page.07 騎士人形たちの日常
『
手早く
私の両隣では、
「ミトラィユーズ、最近物騒だよな」
「ああ……エクスカリバー。私たちが大義を果たすことに、誰もが期待している……」
この2機がわざとらしく名前を呼びあうのは、私への当てつけだ。私は彼らの無駄に壮大な名前が、嫌いだ。
「お前はどうだ、ハルジオン?」
「……ふふっ」
2年前から何も成長していない。彼らは。
私は、成長した。こんな幼稚な嫌がらせの相手をしない程度には。
「ああ、悪党どもには困ったものだ。奴等が増えると、私の
エクスカリバーとミトラィユーズが顔を見合せ、メイン・カメラをチカチカと点滅させる。彼らは“
「誰が貴様の
私の頭上から、落石のようなバス・ボイス。我らが
「誰って? 貴方に決まってるじゃないですか、ジーク!」
「その不敬な呼び方を止めろと、何度言ったらわかる!」
「貴方が無茶をしなくなったらと、何度言ったらわかるんです?」
あの初陣以来、私は数々の戦場をジークの隣で駆け抜けてきた。そして、驚愕した。この大将は、大義のためとあらばとにかく無茶をするのだ。
暴徒に単身突撃をしかけることなどは朝飯前。人質を取られれば自分が総隊長であることを名乗り、積極的に破壊されに向かう。その度に私は、彼が破壊されないようにサポートしてきたのだ。
なぜ、彼がこれほどまでに無茶をするのか? そう問う度に、彼はこう答えるのだ。
「この大都市の市民を救う。工場部品の製造や、家事を手伝う
ジークが、私の
「それに比べて、我一機が破壊されたことで失われるものなど、我だけだ」
「大義、大義、大義! 貴方はそればっかりだ!」
ミトラィユーズや、周りのベテラン量産型たちまでが笑い声をあげる。
「……ふふっ。また、始まったな」
「総隊長、聞いてください。コイツ、犯罪組織活性化に対する感想が『総隊長がまた無茶をする』だったんですよ? どう思いますか? ちなみに、俺の答えはこうです! 『市民が脅かされている!大義を果たさねばならない!』」
ミトラィユーズの高みの見物も気に食わないが、エクスカリバーのゴマすりには本当に呆れる。
「うむ。エクスカリバーは模範的な
私たちは大義のためにある。それ自体に文句はないのだ。私が言いたいのは――
「現場へ到着するぞ。G1部隊は私に続いて突撃。G2部隊は市民の避難を。G3部隊は敵の増援に備えてバックアップ。G3部隊からハルジオンだけは、私についてこい」
「話が終わっていない!」
「それは大義と比べる価値のあるものか? 考えろ!」
ジークはそう言うと、轟音と砂煙をまき散らしながら加速した。
私も負けじと加速する。今日も心配事は多い。
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