第7話 アイリスの成長

 また1年経ちました。


 3度目の身体測定が行われました。


 これが最後の身体測定です。


 おっぱいが急成長し、Kカップになったアイリスが法定推定相続人になったからです。


 ジェスワッサー王国の掟によると、相続権のある王女がKカップ以上になり、

現女王のおっぱいがそれよりも小さい場合は、

その王女に3年以内に王位を譲らなければならないのです。


 アイリス・ボンキュッキュッ・ラノベスキー・チチデッカ継嗣王女殿下の誕生です。


 国中が時期女王の決定を喜びました。


 しかし、問題もありました。


「3年間でアイリス殿下に君主として相応しい人格者となっていただかなければ!」


 大臣たちは大慌てです。


 ヘスティーやコレーは既に帝王学を学んでいます。


 いつでも王位に就けるようにです。


 ですが、アイリスは完全な盲点だったのです。


 仕方がありません。


 前年までは相続権を持つ34人の王女の中で34番目のおっぱいだったのです。


 兎に角、教育しなければなりません。


「アイリス殿下には、3年間みっちり帝王学を学んでいただきます!」


 右大臣が言いました。


 右大臣は現女王の元では不遇の人生を歩んでいたのです。


 代替わりするのを楽しみにしているのです。


 ところが、現政権下で優遇されている左大臣は全く違う意見でした。


 アイリスがバカのままの方がやり易いと思ったのでしょう。


「いやいや、殿下には今のうちにたくさんの思い出を作っていただきましょう」


 一見、甘い言葉でした。


 それが罠だということは、聡明なキュアとミアはお見通しでした。


 ですが、バカな主人を雁字搦めにしても、にわかに成果が現れるとは思えませんでした。


 だから2人は大いに悩みました。


 そのとき、アイリスはゲームに夢中でした。


 宮廷を舞台にしたゲームです。


 騙し合い足を引っ張り合いながら皇帝の后を目指すというゲームです。


 アイリスの直ぐ近くではそれよりも遥かに恐ろしいことが起ころうとしています。


 それでも、アイリスはゲームに夢中だったのです。


「こうなったら、私たちがアイリス殿下をお護りしなくては!」


「キュアの言う通りね。全てはチチデッカ家存続のためよ」


 2人は意を固くしました。


 それでも、アイリスは政争の渦の中に巻き込まれてしまいます。


 右大臣と左大臣が武力蜂起したのです。


 右大臣の後ろ盾にはコレー、左大臣にはヘスティー。


 両者の間にできた溝は、

寄せて上げたアイリスのKカップにできた谷間より深いものでした。


 最早、両陣営の衝突は避けられないという状況です。


 いわゆる『Kカップクライシス』というものです。


 そんな中でも、キュアとミアは諦めずに活動しました。


 頼ったのは女王でした。


 女王は、両者の仲介をする代わりにキュアとミアに難題を押し付けました。


 それは、この3年間をアイリスにどう過ごさせるかという、ストレートなものでした。


 これに勝る難題は無いのです。


「どうしたって……無理……よ……ねぇ……。」


「遊ばせてもダメ、学ばせてもダメ。つける薬が無いわ……。」


「じゃあ、半分こにすれば!」


 いつの間にか2人に紛れ込んでいたアイリスが最後に言いました。


 キュアの頭の中には日本で学んだ『3人集まれば文殊の知恵』という諺が浮かびました。


 だからアイリスの意見を取り入れて、計画を立ることにしました。


 ですが、半分こではバカ過ぎます。


 キュアは、最初の1年は一般常識、真ん中の1年は帝王学、

最後の1年は思い出作りというプランを作りました。


 一般常識を学ばせるというのは、

アイリスのおバカ振りを知らない大臣たちにとっては、盲点だったのです。


 キュアとミアは、計画を提げて女王に謁見しました。


「これで如何でしょう!」


「なるほど。考えましたね!」


 アイリスのおバカ振りを知っている女王は快諾してくれました。


 女王は直ちに両陣営に停戦命令を出しました。


 逆らったら国家反逆罪に問われます。


 右大臣と左大臣の衝突は、ギリギリのところで回避することができました。


 それ以降は右大臣も左大臣も手を取り合ってアイリスのために働くことを誓いました。


 全てを水に流しておさまったのです。


 それはまるできれいにカップに収まったおっぱいのようでした。


 『Kカップクライシス』は『Kカップウォー』に発展せずに済みました。

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