第11話 テンプレを!
「さてみなさん、私はユエさんに怒ればいいのでしょうか?感謝すればいいのでしょうか?」
謁見を終えて王城を出たシノンの言葉だ。
「褒めてくれてもいいんですよ?」
どこぞの青髪の鬼メイドよろしく、頭を差し出すユエ。
「…。ハラハラさせてんじゃねえよ!」
「怒る方を選んだ!?ギャッ!」
シノンがユエの頭に気合の入ったチョップをかます。蹲って頭を抱えるユエ。ちなみに、常人なら頭がぱっくりと裂けている威力である。
「ていうか、あんな交渉のしかた、日本じゃ闇金とかでも無い限りしないと思うんですが…」
頭を押さえるユエにリムルが言う。
「まあ9割はラノベ知識ですし、学校でも先生とか相手の親とかにおんなじようなことやってましたし…」
「ユエさん学生だったの!?」
「シノン様ツッコミどころは明らかにそこじゃないですよね!?」
ツッコむシノンにツッコむリムル。
「え、先生相手に闇金紛いの話し方するってどんな状況ですか…?あと、相手って…」
「やだなあ。軽い喧嘩ですよ。ボッコボコにしつつも、相手が先に仕掛けてきたって証拠と相手の恥ずかしい秘密を掴んでおいて、こちらが被害者でただの正当防衛と偶々でできた怪我ですよって警察に説明するだけの話です。先生だって、相手の説教の穴を突いて詭弁で論破するだけですから…」
「「「……。」」」
「なんで恐ろしいものを見る目をしながら絶句してるんですか!?」
なんでそんな顔をされるのかマジで分かっていないユエに嘆息する。
「そ、そうだ!ギルド、行きましょ!テンプレ祭り行きましょ!」
「…そう、ね。ユエさんの考え方は今晩の宿とかで私が責任持って矯正しとくわ…」
明らかに話を逸らそうとしたユエに、逃さないと言わんばかりの目でジト目を送るシノン。今夜はシノンもユエも眠れなさそうだ。
「あっそーだリムル様、確かスライム本来の能力で、服の汚れを吸収して落とすみたいなのありませんでしたっけ?」
さっき通った冒険者ギルドに向かう道中で思い出したように問いかけるユエ。
「?ありますけど、それが何か?」
「いやー、冒険者ギルドに登録しにいくのに魔物の返り血塗れっていうのはどうかと思うんですよ」
「国王との謁見は!?」
「アレは相手がそれでいいって言ってくれてるので問題ないんです。でも、こんな状態でギルドに行こうもんなら大事なテンプレを一つ潰すことになりかねませんので」
「む、あれですね?それは大事です。やりましょう」
「それ納得すんのかい!」
リーダーのシノン様、もう完全にツッコミ役が堂に入っている。
「ではリムル様、お願いします」
そう言って両腕を上げるユエ。
「んん?あれ、てっきり着替えてから服を渡してくるもんだと思ってたんですが?」
「私が着替えてる間みなさんを待たせるのもアレですし…私の身体を存分にまさぐっていただいて結構ですよ?」
「誤解を生む言い方しないでください!ほら、往来の皆さんもこっち見てますから!」
周りを見ると、買い物かごを持ったおばちゃん一行とか冒険者っぽい一行とかが遠巻きにこちらを見てヒソヒソ話している。
「ユエさん『宝物庫』持ってますよね!?予備の服ぐらい入ってるでしょ!?せめてそこの路地裏で着替えてくるとかしてください!」
リムルが大声でツッコみながらユエを路地裏に押し込む。
ユエは「あら、バレちゃいましたか」とケラケラ笑いながら血塗れの服を着替えに路地裏に入っていった。
「はあ…あの一瞬だけでめっちゃ疲れた…」
肩を落として本当にしんどそうにしているリムルをメンバーが慰める。と、そこに顔に大きな傷を付けたいかついオッサンが近づいてきた。
「なああんたら」
「あなたは?」
声をかけてきたオッサンにシノンが応える。
「ああ、俺はクライン。この街で冒険者をやってるモンだ。さっきギルドがどうって話をしてたのが聞こえたんだがあんたらみたいなやつらは冒険者としても依頼人としても見たこと無いし、他の街から来てここで冒険者登録をしようってつもりだろ?」
「ええ、そんなとこですがそれがどうかしましたか?」
「あんたら6人でパーティー組んでんのか?」
「ええまあそうですね。それが?」
「年齢が…とか実力が…とか言いたいことは結構あるんだがよ、一番大事なこと言うぜ?」
「どうぞ」
「冒険者ギルドの規則でな、1パーティー4人までだぞ?こりゃどこの国の支部でも同じなんだが…あんたらギルド支部すらない田舎から来たのか?」
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