page.10 玉座の空洞
ジークの元へ駆け寄ろうとしたところへ、通信が入る。
『……エクスカリバー、ハルジオン、聞こえるか!? 聞こえていたら公共放送の
ミトラィユーズ? いつも
それに応えるのは、エクスカリバー。
『それどころじゃないだろ! 隊長が……!』
今回ばかりは、エクスカリバーに同意する。
しかし、ミトラィユーズの様子が気になった私は一瞬で
『この
「……なんということだ」
この一機だけではなかったのだ。街中で、同じことが行われた。
あの自爆
恐らく、まだこの街には複数の自爆人形が潜んでいる。これ以上、市民を襲わせてなるものか。これ以上、
ジークを見る。こんなとき、誰よりも早く行動を起こすはずの彼は、爆発痕の上から動かない。
私は、ジークフリート隊に限らない全ての
『
無線から、聞き分けきれないほどの怒声が、雄叫びが、咆哮が届く。
ビル一本を隔てた向こうの通りで、新たな市民の悲鳴が上る。
『……ここから先、総隊長の指示には期待するな。各隊、いや、各機の判断で自爆する
ジークを最も良く知る私だ。これ以上彼の命令を真似ることができる者など、在るはずがない。
有言実行。ジークはそうだった。彼の代理を名乗った以上、私が隊に模範を示さなければならない。
勝手に代理を名乗った私へ、いつもの説教もなく沈黙し続けているジーク。私はそれに、駆け寄らない。一人でも多くの市民を救うために、真っ先に私が駆けださねばならない。
私は、まるでジークがそうするように新たな制圧対象の元へ突撃する。建物を迂回するのももどかしい。
跳躍し、接敵。
簡単じゃないか。こんな自爆人形、私ならば完封できる。なぜあのとき、ジークを助けに駆け寄らなかったのか。
違う、だめだ、彼のことを考えるな。次の制圧対象の元へ向かうのだ。
ジーク、貴方はこんなに重いものを背負っていたのか。やはり貴方は、そして私も、気付くべきだった。ジークフリートという存在に、替えなど利かないということに。
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