第6話 殲滅
時は少し遡って。
「さて、どうしましょうか」
「ユエさん、どうしましょうかとは?」
子供のように目をキラキラさせて魔物の大群を見るユエにシノンが尋ねる。
「そりゃあもちろん、私やリムル様が広範囲殲滅系の魔法で一気に仕留めるでもいいですし、シエルさんに数を数えてもらって均等に割るでもいいですし、広範囲殲滅だけは縛って早いもの勝ちでもいいですし」
「ああ、魔物の殲滅方法についての話か。3つ目しかないんじゃないですかね?特に、ユエさんが『壊劫』とか『五天龍』なんかしたらこんなの秒でしょう?」
「ええ、でもそれはリムル様、あなたも同じでしょう?元素魔法だとかもですし、ヴェルドラソードを全力で振るだけで半分は壊滅させられるって知ってるんですからね?」
そう、最強の大魔王だよ?私だって勝てるかどうか…っていうか絶対勝てないね。確か時止められる魔法とかあったし。
あ、でも確か時空魔法だし、空間魔法と再生魔法の応用で結界的なのを常に張ってれば…
「ユエさん?どうしました?」
「え?ああ、どうやったらリムル様に勝てるかなあって考えてただけですから気にしないでください」
「気にしますよ!?」
身の危険を感じたリムル様が大きな声でツッコミを入れる。
「はい、魔物も来てるしその辺にして…。広範囲殲滅系の魔法は禁止で、早いもの勝ちね!これ、リーダーとしての決定事項!それじゃあ…散開!!」
そろそろ魔物たちも近づいてきたのでシノン様が統率を取って大きな声で指示を出す。
「「「「「了解!」」」」」
もしもここから先の彼らの戦いを元の世界の人間が見ていたとするならば、それが誰であろうとこう思うだろう―――――
――――無双、と。
シノンのへカートⅡが一度火を吹くと、彼女の前方の魔物の頭部が10数体分まとめて弾け飛ぶ。リロード中に近づいて仕留めようものならサブアームのMP7で蜂の巣にされるか
「『蒼天』!『緋槍』!『風花』!」
その身に身体強化を施したユエが戦場を走り回って中身の人の自前の格闘術で魔物の肉体を粉砕しながら短い詠唱を繰り返す。当然ながら高威力の魔法ほど長い詠唱が必要になってくるが、先祖返りの吸血姫にして魔王の正妻であるユエにはその理は当てはまらない。常人なら一発放つだけで魔力枯渇でぶっ倒れそうな魔法を無詠唱でノータイムで連発するがその顔には疲労の色は全く無い。むしろ、面白いおもちゃを見つけた子供のような無邪気な笑みを浮かべている。いや、魔物の返り血を頭から浴びて臓物が顔に張り付いても動じずに笑っているその様は最早狂気か。
リムルは、シノンの指示通り広範囲殲滅系の攻撃を封じてヴェルドラソードで一体一体斬っていた。とはいえ『思考加速』や身体強化系魔法で速度を底上げしている。さらに、並立思考を使って広範囲殲滅魔法ではない『
ザザは、
ヒースクリフは原作の彼よろしく、巨大な盾で魔物の攻撃を真っ向から防ぎつつ巨大な剣の
ペテルギウスは闇の奔流と見紛うほどに大量の『見えざる手』を展開し、魔物の頭部を握りつぶしたり物量で圧殺したり。時には土属性のドーナ系魔法で圧殺したり空中に跳ね上げて全方位からの『見えざる手』で惨殺したり。明らかに原作の魔女教大罪司教怠惰担当よりその能力を使いこなしている。
まあ、そんなこんなで。封印の地の見張りを行っていた兵が王の執務室に行って報告をしていた頃には、既に魔物の殲滅は終わっていたのだ。
誰が見てもはっきりと分かる、明らかな過剰戦力によって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます