第2章魔王国の乗っ取り。
第1話さあ異世界生活を始めよう
次に目覚めると俺は森の中に居た。
助かった。
一番恐れていたのがいきなり俺より強い敵に出会ったり、情報がないのを良い事に他人に利用されることだったからだ。
とりあえずその恐れは回避できたといえる。
そうなると一番重要なのは情報収集だ。
そこで俺は、森の中を移動し、一人で歩いている人間を見つけて、その人間から情報を聞き取る事にした。
俺には、悪魔からもらったスキル「洗脳」があるため、情報を聞き出すことは容易なのである。
そんな事を考えながら俺が歩いて行くと水場を見つけた。
水場では一人の少女が水浴びをしている。
俺はゆっくりと少女に近づきながら言った。
「おい。女。お前はなんて名前だ?」
少女の年齢は17、8と言ったところだろうか。
金髪で低身長であり、程よく引き締まった肉体は、みずみずしさを感じさせる。
少女は俺に気付くと叫び声をあげていった。
「キャー。鳥よ、あの男をここから追い出して」
彼女がそういうと、彼女の目の前に鳥の形をした模様が現れ、俺の方に一直線に向かってきた。
俺は言った。
「恥ずかしがることはないだろう。お前はいい体をしている。男をひきつける体だ。誇りに思うといい。隠す事は何一つないだろう。」
俺がそう言うと、鳥は止まり消滅した。
少女は、何も言わずこっちをずっと見つめていた。
洗脳にちゃんとかかっているのか?
俺は確かめるために彼女に問いかけた。
「正面からこうして見ると意外と胸が大きいんだな。大きくなり始めたのはいつ頃だ?」
彼女は平然と答えた。
「2,3年前に急に大きくなりました。」
どうやら洗脳は聞いたようだ。
さすがに正気であったら答えられる質問ではない。
そこで俺は彼女に聞いた。
「先ほどの能力は何だ?なぜ鳥が出てきた?」
彼女は言った。
「あれは私のスキルである「鳥矢」です。」
「スキルというのは誰にでも有るのか?詳しく説明しろ。」
「多くの人には有ります。才能ある方の中には複数ある方も居ます。努力によっては見につけることができず、努力によって向上するのはスキルの錬度のようなものです」
スキルか。
ゲームみたいだな。
舞が大好きだった。
「おい。じゃあステータスというものもあるのか?」
「ステータスですか?すみません。わかりません」
知らないのか。
ステータスがあるならそれを見る能力もあるはずだから俺が見えないのはおかしい。
存在しないのだろうか。
「次の質問だ。今、この世界はどういう状況になっている?」
「この世界には多くの国が有りますが魔王国と帝国の2台勢力に帰属しています。」
「両者の力関係はどうだ?」
「最近は圧倒的に帝国です。バッハ様は歴代最強の皇帝と名高いですし、それを支える上軍、中軍、下軍の3軍と近衛兵はそれぞれ一騎当千の武将達に率いられています。それに対して魔王軍は血統主義に固執しすぎたせいか腐敗して弱体化し帝国に対して防戦一方です。先日の戦いでは、上軍の大将エールに、魔王軍の最高幹部である魔王軍大将ゴートが討ち取られました。」
「俺と同じ異世界から転生した者はいるか?」
「勇者ですね。7名居ます。一人一人が非常に強力なスキルを有しており、3人が帝国に帰属し、残りの4人が勇者の里といわれる小さな村で暮らしながら戦いを静観しています」
なるほど。
大体方針が決まったな。
魔王軍を乗っ取って、帝国に戦争を仕掛けよう。
それがもっともこの世界を混乱に陥れることができる方法だと思われる。
俺は方針を終えると少女に言った。
「貴重な情報をありがとうな。体を拭いたら服を着てこちらに来い」
少女は静かに頷くと体を拭き、近くに置いてあった服を着て俺に近づいてきた。
あまり色は派手ではないが、ところどころ装飾に気を使われたセンスのいい服だ。
きっと彼女なりにおしゃれに気を使っているのだろう。
俺は言った。
「もう少しだ。もっと近くに来い」
少女は俺が命じるままに、ほとんど俺に触れるかの位置まで近づいてきた。
俺は彼女を抱き寄せるとそのままキスをした。
彼女は一瞬、驚いた顔を見せたがすぐにキスに応じ始めた。
キスを終えると俺は言った。
「案外。上手いじゃないか。経験が有るのか」
少女は言った。
「いいえ。友人から聞いていたのを思い出しながらやりました。」
「そうか。キスの褒美に良い物をやったぞ。新しいスキル「探知」だ。お前に害を及ぼすものが近づいている場合に、いち早く気付き、逃れるための適切な手段を判断する事ができるスキルだ。」
「探知ですか」
「そうだ。お前はこの森に住んでいるのか?」
「はい。父と二人で住んで居ます」
「そうか。それなら安心だ。これから俺が戦争を起こすから、その探知スキルを使って、お父さんとともに強く生きていけよ」
「はい。」
そういうと、俺は魔王国へ向かって歩き出した。
少女の洗脳もいずれは解けるだろう。
しかし、その前に一つだけ忘れていた事がある事に気付き少女に言った。
「お前はなんていう名前だ?」
「ミラです。」
「そうか。一応、覚えて置くように努力はしよう。」
そして俺は、今度こそ本当にミラから分かれて魔王国へ向かったのだった。
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