チーズでできた月

夜空には満月が浮かんでいる。

「月が綺麗ね」

女のその言葉に、男は反論した。

「あれは月じゃないよ。でっかいチーズなんだ」

 彼が頓珍漢なことを言うのは珍しいことではない。なぜなら彼は哲学者だからだ。

「もしそうだったら、今頃アオカビだらけね」

「心配はいらないよ。月の周りは真空だから、常時新鮮」

「チーズって牛乳を菌が固めたものでしょ、真空だったら完成しないじゃない!」

「おいおいよく見ろよ、ちゃんと”はっこう”してるじゃないか」


そうドヤ顔する彼との将来を考えると、女は少しブルーな気持ちになった。

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