第41話 続・夢に出てくる三階建ての家

 以前このじつはじつわの話の中で俺が体験した夢の話をしたことがあると思う。タイトルは『夢に出てくる三階建ての家』だ。


 話の内容は俺が見知らぬ家の一室で目を覚ますところから始まり、その家の中を探索していくというものだ。


 一度目は三階を探索。二度目は一階を、三度目は二階を探索して、その二階で真っ白なワンピースに身を包んだ髪の長い女性と、マシュマロマンみたいなぶくぶくに膨れ上がった男の子のようなよくわからないものに遭遇したところで目を覚ました。


 ちなみにこの話をした際、もしまたこの夢の続きを見るようなことがあればお話しますと何気なく書いていたが、まさか四回目があるとはさすがに思わなかった……。


 というわけで、今回はまさかの四度目の夢に出てくる三階建ての家の話をしようと思う。


 ……これが正夢にならなきゃいいけど。


 今回で四度目となる夢の始まりは意外なことに外からだった。いつもなら一階の玄関すぐそばにある部屋で目を覚ますところからスタートするんだが、どういうわけか今回はどこかの旅館のようなところからスタートした。


 旅館から車に乗り込み、数十分ほど走ったところにその家はあった。初めて見る家の外観は朽ち果てており、元々は真っ白だったのだろう板張りの家の外壁はペンキがところどころはげ落ちていた。


 家の周囲も雑草が自由に伸びていて、外壁の一部は大きく取り除かれていた。中も随分と荒らされていて、その家にはもう誰も住んでいないことが見るからに明らかだった。


 俺がその空いている所から中に侵入すると、どうやらそこは本来玄関の壁に当たるところらしく、本来の入口は雑草に覆われていて中に入れなかったのだろう、手頃な壁を取り壊して中に入れるようにしたそんな感じがした。


 玄関から見た景色はいつも俺が夢で見るその家と全く同じで、唯一違うとすればその家が荒らされているかいないかくらいしか違いが見当たらなかった。


 玄関から廊下はアルファベットのLのようになっていて、入ってすぐに右に曲がると廊下がある。いつもならスリッパで中を歩くところを今回は土足のまま上がり込んだ。この家が放置されてからどれほどの月日が経っているのかはわからないが、砂埃がたまっていて、歩くたびに廊下に自分の足跡が増えていった。


 荒らされている割にここを訪れているような人もいないようで、俺の足跡以外誰かが侵入した形跡は見当たらなかった。廊下の右手側には俺がいつも目を覚ます部屋があって、その側には二階に上がれる階段がある。部屋の向かい側にはリビングとキッチンがあり、そこは二度目の夢で探索した場所だった。


 二階に上がろうかと思ったが、前回見た謎の女性とマシュマロマンが気にかかって上る気がしなかった。なので廊下の奥へと進んだ。一階の奥は土間のようになっていて、古い竈があった。ここは二度目の時とあまり変わっていなかった。


 その場所から外に出ることが出来たので一旦外に出て上を見上げると、二階に崩れかけた木製のベランダが見えた。ところどころ板が外れていて、その向こう側の青空まではっきりと見えた。


 見れば見るほどこの家が朽ち果てていることを思い知らされる。はっきり言って夢の中の話だし、実際に住んでいる家とは全然違う造りの家なのにどういうわけか寂しさがあった。


 再び家の中に入り、今度は二階に上がる。階段を一段上がるたびにギシッと軋む音がした。


 二階も一階同様朽ち果てており、階段を上がってすぐのところにある宴会場のような部屋も畳が全て剥がされて、板張りの下地が見えていた。中に入ってみようかと思ったが床が抜けそうな雰囲気だったのでやめておいた。


 三階に上がろうと思ったら階段が崩れていて、三階には上がることが出来なかった。が、きっと一階、二階と同じように荒れ果てているだろう。


 少し二階を探索してみようと廊下を進むと、何かの気配を感じた。まさかまたあのマシュマロマンが出てくるのか……? そう思って身構えたが気配がするだけで何も出てくる様子はない。ホッと胸をなでおろすと奥へ進む。


 二階のほとんどは宴会場のような部屋だったが、ある一部だけ見慣れない部屋があった。三度目の夢の中で見つけられなかったその部屋は物置のようだった。


 意外にもその部屋の中は荒らされた形跡はなく、至って綺麗なものだった。その部屋の中には所狭しとタンスが並べられていて、まるで迷路のようになっていた。


 タンスの迷路を進んでいくと、一番奥には黒塗りの仏壇があった。黒塗りの仏壇は未だ現役のように黒く光り輝いていた。それが妙に怖くもあった。仏壇の中には位牌が置いてあった。その位牌には見知らぬ誰かの名前が刻まれており、すぐそばには多分その人だと思われる方の写真が一枚添えられていた。


 それを見てこの家に居ちゃいけない、そう思い俺はその家を後にした。


 そこで目が覚めたため、結局のところあの家がなんだったのかは未だに分からずじまいだ。まぁ夢の話だから深く考えることもないのかもしれないが、こうも同じ夢の立て続けに見るということは何か意味があるのかと勝手に思ってしまう。


 二度あることは三度あるじゃないが、四回目があったのでもしかしたら五回目もあるんじゃないかと不安になってくる。もし五回目に訪れた際にこの夢の意味が分かるのかどうか、果たしてこれが吉夢なのかそれとも何かを暗示する悪夢なのか、それは見てみないとわからない。


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