顔を真っ赤にしている。
「クレアちゃんも雄大にしてもらう前にお姉さんがちょっとだけ教えてあげるからね♪」
マジで勘弁してくれ……いや、精神的には助かるけどさ!
そしてクレアちゃんはまんざらでもなさそうに頬に手を当ててないの。
「貴女も御主人様のためにそういうことができるのね。 気が合いそうで何よりだわ。」
ミディアはミディアで殿村に親近感を抱いたようだ。
エロい殿村とミディア、重いミディアとクレアちゃん、全部乗せ女子なクレアちゃんとルナ──微妙にキャラがかぶった構成だな。 仲良くはなれそうで結構なことだ。
ジェムを見ると俺が《他心通》を意識する原因となったことが
俺はジェムの隣に座ると頭を撫でてやる。 少し嬉しそうな顔を見せるが元気になるとまではいかないようだ。 まあ仕方ないか。
ルナが俺の隣に座り殿村がクレアちゃんたちと並んで座ると俺は二人を指して切り出す。
「とりあえず俺が倒れてる間に済ませてるとは思うけど改めてクレアちゃんとミディアに二人を紹介する。 俺の友人の殿村深月とこれから向かう世界の王族で俺に魔王を倒す手伝いを頼んだルナだ。」
「よろしくー♪」
「よろしくお願いいたします。」
クレアちゃんとミディアも挨拶を返して紹介を軽く終える。
「それでこの娘なんだけど──名前はジェム。 俺の
「仮想人格……ですか?」
ルナが聞き慣れない単語に怪訝そうに聞いてくる
「そ。 俺の中にもう一人、別の人間がいたと思ってくれればいい。 色んな情報の処理を俺の代わりに任せていた頼りになる相棒だよ。 ここにくるためにもかなり活躍してくれてる。」
頼りになる相棒と言われてジェムの顔が少しゆるむ。 おっ? こっちの方が元気の素になるのかな?──折りを見てこの方向で元気付けてやるか。
「それで、仮想人格だったジェムがどうしてこうなったかは俺もはっきり分からないんだけど、原因は倒れたルナを俺が助けたことにあるのは間違いない。」
「ルナちゃんを助けたって例のあれよね? 抱き合ってのラブラブで濃厚なディープキス。」
おーい。 見た目はそうだけど実際は違うんだから言うな。 舌も絡めてないからな。
ルナも唇を押さえて赤くなるなって……いや、無理か。
とりあえずその辺も説明しないとな。
「端的に言うとね、ルナは俺と同じ《越境者》になりかけて拒絶反応を起こしてたんだ。」
「…………私が……《越境者》にですか?」
「そう。 俺が作った《道》が不完全だったせいでルナは《狭間》の影響を受けた。 だけど体が受け入れたエネルギーに対して拒絶反応を起こした。」
「それで……ユーダイ様は私を助けるために?」
「《狭間》のエネルギーがこの世界に触れたらどんなことが起こるか分からない。 大したことはなかったかも知れないけどね。
だからそうならないよう、ああやってルナの体からエネルギーを俺に移したんだ。 悪いとは思ったけどね。」
「そんな……悪いだなんてことは……」
……やたら嬉しそうな顔をしてるな。 やっぱり勘違いが深まってるよ。
「あの、御主人様?」
「なんだ?」
話を聞いていたミディアが突然声を上げる。
「《越境者》の話は聞いたことがあります。 御主人様がすでに《越境者》だったとするとその娘のような拒絶反応はないはずですがなぜあのようなことに?」
ミディアの疑問はもっともだ。 俺は拒絶反応などなく《越境者》になったんだから《狭間》のエネルギーを取り込んだところで本来なら何事もないはずだ。
それなのにあんなことになった理由──
「《狭間》に関することは俺も正直分からないんだけど……ルナの中でエネルギーが変質してたんだと思う。 エネルギーが変質したから拒絶反応が起きたのか、拒絶反応で変質したのか──すぐに拒絶反応が出なかったから多分変質したのが原因かな」
あくまで想像でしかないけどこれが一番しっくりくるかな。
変質したエネルギーに対して俺の体と俺の中にあったエネルギーが二重に拒絶反応を起こした──だからあんなひどいことになったんだろう。
俺の説明にルナが暗い顔になる。 うつむきギュッと手を握り、
「やはり私のせいで……ユーダイ様はあのような──」
「さっきも言ったけどルナのせいじゃない。 何とかできる権能があるのにそれを使いこなせない俺が悪い。」
「でも……」
「そもそも俺がちゃんと《道》を作れていればこんなことにはならなかった。 原因を作ったのは俺だよ。 どこにもルナの責任なんかないでしょ?」
俺のせいだから俺が何とかしようとした。 それ以上でも以下でもない。
「……はい。 ユーダイ様、ありがとうございます。」
ルナが深々と頭を下げて礼を言う。 だからさぁ……礼もいらないんだけど。
「ルナは俺を罵ってもいいんだよ?」
「え? あんたそんな趣味あったの!?」
ねぇよ、バカ。 何で真面目に聞いてたと思ったらそんなとこだけ的確に反応するんだよ?
とりあえずこいつは無視して──
「それは違いますわ。 御主人様はワタシをなぶり尽くして辱しめるような素敵な御主人様で──」
面倒くさいのが増えた!
「お前らちょっと黙ってろ!」
俺が怒鳴ると二人は居住まいを正して黙る。 まったく……俺は改めてルナに向き直る。
「俺のせいであんなつらい目にあって初めてのキスまで奪われちゃったんだからさ。 被害者もいいとこだよ。」
「そんな! 私の方こそユーダイ様に何もお返しできず──」
「成功報酬はもらうことになってるんだからいいんだよ。 その報酬がもらえなくなったら困るから守るのも俺の都合──俺の責任と俺の都合でしたことなんだからルナは謝る必要もお礼を言う必要もない。 分かった?」
俺の言葉に複雑な顔をしていたルナだが苦笑したかと思うと突然クスクスと笑い始める。
……なにがおかしいんだ?
「そうですよね。 ユーダイさまはそういうお方でした。」
笑いながら何やら勝手に納得するルナ──だから一体何なんだ?
「……分かりました。 ユーダイ様がそう仰られるならそうします。」
色々と釈然としないけど納得してくれたみたいだしまあいいか。
「とりあえず説明を続ける。 俺が取り込んだエネルギーだけどなぜか俺の体から出ていった。 ここにいるジェムの核となってね。」
「それは──そのエネルギーが実体化しているということですか?」
「いや、高密度に凝縮された魔力が物質化してエネルギーが外に触れないよう包み込んでる。 この世界のレベルだと高次の神属や魔族の顕現はないはずだから……精霊王が存在としては一番近いかな。」
レベルってのは《根源》とのパスのことね。 高次存在としての神属や悪魔が受肉して現世に顕現するのは相当パスが広い世界でないと起こらない。
しかし改めて考えると《狭間》のエネルギーを核にしたほぼ全知の魔力体か……結構ヤバい存在なんじゃないか?
まあジェムだし信頼はできる……はず。 いや、前と性格は変わったけどジェムはジェムだ。 信頼しよう。
「こんな形で紹介することになるとは思わなかったけど俺の頼りになる相棒だし色々と頼りにすることになる。 みんなのこともよろしく頼むぞ。」
「まかせてよ、マスター! マスターのためにがんばるから!」
ジェムは立ち上がると元気いっぱいに胸を張る。
よしよし、やっと元気になったようだ。
ところで今気付いたんだけど、こいつロリ巨乳だった。 俺の趣味が反映されたわけじゃないことを祈りたい。
しかしこう見ると爆が1人(ミディア/H)に巨が3人(殿村/G、ルナ/F、ジェム/E)は圧巻だね。 クレアちゃん/Cも普通サイズで普通にあるんだけど……
「な、なぜか可哀想なものを見るような目で見られてるのは気のせいでしょうか……」
「ん? いや、クレアちゃんは可愛いから大丈夫だよ。」
可愛いと言われて頬に手を当てて照れるクレアちゃん。
まあ俺は乳博愛主義だからね。 基本大きいのが好きだけど爆も巨も貧も平等に尊いものですよ。 コンプレックス感じて可哀想だなと思っただけで。
「よろしくお願いしますね、ジェムさん。」
ルナが笑いかけるとジェムはプイッとそっぽを向いて、
「かんちがいしないでよね! さっきはあんたにきょーかんしたしどーじょーもしちゃったけど! しんきんかんもわいちゃったけど……マスターはアタシのマスターなんだから!」
ん? 一体何の話だ? そう言えばジェムのやつ、ルナが倒れてすごい焦ってたし心配もしてるようだったけど……俺の知らないとこで何かあったのか?
俺の腕にギュッとしがみつくジェムを見てルナはクスッと笑う。
「ジェムさんはユーダイ様のことが本当に好きなんですね。」
「とーぜんだよ! マスターのことはアタシがいちばん──」
「だったら私はジェムさんと仲よくなれると思います。 私もジェムさんに親近感を感じてますよ?」
ルナの言葉にジェムが言葉に詰まる。 ……何の話をしてるんだかさっぱり分からん。
ジェムは何を言おうか考えてたようだけどそっぽを向いて、
「べつになかよくする気なんてないから! マスターのめーれーだから見まもってはあげるけど!」
それだけ言うとそのまま黙りこむ。
ルナはクスクス笑ってるけど……一体何なんだろうな、本当に。
「ところでユーダイ様。 二つほどお聞きしたいことがあるのですが……」
「一つは結局ルナはどうなったのか──ってことだよね?」
「はい。 ユーダイ様にエネルギーを吸い出していただいたということは私は《越境者》にはなれなかったのかと──ユーダイ様のお力になれるところでしたのに……」
最初に俺の世界にきた時、ルナは《越境者》になれたと喜んでいた──俺に迷惑をかけずに済むと。
《越境者》になれるチャンスだったのになれなくて残念に思ってるんだろうな。
「確かにルナは《越境者》にはなれなかった。 でも普通の人間でもないよ。」
「……どういうことですか?」
「前に説明したよね? 《越境者》の二つの条件──《狭間》のエネルギーによる影響は受けられなかったけど認識への影響は受けてる。」
「それでは……私にも何かしらの力が?」
俺が頷くとルナは嬉しそうに顔をほころばせる。
「拒絶反応の影響だと思うけどまだ目覚めてるわけじゃない。 でも孵化する前の卵みたいに何かが眠ってるのは感じられる。 その内、目覚めるはずだよ。」
「そうすれば私もユーダイ様のお役に立てるのですね──嬉しいです。」
まあ……危険な目に遭うつもりも遭わせるつもりも欠片もないけどね。 喜んでるならそれはいいことだろう。
「それともう一つは──」
「はい、ミツキ様のことです。」
「あたし?」
当然の疑問だよね。 殿村は何も感じてなかったみたいだけど。
「お前さ、体が軽かったりあまり疲れないとか感じなかったか?」
「んー……言われてみると確かにあったかも。 でもずっとあんたのことが心配で深く考えてなかったわよ。」
うっ……それに関してはすまん。 やっぱり心配してくれてたんだな。
「まあ端的に言うとだ、お前も《越境者》──超能力者みたいなもんになってるんだよ。」
「へー。」
なんだ、その感動のなさ!? オタクに取っちゃ夢のシチュエーションだぞ!?
「お前、もうちょい何かないのか?」
「そういうのに憧れるのは男の方よ? 女はそんな子供っぽくは──」
「ルナを徹夜で可愛がっても余裕なくらいに体力が強化──」
「何よ、その素敵な力!? 最高じゃない!」
手のひらクルーがすごいな。 ルナが抗議してるけどそれは無視して──
「まあそれは置いてもな、準備はいるにしても戦うのには向いてる面白い力があるよ。」
「どんな力なの?」
「自分以外の重力
「……それって物を軽くできるってこと?」
「いや、そうじゃない。 例えばそうだな……このテーブルを親指と人差し指でつまんで持ち上げてみてくれるか?」
目の前のテーブルは見た目からして重厚感のあるものでそれなりの重さのあるものだ。 だけど殿村が言われた通りにすると軽々と持ち上がった。
「何これ? 空気みたいに全然重さを感じられないんだけど?」
信じられないように指を動かすとまるで鉛筆でもいじってるかのようにテーブルが動く。
「じゃあルナ。 殿村が持ったままのそれ、手をかけて持ち上げてみて。」
ルナも言われた通りにすると怪訝そうな顔をして、
「あの……私は重さを感じます。 それも結構重くて……」
「そう。 それが重力概念の無視──要するに物の重さはそのままにお前だけその影響を受けなくなるんだ。」
この能力、実のところ一人で大軍に匹敵する可能性を持っている。
想像してみるといい。 仮に重さが数100トンに達する巨人が振るうような剣があったとして、殿村はそれを羽のように軽々と振り回すことができる。 しかも重量はそのままにだ。 それがどれだけの威力を発するかは想像に難くないだろう。
それに防御でも厚さ10cmに達する鎧とも言えないような全身鎧があったとして、それを着て普通に動けるなら攻撃なんか効くわけがない。 むしろそれを着て走り回って敵に突撃すれば余裕で軍を壊滅に追い込める。
ちなみにこれは俺の<真理眼>でも再現できない、法則の改変すら越える法則の埒外にある能力だ。
そんな説明を聞いて殿村はうんうんと頷く。
「なるほどね。 まあ大体は分かったわ。 でも戦いにしか使えないのはあまり嬉しくないわね。」
「まあ能力は選べないからな。 俺の『六神通』ほど汎用性の高い能力は滅多にないし。 みんなの安全は俺とジェムで保証するから意味がないと言えば確かにそうだ。」
まあ……今回みたいに俺が行動不能になるような事態は起きるはずもないけどもしそうなった時の安全マージンとしてはありだろう。
他に説明することは……まあないか。
「とりあえず話すことは以上だ。 後は準備をしてエウレシアに向かおう。」
準備と言っても俺と殿村、ルナには必要なことはない。 クレアちゃんの着替えとか手荷物だね。 俺があんなことになってたんだから荷造りなんてしていないだろう。
「分かりました! 急いでまとめてきますからしばらくお待ちください。」
「焦らなくていいよ。 忘れ物がないよう気を付けてね。」
「はい!」
元気に返事をしてクレアちゃんは部屋を出ていく。
「それでは、ワタシもそろそろ行きますわ。」
「ああ、今回は本当に助かったよ。 ありがとうな。」
立ち上がったミディアに声をかけると照れたように体をくねらせ、
「
おい、今メス犬って言ったか!? 自分のことをどんどん下にしていくな……発言がヤバすぎる。
「嬉しくてたまりません……んっ……はしたないこの身を慰めるものまでいただいてしまいましたのに……」
自分の右手に愛おしそうに頬擦りをしながらたまらない風に吐息を漏らすミディア。 んっ? 俺はこいつに何かやったっけ……右手ってそう言えば俺の愚息を──いや、何も言うまい。
「それでは御主人様のご命令を果たすため行ってまいります。 一刻も早く御主人様の元にまいりますので……はぁっ……たっぷり可愛がって……ご奉仕させてください。」
「分かってるから行ってこい。」
「はい! しばしのお別れ……さみしいですが行ってまいります。」
頭を下げるとミディアの姿が影へと溶けて消える。 自分の城の人間を使って夢の世界を渡ったのだろう。
しかし本来ならすぐにエウレシアに行く予定だったのに足止めを食っちまったもんだ。 思わぬ同行者も増えたしね
これからエウレシアに渡れば忙しい日が続く。──戦うやつらの強化もそうだし世界を回らないといけない。 やることはたくさんある。
「ユーダイ様……」
考えに
「その……ミディアさんとの約束は──」
……ああ、そのことか。 大分不機嫌になってたもんな。
「そのことならあまり──」
「いえ、いいんです。 彼女……ユーダイ様を助けるために頑張ってましたから──私のことはお気になさらずに叶えてあげてください。」
少し複雑そうな顔をしているけどはっきりと言う。 あの時はずいぶん堪えてたみたいなのに。
「私──改めて分かったことがあります。」
「いきなりどうしたの?」
「──新しく分かったこともありますし……謝らないといけないこともできました。」
「…………」
「でもユーダイ様には内緒です。」
……深刻そうだから黙って聞こうと思ったら何なんだ?
困惑する俺にルナはちょっとイタズラっぽい笑みを見せる。
──私、分かりました。
──ユーダイ様はちょっとイヤらしいけど強くてお優しい方。
──きっとこれからも色んな女性に好かれるんだろうって。
──ユーダイ様を独り占めなんてできないって。
──嫌な気持ちになると思います。
──でも仕方のないことと思って我慢します。
──だから許してもらえませんか?
──ユーダイ様に私をもらっていただくこと。
──報酬とかでなく、今では私の望みです。
──お力をお借りして、望みを叶えていただいて……その上でさらに望みを叶えていただく……
──そんな欲張りな私を許してください。
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