第6話 キュアとミアの成長

 1年が経ちました。


 アイリスとキュアとミアの3人は14歳になりました。


 この日はキュアとミアにとっては晴れの日です。


 国家資格、第一種侍女検定1級に合格したのです。


 第一種侍女検定1級は、20倍の難関です。


 この年の合格者は5名だけでした。


 しかも、キュアとミア以外はみんな20代です。


「2人ともおめでとう!」


 アイリスは笑顔で祝福しました。


 ところが、2人の顔は暗かったのです。


「喜んではいられないわ……。」


「チチデッカ家に割り当てられた侍女枠は1名分しかないのですから」


 そうなのです。


 貧乏なチチデッカ家は、国選侍女しか雇えないのです。


 ジェスワッサー王国では、14歳というのは立派な大人です。


 子供のころのように仲良く3人で暮らすことは難しいのです。


 その現実に、ようやくアイリスも気付きました。


(次の社交パーティーでスポンサーを獲得しなければ……。)


 アイリスは相変わらず女王になることや

チチデッカ家を永続させることには消極的です。


 それでも3人で暮らすことには積極的でした。


 キュアやミアは、ゲームやマンガやラノベの話題に付き合ってくれるのがいいのです。


 アイリスは身体測定に行きました。


 社交パーティーに参加するためです。


 ヘスティーも一緒でした。


「ヘスティー王女、G! アイリス王女、AA」


 ヘスティーはさすがです。


 ところがもう1人、素晴らしい結果を見せた王女がいました。


 コレー王女です。


「コレー王女、H! Hです!」


 ヘスティー王女は焦りました。


 このままでは王位を奪われてしまいます。


 おっぱいの大きさが同じ場合は、若い方が王位を継承します。


 コレー王女はアイリスやヘスティーより1つ歳上です。


 おっぱいが同じ大きさであればヘスティーが勝ち。


 ですが、そもそもおっぱいが大きければ、それが正義なのです。


 スポンサーの獲得に本気になったアイリスですが、思うようにはいきません。


 アイリスは忘れていたのですが、アイリスはオタクでおしゃべり下手なのです。


 だから、資産家とのおしゃべりは全く長続きしません。


 そもそもみんな『社交パーティーのしおり』を見ただけで引き気味なのです。


 おっぱいの大きい王女でなければ、投資効果は期待できないのです。


 ところがたったの1人、投資効果を無視している人物がいました。


 世界三大△△です。


 △△は忙しくなってきた執筆活動を手伝ってくれる人を探しにきたのです。


「△△さん。お久しぶりです!」


「おや、アイリス王女殿下ではありませんか」


 2人とも懐かしくって再会できて嬉しいのに、どこかよそよそしいのです。


 ですが、それがお互いに落ち着くのです。


 △△は、今回の社交パーティー参加の本当の目的をアイリスに明かしました。


 キュアとミアも一緒に聞きました。


「キュアがアシスタントをなさったら如何でしょうか?」


「えっ、どうして私なんですか⁉︎」


 キュアはびっくりしました。


 急に推薦されたからです。


 アイリスは、知り合いが日本にいれば、安く日本旅行ができると思ったのです。


 だからキュアを△△のお手伝いさんちして推薦したのです。


「キュアは手先が器用だし何でもできるからうってつけかと思ったのよ」


 アイリスにそう言われてはキュアは悪い気がしません。


 ですが、キュアとしては3人で暮らしたいのです。


 それができないのであれば、せめて高収入を得たいと思っていました。


 既にコレーからオファーがありました。


 普通の侍女8人分に相当する月額200万円での契約です。


 第一種侍女検定1級の有資格者には、それほどの価値があるのです。


 コレー陣営は王位争奪戦に本気で取り組んでいるのです。


「じゃあ、私が参ります!」


 そう言い出したのは、ミアでした。


 ミアもヘスティーからオファーがありました。


 年俸2400万円です。


 だけど、アイリスの政敵に与することには消極的でした。


 △△のところであれば、まだマシだと思っていました。


 ミアの申し出にキュアはイラッとしました。


 それも束の間、アイリスが言いました。


「じゃあ、私が行くわ!」


 何だかはしゃいでいます。


 そして、キュアが気が付いたころには、

キュアはアイリスとミアと△△にすっかりか囲まれたようになっていました。


 もう、逃げ場はありませんでした。


 キュアは、躊躇いながらもつい口を滑らせます。


「じゃあ……私が……参ります……。」


 言ってはいけないセリフでした。


「どうぞどうぞ!」

「どうぞどうぞ!」

「どうぞどうぞ!」


 こうして、キュアは住み込みで△△のアシスタント業務をすることになりました。


 報酬は、月額たったの20万円でした。

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