6 狐少女と猫少年

天気がよかったので縁側で日向ぼっこをしていたら、突然雨が降り出した。

とはいえ日は照ったままなので、いわゆる天気雨というやつだ。

辺りを見渡すと、狐の耳と尻尾を生やした人間…妖狐の影が1つ。

「なんだ、君の仕業か」

ため息混じりにそう言うと、妖狐はむっとしたように返す。

「今日はある狐の嫁入りがあるんです。暫しの雨も、ご容赦くださいな」

「ほう、それはめでたいことだ。昔と違って結婚式に提灯を灯すこともほとんどなくなったようだが、儀式とはいえ大変じゃないか?」

「そうでもありませんよ。こうして妖力を使えるのも、人間の信仰あってのものですから。あなたはどうですか?」

「俺は変わらねぇよ。長く生きた猫が猫又や化け猫になるだけだ。特段目立った儀式もなく自由なのはいいもんだが、福を招く役割を持った奴は大変らしい」

「そうですか…。そこはやはり、役割の差、といったところでしょうね」

そこに、1匹の狐が現れた。妖狐と聞き取れない言葉を交わした後、茂みに消えていく。

「お呼ばれしました。そろそろ失礼しますね」

「ああ、そっちも頑張れよ」

そう言葉をかけると妖狐は狐に姿を変え、同じように茂みに消えていった。

「さて、そろそろご主人が帰ってくる頃か。洗濯物どうするんだろうな…」

俺も猫の姿に戻る。そして天気雨で少々濡れてしまっている洗濯物をながら、そんな事を呟いた。

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