第15話 ルナの決意
夕飯にピザを頼み、食事をしながら俺はルナにエウレシアに戻ることについて話をした。
入り口には立てたけどやはり時間がかかること──数週間から数ヶ月は覚悟をするよう伝えると暗い顔はしたものの不満や泣き言は言わず、よろしくお願いしますと頭を下げてきた。
その後、二人は疲れもあるし俺もやることがあるから早目に寝ることにしたのだが問題があった。 俺の部屋とリビング──寝る場所はこの二ヶ所だけどどう分かれるかだ。
普通なら当然
だけど何しろ殿村だ。 ルナに何かするかも知れない。 となるとルナは俺の部屋、リビングに俺と殿村か? それもね、布団に潜り込まれ絡み付かれと悩ましいことになりそうでよろしくない。
ならば問題の殿村をリビングで俺とルナが俺の部屋に……いや、ないだろ?
ちなみに殿村はと言えば──
「ルナちゃんと二人なんていいわよね! 一緒のベッドで
……ガールズトークという言葉に何か本来の意味と違うものを感じたのは気のせいだろうか? 不安しかないがとりあえず殿村はどれでもいいと。 ルナは面倒をかけている身なので俺に任せると言っている。
結局は俺の判断に委ねられることになったわけだけど──しばし頭を悩ませた末にルナと殿村を俺の部屋で寝かせることにした。 ルナが顔を引きつらせていたけどやらないといけないことがあるからね。 もちろん殿村にはルナの布団に潜り込んだりするなと釘を刺しておいた。
そうして俺は一人でリビングにいる。 真っ暗なリビングで布団に入り《宿命通》に意識を集中させる。
殿村のせいで中断されちゃったけどつかんだ感覚は残っているから思ったよりは進んでいく。 とは言え30分もかけてようやく10人だ。
本来なら一瞬で終わる作業に対して30分で進捗率は0.1%。 少しずつペースは上がっているから1分で一人くらいはいけるけどそれでもおよそ150時間か……50%も行けばある程度任せられるからざっと100時間──まあこれは仕方がない。 ゆっくりと自分の過去世を手繰り寄せていく。
2時間くらいはそうしていたか──ようやく100人に達した頃、俺の部屋のドアが静かに開けられた。
殿村かルナか、どっちか知らないけどトイレかな? ルナだったら声はかけない方がいいだろう。 起こしたかと思って気にするだろうしね。
寝たふりをしながら俺は《宿命通》の作業を保存しておいてやめにする。 水が差された感じだしそろそろ寝よう。 別に3徹しても疲れなんか感じないけど気分の問題で睡眠はしっかり取ることにしてる。
「……ユーダイ様……起きてらっしゃいますか?」
寝ようとした俺にルナが小声で呼びかけてくる。
こんな時間に俺に何の用だ? 実は俺のことが好きで抱いてとか……そんな展開は期待しないよ。 普通に考えてそんなの世界中のどこを探したってあるわけない。
「起きてるよ。 こんな時間にどうした──ぶふっ!」
あまりの衝撃に思いきり噴き出しそうになったのを殿村が起きたらまずいとあわてて口を押さえて止める。
「おまっ……ルナ……その格好……」
ルナの格好に俺はしどろもどろになる。 俺の布団の横で膝をついて座ったルナは例のベビードールを着ていた。 下着はさすがに恥ずかしかったのか普通の大人しめのやつだけどそれでも破壊力は抜群でルナも顔を真っ赤にしている。
これって……え? マジでさっき思ったみたいな……いや、だからってわざわざこんな格好はしないだろ。
「ちょっ……どういうつもりだ? 何でそんな──」
「ユーダイ様にお願いしたいことがあります。」
ルナは床に手をつくと深々と頭を下げ──
「ユーダイ様は私たちに力を貸したくないとおっしゃいました。 ですがどうかそこを曲げて、魔王を倒すために力をお貸しください。」
……なるほど。 そういうことね。
納得して頭をかいてるとルナが頭を下げたまま続ける。
「今もすでに多大なご迷惑をお掛けしながら、恥知らずなことを申しています。 ですが私たちだけで魔王に立ち向かうのは後の問題が大きすぎるのです。
御使い級が力を合わせれば確かに魔王の軍勢にも立ち向かえると思います。 ですが御使い級のみならず多くの兵が犠牲となります。
兵士が減れば治安の悪化、それを防ぐために徴兵を行えば生産に支障が出て物資の不足による物価の上昇、兵への恩賞や補償で国庫が圧迫されれば税も増やさねばならないでしょう。
民を守るために民が犠牲になってしまうのです。」
ふぅん……王族にも色々いるけどルナはかなり真っ当な感じだね。 立派だとは思う。 それでも俺は王族が嫌いだし信用できないけど。
「それで?」
「……魔王を倒した《越境者》の末路はお聞きしました。 民を守るためとは言え本来ならこのようなことはお願いはできません。
ですがユーダイ様はご自身で帰還できるお力をお持ちです。
だからと言ってユーダイ様が魔王と戦う謂われなどないことは百も承知しておりますが……どうかお願いいたします!」
「…………」
魔王を倒す……ね。 できるかどうかで言えばできるよ。
召喚された時に魔王がどんなやつか《天耳通》で軽く調べた。 でなければ御使い級との力の差がどの程度か語れるわけもない。
前回の魔王と《越境者》の戦いの情報を
だからって戦う理由にはならないし俺は絶対に王族に頼まれて魔王と戦うことはしないと決めている。
だけど──
「その格好はつまりそういうこと?」
「私にはユーダイ様に報いられるものが他にありません。
エウレシアに帰るために尽力していただけること、それまで私の面倒を見ていただけること、それについて恩を着せるようなことを何一つおっしゃられないことまで含めて考えればこうしたところで足りないかも知れません。
ですが、どうかお願いします。 私の全てをユーダイ様に捧げます。 好きな時に好きなだけ、私を好きなようにしてくださって構いません。
ですからどうか、魔王を倒すためにお力をお貸しください!」
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