page.14 習慣
朝だ。
「おはよう。よく眠れたかしら?」
「エヴェリン」
私は眠らない。はじめの一週間ほどはそう答え続けていたが、彼女には納得してもらうことはできなかった。いつの間にか、こう答えるようになっていた。
「おはよう」
「ええ、いいお返事ね」
エヴェリンが笑うと、深い
「下りましょう。今日はアルバートが朝ごはんを作ってくれてるのよ」
「ああ」
エヴェリンは、私の
彼女を抱き上げて運ぶことは、
……まぁ、私もはじめて自分の脚で隊舎の床に立ったときは感動したものだ。エヴェリンにとっては、何十年も踏みしめているこの屋敷の階段でもそれが変わらないということだろう。
キッチンでは、アルバートがスープとベーコン・エッグを作っていた。料理についても、私がやろうと提案したことがあった。オンライン・データベースにアクセスできない私には、ほとんど作れる料理はない。だから、アルバートとエヴェリンに教えを乞うたのだ。だが――
「さぁ皆席についてくれ、もうすぐできるよ」
「アルバート、やはり私が……」
「だが、君は食べられないだろう? 私たちが食べるものは、私たちが作る。自分のことは自分で。それが私たちのルールさ」
こう、答えられてしまうと私には何も答えられない。私は
席に着いたエヴェリンが、震える手でスープを
「アルバート、今日はいよいよね」
「ああ、わかっているさ」
そう言うと、アルバートがこちらを見る。
「ハルジオン、私たちは今日、となり街へ買い物へ行く。君もどうかな?」
「私は……」
ついて行けば、できる仕事があるだろう。荷物持ちをしたり、買い物を手分けしてはやく終わらせてやることができる。
だが、そう考えて一度彼らに同行したその結果は、悲惨なものだった。
「やめておく」
「君に選んでほしいものがあるんだ」
「……アルバート。強制されれば、私は命令に従う。だが、私を置いていくことを、強く推奨する」
前に買い物へ同行したときのことだ。大都市ほどではないが人の集まるショッピングモールで、アルバートとエヴェリンには無数の非難の視線が向けられていたのだ。
理由は他でもない、この私だ。
あの事件以来、世論は
今、この星から
この老夫婦がなぜ私を迎え入れたのか、それが一番の謎だ。
「君がそこまで言うのなら、無理にとは言わない」
席について朝食を食べ始める二人。エヴェリンがにこやかに話しかけ、アルバートがそれに応える。
私も、用意された椅子に座る。食べられないと言っても、今日も席の前には料理が並んでいる。
自分のことは自分で。それがこの家のルール。
“私のこと”など、この家の
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