第36話 〇〇な人
アンタは霊感テストというものをやったことはあるか?
一口に霊感テストといっても心理テストのように様々な設問に答えていくものだったり、もしくは家の中をイメージして玄関から順番に家の中を歩かせるというものもある。
これは目をつぶった状態で自分の家の中をイメージして、玄関から部屋の中を全て見て回る(家の窓を開けるパターンもある)そして玄関から出る。もし家の中を巡ってる最中に誰かに会った、もしくは気配がしたら霊感があるというものだ。
ちなみに霊感というものは誰もが持っているもので、何ら特別なことではない。しかし、霊感というものはラジオのチューニングと同じで、波長が合いやすいか合いにくいかで感じ方が違ってくる。ほらラジオのチューニングも周波数が合わなかったら聞こえにくい時があるだろ? あれと同じことだ。
霊感の強い弱いというものはそういうことに起因してくるもので波長が合いやすい、または合わせやすい人ってのは霊感が強くて、そうじゃない人は霊感が弱いまたは霊感がないと判断されている。
ところで先ほど紹介した霊感テストのうち、心理テスト方式のものはお遊び的なものであまり気にしなくていいが、家の中を歩き回るというテスト。これは絶対にやってはいけない。なぜならこれは霊感テストではなく“霊を呼び込むおまじない”だからだ。しかも霊を呼び込むだけではなく、霊が視えるようになってしまうというおまけ付きだ。
似たようなもので真っ暗な部屋の中で、コップに水を入れそれを自分の前に置く。そして自分以外の誰かに呼びかける。この時呼びかけに応じる様に声がしたり気配を感じると霊感があるというが、これも同様に霊を呼び込んでしまう危険な行為なためやらないように。
※注 もし興味本位でやってみた結果何かあっても責任は負えません。
と、初っ端から物騒なお話で始まったわけだが、今回はそんな霊感にまつわるお話をしていこうと思う。最初にも話した通り霊感というものは誰にでも備わっている。かくいう俺にも備わっている。霊感の強い友人曰く、俺もまあまあ霊感が強い部類に入るという決して嬉しくないお言葉を頂戴したことがある(それでも俺は霊感がないと言い張る。なぜなら幽霊が怖いからだ!)
まぁそのせいなのか皆さんに色々と幼い頃からの奇妙な体験談を紹介してこれたわけだから、それはそれで良しとしよう。
そういえば前回お話した不思議な夢ももしかしたらこの霊感と関わりがあるかもしれない。
正夢って言葉を一度は聞いたことがあるかもしれない。あれは、自身がこれから経験するであろう事象を夢として体験する。その後それが現実で起きるというものだ(予知夢やデジャブと混同しがちだが、これらはそれぞれ意味合いが違う)
正夢をよく見る人というのは霊感があるとされている。これは読者さんからいただいたお話なんだが、その方は夢の中で出会った名前の方と何度か出会ったことがあるという。その夢を見たときにはおぼろげにしか覚えていなかったのに、後日その人と出会い、夢の中で出会った人だと気づくそうだ。
この方の話で面白いのが、何年かに一度うたた寝している最中に「うわっ!」と誰かに起こされるそうだ。その原因が未だにわからないし、それがいつどこで起こるかもわからないという。わかっているのがそれが数年に一度、頭に響くような大声で起こされるということだ。その方に憑いている守護霊、または何者かがいたずら好きなのかはわからないが、自分はここにいると知らせているのかもしれないな。
さて、いつも通り長い前置きを話したところで本題。
今回のお話はあるところで出会った霊感の強い女性が話してくれたお話。というより俺もそこで体験した話。最後の最後でゾッとする出来事が待ち受けていたわけなんだが、果たしてそれはどんな出来事だったのか……。それではどうぞ。
これは俺が二十代前半の頃のお話。当時の俺は彼女を作ることに躍起になっていて、恥ずかしい話だが女の子との出会いばかり求めていた。そのせいか合コンだったり、酒も飲めないのに飲み会に参加してはいつもフラれるというなんとも情けない醜態をさらしていた。
そんな中、友人が誘ってくれた飲み会の席でその人と出会った。
その人とは初対面で、俺より少し年上の女性だった。正直なところ顔立ちとかはあまり覚えていないが、妙な雰囲気を醸し出していたのはよく覚えている。なんていうかその人を見た瞬間、体中に鳥肌が立つようなそんな感覚。そんな感覚に襲われるときは大抵ろくな目に遭わない。そしてその予感は的中した。
たしかその時の飲み会のメンツは4対4だったかな。それなりに盛り上がったと思う。そんな中誰かが怪談話を始めたんだ。酔っ払った男性陣が女性陣を怖がらせようと言いだしたのか、その逆だったかは覚えていないけど、1人話し始めると、次々と話が出てくる。女性陣は怖がっていたが、それでも興味津津にしていたところを見ると、案外そういう話は嫌いじゃなかったのかもしれない。
んで俺の番になり、俺が幼少期に体験した幼馴染の話をすると、その例の女性が俺に話けかてきた。
「君、なんか不思議な感じがすると思ってたらやっぱりそうなんだね」
「不思議ってどんなすか?」
「霊感があるってこと」
「でも俺霊なんて視えないっすよ。せいぜいなんかいるなーって思うくらいで」
「でも霊感があるほうだよ。ただ守護霊に守られていて変なのに憑かれにくいみたい」
その女性は俺の守護霊についてこんなことを話してくれた。その守護霊は女性で、結構強い守護霊だという。変な目に遭っても被害に遭わないのはその女性に守られているからだとか。ただ俺に好意を持っているせいで生身の女性が寄り付かない、付き合っても長続きしないのだとか。それを聞いて、おいマジか……と思ったよ。
そんな話をしていると、女性陣の一人が「私、霊感あるよー」と言い出した。男性陣はマジでー? と面白半分、アピール半分で食いついていた。俺はそうなんだーって思ってたんだけど、目の前の女性はなんか苦い顔していた。それが気になったんで理由を聞いてみると、
「霊感があるってあまり言わないほうがいいんだよね」
とのこと。
なんでまた? と尋ねると霊感があるということを公言してしまうと、あまり良くないものが寄ってくるかららしい。幽霊と言っても元は人間。人間なら困ったときに誰かに頼りたくなる。普通なら頼ればいいんだけど、幽霊は誰にでも見えるものじゃない。なので見える人がいるということはその人になら頼ってもいいと思ってしまうのだとか。実際、生身の人間相手でも厄介事には巻き込まれたくないってことあるでしょ? 幽霊ならなおさら、とつけくわえて話してくれた。
なるほどなぁと思っていたら、俺たちの知らないあいだに盛り上がっていたらしく、なぜか今から心霊スポットに行こうという話になっていた。正直なところ行きたくなかった俺は、もう帰りたい気持ちでいっぱいだったが、車を運転出来るのが男性側では俺だけだったので、仕方なく付き合うことになった。
俺たちが向かったのは地元でも事故が多いとされるとある海岸で、夜もすっかり深くなっていたせいもあって人の姿はなかった。
車から降りると夏の夜だというのに妙に寒気を感じて、やっぱり来るんじゃなかったと思った。
俺を気にかけてくれてた女性も「やっぱり感じる?」と聞いてきた。俺が「なんかいますか?」と聞き返すと「多くはないけど何人かね」と答えてくれた。
さっき霊感があると公言していた女性が「そことそこにいる」と言うと、男たちは「うわー」とか「マジでヤバイヤバイ!」と盛り上がっていた。
実際、俺の横にいた女性も同じところを見て苦い顔をしていたから間違いなくいるんだと思った。
──しかし本当の理由は違った。
「あの子さ、ああ霊感があるって言った子ね。あの子さ本当に霊感があると思うんだよね」
「やっぱりそうなんすね」
「ところで私がどうしてさっき霊感があるって言わない方がいいって言ったか分かる?」
「それってあれでしょ、良くないモノが憑くからですよね」
「そう。あの子は霊感がある。それは間違いない。でもね、“あの子自身に憑いているモノ”は視えていないんだよね」
それを聞いて俺は背筋がゾッとした。この女性が言いたいことは周りに霊がいることを認識出来ても、自分に憑いている霊は認識出来ていないということ。そしてそれは守護霊などの善良なモノの類ではないこと。
「祓うこととかって出来ないんですか?」
「出来るわけないじゃない。だからあまり人に霊感があるって言っちゃダメなのよ」
彼女はそう教えてくれた。
ちなみに彼女たちとはそれっきりなので今どうしてるかは全くわからないが、何事もなく過ごしていることを願うばかりだ。
最後に俺がその日一番ゾッとした出来事は、俺に霊感があると教えてくれた女性に「君ってキスが上手そうな唇してるね」と言われたことだった。
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