第9話 怒濤の展開
──さて、とりあえず殿村も納得してくれたし問題は一つ解決したか。 後は──
「それでこのお姫様は? あたしにも紹介してよ。」
あぁ、忘れてた。 でもその原因はお前の暴走だからな?
「この娘はルナ。 信じてくれるならぶっちゃけるけどまあ別の世界のお姫様で間違ってこっちにきちゃったんだ。」
「あの……ルナ=メリウス・フラウ・リシェールと申します。 よろしくお願いいたします、ミツキ様。」
自分が転んだのが原因でこちらにくることになったのを思い出したのか恥ずかしそうにしながら自己紹介する。
「よろしくね。 ところでさ、なんでルナちゃんは日本語話せるの? 異世界だけど言葉は同じってご都合設定?」
「あの……私にもよく分からないのですが……最初はミツキ様がお話ししてる言葉は全く分からなかったのです。 ところが途中から急に……その……」
その途中から聞かされた内容を思い出したのか顔を赤らめモジモジしている。 あぁ──タイミング悪く最悪なの聞かされたよな。
「それは詳しくは面倒だから省くけど俺の力だよ。 ルナがこの国の言葉を話せるようにした。 ルナは自分の国の言葉で喋ってるつもりのはずだけどね。」
『六神通』の一つ──《
「一切衆生の全ての過去世を見る」はずの神通力は《
<真理眼>──限界はあるから全能ではないものの万能と言っても過言でないチート能力だ。
《天耳通》《
この世界ではできることは限られるとはいえルナ一人の言語を入れ換えるくらいは何とかできた。
ルナと殿村は感心したように俺を見る。
「便利な能力を持ってるのね。 それってさ、あたしも外国語ペラペラにできたりするの?」
「いや、この世界じゃ限界があってできない。 俺が話せる言語ならいけるけどな。」
それができたらそこそこ高給取りとはいえサラリーマンなんかしてないよ。 残念そうにしてるが世の中そんなに甘くないんだぞ、殿村。──この世界でなかったら俺にとって世の中激甘、ハイパーイージーモードなんだけど。
それよりもしなくちゃいけないことがあるよな。
「ところで殿村、お前って今日は何か予定あるか?」
「もちろんあるわよ! このゲームの再現をあんたと──」
だからエロゲを取り出すな。──本気でぶれないやつだな。
「つまり何もないんだな? だったら買い物頼みたいんだけど。」
「プレイ用の小道具なら準備万端よ!? それともゴム? もう──そんなのなしであたしの中で思いきりぶちまけていいのに……あ、分かった! ルナちゃんに使うのね!? お姫様を妊娠させないよう気を使いながら凌辱するなんてこの鬼畜紳士! 鬼畜なのか紳士なのかワケわからないわね!」
……わけわからんのはお前だ、殿村。
「だから──もういい。 買ってきてほしいのは女物の服とか下着だよ。」
「えっ? あんた……女装趣味があったの!?」
ねぇよ、バカ。
「うそ……それは想定外だったわ。 女役のあんたを攻めるなんて……さすがにそんな小道具は用意してないわよ!? 今度準備しておくから待ってなさい!」
「だからお前はいい加減にそっちから離れろ! ルナの服と下着だよ。 しばらくここで暮らすのに着替えもないんじゃ困るだろ?」
「あ……あの! ここで暮らすって──」
「ああ。 こいつがくる前にも言ったけど君をすぐには帰せない──」
「やる気満々ね! この鬼畜!」
「……頼むからお前はしばらく黙ってろ。」
ルナがまた怯えたような顔してるだろ。 真に受けてほしくないんだけどなぁ……
「とにかく──必ず帰してみせる。 それは約束する。 ただどれくらい時間がかかるかは正直分からない。 だからその間はここで暮らしてもらうことになる。」
「────────」
絶句してキョロキョロと俺の部屋を見回すルナ──まあお姫様からしたらこんな狭い部屋で暮らすなんて苦痛かもな。 自分の世界のことも心配だろうし。
「まあお城の暮らしと比べたら不満もあるだろうけどさ、他にあてもないから我慢して──」
「あの、そうではありません! ご面倒をおかけするのに不満などとんでもありません。 ただ……その……ここで暮らすとなるとその──」
うつ向いて恥ずかしそうにモジモジするルナ──
「ユーダイ様と……殿方と二人きりでということに……」
言わないで。 俺だってこんな美少女と生活とかドキドキしちゃうんだから。
色々ハプニングがあったりしないかとか……うん、まあ実のところハプニングどころかね──見ようと思えば見れちゃうわけだけど。
「まあ気持ちは分かるんだけど……でもね、他に選択肢があるとしたらさ──」
俺はちらりと殿村を見る。 ルナもそちらを見て言わんとしたことを察したか首をブンブン横に振る。
うん、こいつのとこだけはないわ。
「なになに? あたしん家? あたしだったらいいわよ!? ルナちゃんみたいな美少女なら大歓迎!! お姉さんが毎晩可愛がってあれやこれや教えてあげちゃうわよ!?」
「いえ……その……私はユーダイ様とが……その……」
その台詞──相当恥ずかしいっていうかやめて。 またこいつが──
「もう! 雄大と暮らしたいとかルナちゃんもその気まんまんね! これからお姫様と毎晩お楽しみとか……うらやましいじゃない!」
頼むから誰かこいつを止めてくれ……ルナがいるせいでかつてない暴走ぶりだぞ、こいつ。
「それじゃあたしもここに住むからよろしくね!」
「……はぁっ!?」
ちょっと待て、こら、今なんて……はぁっ!?
「早速あたしの荷物とルナちゃんの着替え用意してくるから! これから毎日肉欲の日々だぞ、この野郎!」
「いや、おま、ちょ待て──」
「それじゃすぐ戻るから! 待ってなさいよ、このモテモテ野郎!」
「だからちょっ! 殿村さん!? 人の話を──おい!」
俺の抗議も虚しく──殿村はすごい勢いで部屋を飛び出ていった。──え、ちょっ……マジで?
ものすごい勢いで飛び出ていった殿村をなす術もなく見送り──俺とルナは顔を見合せ呆然とするしかなかった。
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