第9話 これからのアイリス
一方で、ある日を境にアイリスの学習内容は帝王学へと変化しました。
その教科書も、やはりラノベでした。
裏切り者は許すのです。
それでまた裏切ったら、また許すのです。
そんな緩い帝王学を学びました。
アイリスはかつて政敵だったヘスティーやコレーのこともすっかり許しました。
本を読んでは許しました。
そのお陰かどうかは誰にも分かりませんが、ジェスワッサー王国は平和でした。
遠く離れた日本では、ある事件が話題になっていました。
その情報は、直ちにアイリスの元にもたらされました。
「△△様が、行方知れずに……。」
「今朝、係の者が部屋を訪ねたところ、姿が見当たらないというのです」
「書き置きには、こうあったようです」
ミアがニュースの原稿を読みました。
スマホのニュースだからあてになりません。
しかし、それしか情報がないので仕方ありません。
ーー△△△氏の残した書き置きーー
建設中の東京異世界ランドの工事現場から持ち帰った石が、夜になって光りはじめた。それはまるで、私が小説で書いたオリハルコーンそのものだ。小説の中で、オリハルコーンは異世界転……。ーー
書き置きはそこで終わっていたと言います。
不思議なことがあるものですね。
以前のアイリスなら、△△氏は異世界に転移したなどと言って騒いだことでしょう。
ですが、一般常識を弁えているアイリスはそうは思いませんでした。
「きっとテーマパークの宣伝用のフェイクニュースでしょう」
「おそらくは、そうでしょう」
「そうだと良いのですが……。」
それからアイリスは不思議なことに△△のことをすっかり忘れてしまいました。
また1年が経ち、アイリスは17歳となり、旅立ちのときを迎えました。
「アイリス殿下、いってらっしゃいませ!」
「もしもピンチの時は、いつでも私のことをお呼びください!」
ヘスティーとコレーがパイ国際空港まで見送りに来ました。
アイリスは、2人に順番に抱きつきました。
「ヘスティー。ありがとう!」
「コレー。貴女もお元気で!」
もう、失敗はしません。
ヘスティーもコレーも、このときはKカップに成長していました。
でもそれは、アイリスが継嗣王女になってからのことでした。
その時点で2人は推定相続人ではなくなっていたのです。
蟠りは全くありません。
このときには2人とも心の底から思っていたのです。
アイリスのおっぱいにいっぱいに詰まった夢を一緒に追いかけたいと
「もしも良き伴侶を射止めたら、直ぐに教えてくださいね!」
「私たちも一緒にお供いたしますから!」
ジェスワッサー王国の王配は、多妻が認められています。
王配が他の王女を側室として迎えたことは、歴史上の茶飯事なのです。
それから、ヘスティーとコレーはキュアとミアに同じように順番にハグをしました。
それが終わると……。
「アイリス殿下、そろそろお時間です!」
「専用機にお乗りください」
「キュア、ミア。これからもよろしく!」
アイリスはキュアとミアに促され、赤く塗られたアイリス専用航空機に乗りました。
そして、その専用機は遥々日本を目指したのでした。
アイリスが思い出作りの場所として選んだのは、秋葉原の街だったのです。
アイリスの見事なまでのオタクっぷり。
キュアとミアの一途なまでの侍女っぷり。
ヘスティーとコレーの冴えない敵役っぷり。
どれが抜けてもジェスワッサー王国は争いの絶えない国になっていたかも知れません。
それに、もしそうなれば、チチデッカ家は断絶していたことでしょう。
しかし、偶然が何度も重なった結果、アイリスは継嗣王女となりました。
キュアとミアは主人と決めた人に仕え続けることができました。
ヘスティーとコレーはアイリスにとっての強力な協力者となりました。
チチデッカ家は王家として存続することになりました。
ジェスワッサー王国は平和でした。
さて、アイリスがやってきた秋葉原はどうなってしまうのでしょう。
それは、また、別のお話です。
アイリス本 世界三大〇〇 @yuutakunn0031
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