第9話 国王との謁見1

「ねえ、あれ何?」


ユエがある建物を指さしてガウェインに向かって言う。


「ああ、あれは錬金ギルド。錬金術で作ったポーションや魔法装備なんかを製造、販売してるんだ」


「あれは?」

「ああ、冒険者ギルドだな」

「「「「「!!!!!!」」」」」

「ん?どうかしたのか?」

「冒険者ギルド…」

「測定でエラー…」

「Cランクとかでイキってる奴に絡まれて返り討ち…」

「絡まれる女冒険者を助ける…」

「持ち込んだ魔物素材が実はエグいやつ…」

「ギルドトップの冒険者をタイマンでボコす…」


何故か目をキラキラさせ始めた6人。


「ど…どうしたんだ?」

「「「「「「行きたい!!!」」」」」」

「行ってもいいが謁見の後にしてくれよ!?ほら、もうすぐ着くから」


とまあ、6人とガウェインはすっかり打ち解け、もう仲間のような感じになっていた。まあ、基本的にテンションが高いメンバーのキャラの濃さにガウェインが毒されたといった表現が正しいのかも知れないが。


「おい、開けてくれ」

「「はっ!」」


6人が仲良くギルド関連のテンプレについて話している間に城の入り口に着いたようで、ガウェインが見張りの兵士に声をかけた。城の門は、鉄の格子が上から降りてくるタイプで内側の兵士が何やら機会を操作するとガラガラと上に開いた。


「ガウェインさん顔パスって…」

「偉いからな」


ガウェインが自慢げに言う。


「でも、見た目変える魔法とかありますし顔パスOKにしちゃったら魔人とかが入ってこれそうじゃないですか?」

「…。………。おいお前ら。今度からは身分証明になるものを提示させるように」

「「はっ!申し訳ありません!」」


今まで気づかなかったのかよ…と全員が心の中でツッコんだ。




特に中を案内されることもなく城の中を進んでいく。すると、ガウェインが一つの重厚な両開きの扉の前で立ち止まった。


「さあ、ここが玉座の間だ。陛下は、お前らだけで来るようにとおっしゃってたから俺はここでさよならだ。短い間だったが中々楽しかったぜ!無礼講とはおっしゃってたが、粗相の…ないようにな!」

「なんで『粗相の…』で私の方見たのかな!?」

「うるさい!ここ王宮なんだから静かにしなさい!」

「あぐっ!」


ユエがふざけてシノンがツッコむ。今日初めて会ったのにもうこの展開が当たり前になっている。あまり知らない相手にここまでふざけられるユエと強くツッコめるシノンのおかしさが分かる。まあ、元々ゲーム内のチャットで同じようなやり取りをしていたからというのもあるが。


「さて、行きましょうか」


そう言ってシノンが軽くノックして扉を開ける。




「うっわあ…すごい…」


誰の口からともなくそんな声が漏れ出る。


なにせ、入った部屋はまさに豪華絢爛と言った感じの広間で、奥にある玉座に王冠を被り、立派なひげをたくわえた王様が座っていた。

ある程度進むと「止まれ」と声をかけられたのでその場に止まって跪く。礼儀なんかいらんと言われてたけど、形ぐらいはね。


「面をあげよ」


これで上げたらダメらしい。なんかのラノベでやってた。みんなも分かっているようで、顔を上げる者はいなかった。


「構わぬ。面をあげよ」


ここで、みんな揃って顔を上げる。


「ふむ…お主らが件の魔物を蹴散らしたという者たちか」

「は…はい」

「そうかしこまらんでもいいぞ」


どうやら彼の威容にみんな圧倒されてしまったようだ。シノン様の言葉もいつもと違って歯切れが悪いし、ユエさんがあんなに真面目な表情してるのなんて見たことがない。


「では遠慮なく」

「え、ユエさん?」


唐突にユエさんが立ち上がり話し出す。


「国王様。お名前は?」

「…アレス・ヴァン・クレムソンだ」


なんで名前訊いた?


「ではアレス王。あなたが我々に求めること、それはなんですか?正直に」


『正直に』の部分をやけに強調して言う。


「貴様!王を侮辱するか!」


横に立っていたおっさんが声を荒らげる。

そりゃそうだよ。王様にこんな口の利き方だめでしょ。


「マグナは黙っとれ」


いいんだ!?マグナさんかわいそっ!


「お主らに求めること…だったか。率直に言うと、儂はお主らの力を危険視しておる。恐らくだが、あなた一人だけでもこの国を容易に滅ぼすだけの力があるだろう。そこでだ。お主らがこの国に来た目的を知りたいのだ。言ってしまえば危害を加えるつもりがあるのかないのかをな」


めっちゃ正直に言った。ユエさんのヤバさも見抜いてるし、結構すごいひとなんじゃない?


「それは嘘じゃないっていうのは分かります。ですが、黙ってること…ありますよね?」


黙ってること…?ユエさんは何か知ってるんだろうか。なんかムカついてきたぞ。


「…ユエの名のもとに命じる。ひれ伏せ」

「ッ!?」


気付くと僕は床に倒れていた。

身体が言うことを聞かない!?これは…『神言』!?

伏せたままみると、シノン様、ヒースクリフ様、ペテルギウス様が同じような状態に。


「さて、あと3秒待ちます。解除しなさい」

「…儂には何がなんだかさっぱり…」

「ふむ…ではマグナさんですね?」

「……まさかバレるとはな…仕方ない」


マグナとかいうオッサンが何やら呟く。


「…?」


いきなり身体が軽くなったような感じがした。


「皆さん正気に戻ったようですね」


こちらを向いて花のように笑い、『神言』を解除するユエさん。


「私達は一体…」


光剣フォトンソードを見て不思議そうな顔をしているシノン様がそう言ったところで僕は気付いた。



気付いてしまった。僕たちがユエさんを攻撃しようとしていたということに。

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